入所者の入院状況に関する調査報告

看護部 井草良子、寺岡恵美子、堀房子、牛山武久、岩谷力、関寛之、山崎裕功

【目的】

 入所者診療室の役割は、入所者が自己の障害を正しく理解し、健康な状態で訓練が 受けられ、退所後も基本的な生活習慣が確立できるように支援することにある。しかし、 実情として自己管理できずに入退院を繰り返すケースは少なくない。今回、このような 現状を把握する目的で、今後の健康管理に役立てるため過去5年間の入所者の入院状況を 調査した。

【対象と方法】

 対象は、平成10年1月〜平成14年12月までの5年間に入所していた入所者。
 方法は、毎月の入退院の事例を記載した資料をもとに調査を実施した。なお、入院先の 病院は当院の他、入所者のかかりつけの病院や緊急でかかった病院も含まれる。

【結果】

 1.過去5年間における入院件数は394件で、障害別にみると視覚障害が最も多く、ついで 肢体不自由であった。また、一人あたりの、平均入院日数は26.6日であった。
 2.入院先は当院が68.5%で、かかりつけ病院など他院が31.5%であった。
 3.入院病名は、視覚入所者においては、糖尿病が最も多く、血糖コントロール入院や 腎不全、末梢神経障害による壊疽などで繰り返し入院となっていた。泌尿器系の尿路感染症 と褥瘡は脊髄障害において多く、脳内出血の脳浮腫など病状悪化・抗てんかん薬の飲み忘れ によるてんかん発作は脳障害に多い傾向であった。また視覚、肢体、聴覚の区分とは関係 なく、精神障害、胃腸炎、骨折、上気道炎、疲労などが全体的に多かった。
 4.入退院を繰り返している入所者が多く、その疾患は、糖尿病が最も多く、次いで 脊髄障害・脳障害となっていた。

【考察】

 結果から合併症の管理が大切といえ、これらは退所後も継続した自己管理能力が 要されるものである。社会参加にむけた入所生活においては、自己の健康管理能力、 自己の体調などに関して正しく報告できる能力、また寮生活など集団社会における 適応能力などを身につけられるよう支援していくことが重要である。入院にいたらない までも自己管理不十分な入所者は多く、これらの健康教育も重要視しなければならない。
 今後は指導内容や方法を再検討することに加え、病院や各訓練部、指導課、栄養管理室、 教官らとの密接な情報交換など連携を深め、健康管理に対する認識を高めるため入所者 個々との関わりが重要と考える。




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