注意障害の作業療法 −介入方法と作業課題の特徴−

病院 第一機能回復訓練部 深澤佳世、森田稲子、井上美紀、山本正浩、野月夕香理、今村藤香

【はじめに】

 高次脳機能障害者への作業療法の主要目的の1つに、注意機能改善への働きかけがある。 作業療法を効果的に進めるために必要な「課題選択」及び「実施上の留意点」について 後方視的に調査し、特徴を整理した。

【対象と方法】

 2000年4月〜2003年3月に脳血管障害、外傷性脳損傷の診断で入院、初回評価で「注意の 改善」が目的とされた33(CVA18、TBI15)名について、再評価間の1月単位で、最高3月まで の具体的目的、課題、実施上の留意点を調査した。注意の改善に用いた課題ごとに具体的 目的「一定時間継続する」「正確に実施する」「注意を配分する」と実施上の留意点を 選択した。実施上の留意点は、注意障害の訓練に関する文献を参考に課題選択に関する 2項目と実施方法に関する8項目の計10項目とした。

【結果】

 具体的目的は経時的に変化し、各月の割合は「一定時間継続する」は60%、12%、12%、 「正確に実施する」は38%、58%、64%、「注意を配分する」は2%、8%、24%であった。 「一定時間継続する」の課題上位3種目はパズル、スティック細工、レーシングであった。 留意点は課題選択に関する2項目で39%、残りは実施方法に関する5項目で、「目標を明確に して継続意識を高めた」「刺激となる情報量を調節した」が多かった。「正確に実施する」 の課題はスキルミニギャラリー、電卓計算で約40%を占めた。留意点は「課題を終了する のに十分な時間を取った」が35%と最も多く、次いで「目標を明確にして継続意識を高めた」 「刺激となる情報量を調節した」が多かった。「注意を配分する」では複数の課題を 組み合わせて使用されていた。

【まとめ】

 注意機能改善の具体的目的は「一定時間継続する」から「正確に実施する」「注意を 配分する」へと進められ、作業遂行には、まず一定時間注意を継続できるようになること が求められていた。
 具体的目的ごとの介入方法は次の様に整理された。「一定時間継続する」では、興味・ 関心を持てる課題、短時間で結果の見える課題の選択と、継続のための援助、動機づけ に留意する。「正確に実施する」では、正誤が明確な課題の選択、情報量を調節して、 急がせず、目的意識を持たせるための援助に留意する。「注意を配分する」では、 注意の配分が必要な環境を設定することが必要である。




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