高次脳機能障害に伴うコミュニケーションの問題 〜評価法についての検討〜

病院 第二機能回復訓練部 三刀屋由華、餅田亜希子、北條具仁
学院 言語聴覚学科 阿部晶子

【背景】

 高次脳機能障害患者のコミュニケーションの問題について、我々は一昨年度より 以下のような試みを行ってきた。

 これまでの結果をふまえて、Scaleに代わるコミュニケーション行動の評価法、 および個別での会話検査項目を作成し、個別訓練および集団訓練でのコミュニケーション 行動の評価を試みた。

【内容】

 今回作成した評価法の項目は「視線」「礼節」「理解」「発話の一貫性」「話題の 維持・転換」「コミュニケーションへの参加度」「turn-take」の7項目で、それぞれ 1、3、5の評価基準およびその中間の5段階の順序尺度で評価する。「視線」「礼節」 「話題の維持・転換」「turn-take」などの項目については、「視線が合わない/相手を 見すぎる」のように、陰性反応と陽性反応の両方を評価できるよう考慮した。
 また、個別面接において使用する、「導入」「氏名、住所などの確認」「家族について 簡単な説明」「STの自己紹介を聞く」「二者択一の質問への回答および理由の陳述」 「モノローグ」「感想、STからのフィードバック」の7項目から成る会話検査を作成した。
 個別での会話検査場面およびグループ訓練での患者同士の15分程度のディスカッション 場面を上記評価法の評価対象とし、評価法の妥当性について検討を試みた。方法は、 1症例に対し、上記会話検査およびグループ訓練の場面を録画し、複数のSTが評価法を用いて 評価を行い、結果を分析するというものである。

【結果】

 個別面接の評価において、5名のSTで評価した結果、評価点が一致しやすい評価項目 と、ばらつく傾向のある項目があることが分かった。また、陰性反応、陽性反応の両反応 のどちらに評価したのか、その表現方法について検討の必要性が示唆された。
 集団訓練では、発言がほとんどない場合に評価が困難な項目があり、評価対象となる 場面設定の工夫が必要であると思われた。

【まとめ】

 今回、高次脳機能障害患者のコミュニケーション行動を評価するため、評価法および 個別面接で用いる会話検査を作成した。これらを有効に利用するためには、尺度設定や 評価場面の設定など、更に検討が必要と思われた。今後、実施例を重ねながら改訂を進める 他、高次脳機能評価の結果や、患者およびご家族へのアンケートの結果などとの関連も 調査していく。




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