高次脳機能障害を有する患者の家族に対する家族小グループ心理教育プログラムの試み

医療相談開発部 心理 土屋和子、四ノ宮美恵子、鴫野麻里子、色井香織、尾崎聡子、田中大介、乗越奈保子、秋元由美子、佐久間肇

1.はじめに:

 高次脳機能障害を有する方の家族のために、個々の患者の日常生活にそった高次脳機能 障害に関する知識や患者に合った対処法を学習する場、家族の心理的葛藤を整理・解消する 場の提供が必要であると思われた。そこで、家族の個別のニーズに応え学習できる場として、 平成15年度より、2患者家族と心理職員を構成メンバーとする家族小グループ心理教育 プログラムを開始した。

2.ねらいと内容:

 1)ねらい:患者の障害の理解、受け入れを促す。メンバー相互の情報交換を通して 知識や対処スキルを獲得する。心理的葛藤をメンバー間で共有し孤立感の軽減を図る。 家族の関係性を見直す機会を与える。
 2)方法:3回1クールで構成される。
 【第1回】発症前、発症直後、発症後の患者の変化を家族が言語化し気づきを整理する。 メンバー相互に共感を深め、対処法などについて情報交換する。
 【第2回】心理職員が障害について講義する。その後それぞれの患者の現状をとらえながら 高次脳機能障害と家族の対応について討議する。
 【第3回】家族の関係性の見直しと 再構築のための手がかりを見つける。

3.まとめと課題:

今年度実施したプログラムの参加家族からは

  1. 時系列に患者、家族に起こったこと、それぞれの感情を整理できて良かった。
  2. 家族内(夫婦)で認識が違うことがわかった
  3. 患者家族同士で話すことがなかったので、今後の交流のきっかけとなった。
  4. 高次脳機能についての学習できた。
  5. 知識が、自分の子どもの症状と照らし合わせて理解することが出来た。
  6. 自分たち家族の話を受け止めてもらっている感じがしたのが良かった。
  7. お互いに見える症状は違うが高次脳機能障害ということでは同じ障害を持っている ということがわかった。
  8. 家族の対応が大事なことがわかった。

等の評価を得たことから、家族小グループ心理教育プログラムの当初のねらいは達成 できたと考える。第3回実施は、家族の個別の事情が変化したため、家族それぞれに 第3回の内容にあたる指導を個別に実施している。今後は、家族小グループ心理教育 プログラムの開始時期や内容、評価法、等について、さらに事例を重ね検討していきたい。




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