医療相談開発部 | 大津あかね、小山聡子、菅原美杉、森田勝義、森曜子、上村裕子、大島千帆、佐久間肇 |
昨年医療福祉相談室で対応し、訪問調査を実施したケースの事例を通して今後の 支援の課題について報告したが、今回再度調査を行ったケース等の事例から、高次脳 機能障害者の訓練終了後の支援における課題を整理し、医療福祉相談室が担うべき 次の仕事について考察する。
復職支援では地域の障害者職業センター等との連携を主に行っているが、復職後も 本人側のニーズ・環境の変化などに対する継続的な支援が必要である(事例A,F,G,M,O)。 在宅・施設利用者の場合も、調査によって、地域で対応している専門職(デイケアの ワーカーや保健師等)と、連携の必要性・可能性・あり方について話し合う必要性を 感じた(事例B,D,E)。家族に対する支援も含め、窓口の違いを超えてサービスを コーディネートする存在が必要であり、施策が具体化されるまでは、当室がその機能を 持つことも考えられる。
復職・就労において各職場が持つ「許容力」は本人の以前の貢献度、職種、 障害程度・特性等によって異なる。当室の介入を断り、障害について知らせず就職した 例もある(事例L)。職場とのやりとり、情報提供、職業センター利用等はあくまで 本人・家族の主体性とペースを尊重しながら行うべきである。同時に介入が必要となった ときのために継続的にフォローしていくことも必要である。
地域で高次脳機能障害者の日中活動を保障する社会資源は数少なく、現状では 既存の介護保険・身体障害者・精神障害者のデイケア・作業所等を利用することが多いが、 対応が困難であると利用を拒否されたり、障害特性に対応できず、利用中にトラブルが 起きる場合もある。今後地域資源の対応力を高めるために各部門と連携し、地域の施設 へ出向き対応の相談・協力依頼等を行う必要性を感じる(事例B,H,I)。また病院側が 勧めた資源の利用を本人側がすぐに受け入れないこともある(事例C)が、この場合も 本人側の意向を尊重し、定期的にフォローし、必要な時に他機関へ引継ぐことになる。
家族が発動性の低下等本人の変化を受け止めることが困難な場合(事例A,N)や 家族自身が病気など他の課題を抱えるケースもある(事例J,K)。家族全体を見据えた 支援コーディネートを行っていくことが望ましい。
訪問調査はどの方からも概して好意的に受け止められた。当院での訓練期間中には 病院側の勧める支援に乗らなかったケースが、地域生活の中で課題を感じ相談してきた 例もある。MSWは環境と本人の相互作用によりQOLが高まることを念頭に、生活の全体像 を捉え、本人をとりまく環境の力を高める支援を目指している。今後十分な支援を行う ためには、支援のコーディネーターとして院外の地域連携業務を行う専従のスタッフが 必要であると思われる。