DAISY Literacy 100%への挑戦

国立塩原視力障害センター教務課 小林好彦

1.はじめに

 国立塩原視力障害センター理療教育課程では、DAISY形式で作成した教科書 (以下DAISY教科書と呼ぶ)の活用に組織的に取り組んでいる。ほぼ100%の入所者が DAISY教科書を使用できるところに到達した。ここではDAISY教科書の必要性と 理療教育課程における取り組みについて紹介したい。DAISY教科書は開きたいページへ 簡単なキー操作で移動できたり、1枚のCD-ROMに50時間以上の録音ができるなど理想に 近い機能を備えている。墨字も点字も自由に使いこなすことができない状態にある 入所者にとっては従来のカセットテープの不便な点のいくつかを克服してくれる機能を 備えている。

2.組織的にDAISYの活用に取り組む背景

 当センター理療教育課程には、録音教材を利用して学習を進めている入所者が 相当数存在する。年度により多少の変動はあるが毎年70%以上が録音教材を活用している。 入所者の20%は録音教材だけで学習を進めている。平成14年度の調査結果では、 録音教材を学習に使っている入所者の割合が77.7%、録音教材を主として学習を進めている 入所者の割合は19.1%、あん摩マッサージ指圧師試験受験者の録音問題併用率は86.8%、 はり師、きゅう師試験受験者の録音問題併用率は75.0%であった。

3.経過

 当センターにおけるDAISY活用のための取り組みは平成10年度にスタートした。 平成10年度と11年度は職員指導者(プレクストークインストラクター)と入所者指導者 (ピアインストラクター)を養成し、そのインストラクターが協力して他の入所者の トレーニングを行う形態で教育普及活動を実施した。平成12年度は授業の中で、 音声学習技術の一つとして1年生全員を対象に使い方のトレーニングを実施した。 平成13年度からは、新入所者オリエンテーションのプログラムの中に組み込み、 1日2時間、計10時間の活用トレーニングを実施し、現在に至っている。

4.活用するためのInformed Use

 DAISY教科書は音声を録音した図書であるが「章」や「節」ごとの移動、開きたい 「ページ」への移動が容易にできる。この機能を活用するためには、図書の構造を 理解した上で使用する必要がある。DAISY教科書は構造化され、見出しが最大限6段階に 階層化されている。この見出し階層についての理解は、DAISY教科書の中を効率的に 移動する技術を習得するためには不可欠である。オリエンテーションプログラムの中では 教科書により異なる階層設計を把握しながら読み方を習得できるように支援している。 (貸し出しや活用トレーニングには販売されているDAISY教科書は使用していない)




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