国立福岡視力障害センターにおける理療臨床教育について
−患者アンケート調査より−

国立福岡視力障害センター教務課 池田和久、天野光二、松本元司、田端里美、吉川誠
国立身体障害者リハビリテーションセンター理療教育部 南場榮二

【目 的】

 あん摩マッサージ指圧・鍼・灸(以下、「あはき」)は、視覚障害者の方における職業 訓練の一つであり、施術技術・知識の向上や社会的ニーズに即した自立・支援のあり方が強く 求められている。とくに教育内容や訓練の充実を図ることが急務である。そこで「あはき」の 臨床実習において、今後の取り組む方法や課題を検討する目的で臨床実習室を利用される患者 を対象にアンケート調査を行ったので報告する。

【方 法】

 対象は臨床実習室を利用されている患者421人、調査期間は平成15年2月〜5月まで、 郵送による無記名、自記式(選択及び記述式)にて行った。

【結 果】

 アンケート回収率は、52.7%(内訳は女性75.2%、男性23.4%、年齢別では50代が 最も多く28.4%、次いで60代20.3%)であった。
 基本的項目:センターの臨床実習を認知の仕方は知人の紹介71.2%・家族や親戚の 紹介19.2%、来院頻度は月に1回以上28.5%・半年に1回以上26.0%・週1回以上23.0% であった。
 治療に関する項目:治療法の種類はあん摩マッサージ指圧57.0%・鍼30.5%・灸12.5% (複数回答有)、利用する目的は疲労回復62.6%・病気やケガの治療17.3%・健康増進13.4%、 施術による効果は少し達成された54.9%・達成された32.1%・分からない6.7%、良いと 思われる点は施術料金16.5・実習生の対応が良い12.2%・職員の対応が良い11.7%であった。 一方悪いと思う点は交通の便が悪い15.1%・家から遠い13.8%・予約が取りにくい13.3%、 施術に際して不安を感じたかは特になし79.5%・施術者が異性のとき6.3%・施術による 事故6.3%、実習生に改善してほしい点は特になし64.5%・知識・技術の向上・24.4%・ その他8.3%、実習担当教官に改善してほしいことは特になし62.3%・実習生に対する 指導の強化20.6%・インフォームドコンセント 8.1%であった。
 その他に大変丁寧な施術でよい・障害を持たれた方の親切で熱心な態度に感動すると いった意見がある一方、施術技術に個人差がある・衛生面の改善・施術後アンケートの 実施・施術途中での問いかけ・教官による適切な指導などの意見が寄せられた。

【結 語】

 調査の結果、臨床実習に対しては概ね良好な結果であった。しかし施術技術の個人差 や施術中における患者との関係を指摘する意見が多く寄せられた。今後臨床実習での 教育内容や学習目標の設定・施術技術の向上に向けた取り組み、近年医療の分野で 行われているOSCEや医療面接、模擬患者でのシミユレーションなどの積極的導入が 必要であると考える。




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