高次脳機能障害の標準的リハビリテーションプログラム

実施体制

チームアプローチ

 医学的リハプログラムは、医師(リハビリテーション科、神経内科、脳神経外科、精神科、内科など)、心理専門職、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、看護師、運動療法士、医療ソーシャルワーカーなどが行い、生活訓練プログラムや就労移行支援プログラムは、生活支援員や職業指導員などが行っています。いずれにしても、当事者のかかえる問題と目標を担当者間で共通に認識して、訓練に携わることが大切です。

リハビリテーションチームの構成例の画像
訓練期間

 平成16年4月から、「高次脳機能障害診断基準」に基づいて高次脳機能障害と診断された場合、診療報酬の対象とされることになりました。また、平成18年4月から、脳血管疾患リハビリテーションの限度180日を超えて訓練を受けることができるようになりました。モデル事業の報告では、訓練を受けた障害者で障害尺度に改善のみられた人の74%が6か月で、97%は1年でその成果が得られています。従って、機能回復を中心とする医学的リハプログラムを開始から最大6か月実施した後は、必要に応じて生活訓練プログラム、就労移行支援プログラムを加えて連続した訓練を実施し、全体で1年間の訓練を実施することが有効です。もちろん、症状が軽症の場合、あるいは重症であっても改善が見られる場合はこの限りではありません。

訓練の移行

 医学的リハプログラムから生活訓練プログラム、就労移行支援プログラムへの移行は、認知障害が依然存在するとしても、日常生活や職業において必要と考えられる動作や技能の獲得あるいは習得が重要と判断された場合に行います。また、医学的リハプログラム中であっても、必要があれば生活訓練プログラムや就労移行支援プログラムの内容を加味します。生活訓練プログラムの結果、改めて医学的リハプログラムを受ける場合もあり、訓練の流れはこの一方向性とは限りません。

訓練の継続と終了

 訓練を継続するか終了するかの判断は1~3か月ごとの評価によってカンファレンス等で決定します。高次脳機能障害で指摘される各症状の軽減、身体機能、ADL、神経心理検査、障害尺度変化などを参考にし、訓練終了後は、当事者本人や家族のニーズに応じた支援に移行します。

職種ごとの訓練の具体的内容

 高次脳機能障害者の訓練には多くの専門職がかかわっています。その訓練内容は、専門性の高いものや、職種間で共通の問題を取り扱うものも混在しています。例えば、ある高次脳機能障害者の注意障害について、作業療法士、言語聴覚士、心理専門職、看護師がそれぞれの立場で取り組んでいます。しかし、理学療法士も、通常行う歩行訓練やバランス訓練以外に、一般道路での歩行、交差点での横断といった訓練(応用歩行)を注意障害の観点から行うことも場合によっては必要となります。

高次脳機能障害者に対する訓練の進め方

 リハビリテーションでは、疾病の診断・治療だけでなく、疾病がもたらす機能障害、活動制限の評価および当事者の生活歴や社会経済的環境と家庭環境を考慮して将来目標を立てたうえで、その目標実現のために必要な計画、具体的プログラムを立てて実施し、一定期間後に再評価を行い、必要に応じて目標・プログラムに修正を加えながら、最終的な目標に到達するという過程をとります。

医学的リハビリテーションの進め方の画像