Q5.
 高校1年生の息子のDがいます。本人はあまり気にしていないように見えますが、どもっています。本人にどもっていることを指摘した方がいいのでしょうか?それとも何もいわずにいた方がいいのでしょうか?親としてどう対応したらよいのでしょうか?
A5.

 Dくんは小さい頃から吃音があったということのようですね。そして「吃音については触れないように」と親御さんは助言をされてきたかもしれませんね。このような場合、Dくんが自分の話し方についてどう思っているのか、大きく二つの場合が考えられます。

 一つめはDくんは自分の話し方を「これが自分の普通」ととらえている場合です。周囲からは話しにくそうにしているので困っているように見えますが、本人はものごころついた時からその話し方なので、他の人とは違う話し方だけど自分にとってこれが普通の状態と受け止めていることがあります。ですから「吃音」という話し方の障害であるということに気づいていない場合です。

 二つめはDくんが自分の話し方は普通ではないと思っている場合です。それなのに家族や周囲の人は誰も何も言ってくれない。これはきっと話題にしてはいけないこと、大変恥ずかしいことであるのに違いない、と思いこんでいることもあります。そうすると、学校などでからかわれたり、笑われたりして悩んでいてもそれを相談できなかったり、家族に心配をかけたくないから相談しないということがおきます。

 いずれの場合であっても、まずは、Dくんに「指摘」するのではなく、吃音について率直に話し合うことをおすすめします。今までDくんの話し方を心配してきたことを伝え、専門機関に相談に行こうと誘ってみてはどうでしょうか。その際、親御さんもDくんと一緒に専門家の話を聞いてみたいと、率直に伝えるといいでしょう。

 幼児期から小学校1~2年生までの吃音と、それ以降も続いている吃音とは性質が違っていることがあります。専門用語では「進展」と呼び、どもる時に力が入ったり、言葉がつまって出ないというのが症状の中心となります。本人の話しにくさは増しているのですが、言いにくい言葉は言いやすい同義語で置き換えたりするので、周囲からはどもっていないようにみえ、吃音に気づかれないことがあります。吃音を隠したい、認めたくない、といったDくんの気持ちもありますので、無理に受診させることはありません。しかし、その場合でも「お父さん(お母さん)が行って相談をしてこようと思うけど、聞いてきてほしいことがあったら教えてちょうだい」と聞いてみるのはいいことです。また、今後、大学入試の面接試験や就職活動の際に、話すことで悩むようになる場合もあります。大切なことは、Dくんが困ることがあった場合に気軽に保護者に相談できる状況を作っておくことと、保護者がどこに相談すればよいか知っていることです。吃音についてオープンに話し合える雰囲気がつくれるといいですね。

 中学校にも「ことばの教室」は少しずつ設置されてきています。通っている学校か、地域の教育委員会に相談すればその地域の学校に設置されている「ことばの教室」などを紹介してくれるでしょう。学校以外に吃音の相談を受け入れている専門機関については、各都道府県にある言語聴覚士会や発達障害者支援センターなどに問い合わせてみるとよいでしょう。また、Dくんが望むようなら、吃音のある人たちの自助グループに参加してみることも、心を開いて自分のことを話す突破口になるかもしれません。ホームページで調べるか、言語聴覚士会に問い合わせるとお近くの自助グループの情報が分かると思います。

どもっている高校生のDくん