国リハニュース

第374号(令和6年春号)特集

特集『高次脳機能障害 リハビリテーション医療と障害福祉サービス』

高次脳機能障害者の生活訓練について

自立支援局 第一自立訓練部 生活訓練課長 上野 久美子

 当センター自立支援局の自立訓練(生活訓練)(以下、「生活訓練」という)では、主に高次脳機能障害のある方を対象に、日常生活や社会生活に必要な手段を理解し、生活能力を高められるよう、個々の生活状況に応じた訓練を行っています。

1 生活訓練の概要

 生活訓練の対象者は、①高次脳機能障害の診断を受けていること、②自立した生活を送るために訓練を必要としていること、③障害福祉サービス受給者証の交付を受けられること、の①~③の要件を満たす方です。身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳を所持していない場合であっても、医師の診断があれば申請は可能です。定員は30名で、訓練期間は原則24か月以内です。当センター生活訓練の場合、平均利用期間は9か月程度となっています。利用形態としては、通所・入所・訪問の3種類があり、ほとんどが通所の方です。

2 訓練のねらい

 生活訓練では、次のような目標達成に向けて、日々の訓練に取り組んでいます。

・生活リズムを整え、日中活動に参加する体力や耐久性の向上を図る
・生活動作の手順や道具を工夫し、自己管理できることを増やす
・自身の障害への理解を深めながら、場の状況に応じて行動できるようにする
・ご家族と地域の支援機関との協力体制を築き、社会生活に備える
・様々な訓練を行い、作業能力の向上を図る

3 主な訓練プログラム内容  

 1週間のスケジュールは、上記のような流れで実施しています。個々の状況や目標に応じて、面接・体育・個別訓練・自動車運転訓練・施設見学・体験実習・訪問訓練等を追加します。

訓練プログラムの内容を一部、ご紹介します。

【朝・夕の会】
 利用者が輪番制で司会進行をし、朝の会では、日付や体調の確認、身だしなみチェック、個人の目標の発表などを行います。また、夕の会では、掃除や一日の振り返りを行います。基本的な生活習慣やスケジュール管理を身につけること、集団のルールを理解すること、自己認識を深め、課題の理解を促すことなどを目的に実施しています。

【日常生活訓練】
 健康管理(服薬・体調)・身辺管理(生活リズム、身だしなみ、入浴、整理整頓等)をはじめとする日常生活活動や金銭管理・家事動作(掃除・洗濯など)・移動動作等の日常生活関連活動について、自己管理できるように訓練を行います。代償手段を活用しながら動作手順や作業環境の構造化を図り、活動の習慣化・定着を目指します。

【就労準備訓練】
 就労や復職に向けて個々の訓練課題を設定し、模擬的な職場環境の中で訓練を実施しています。挨拶や時間管理、勤務に耐えうる作業持久力や作業の正確性、職業マナーなどの基本的な職業準備性の獲得と、より実践的な作業能力の向上を図ります。

 そのほかにも、園芸訓練、調理訓練、学習ワーク、グループワーク等、様々な訓練を行っています。

4 生活訓練の利用終了後の方向性

 当センター生活訓練の利用を終了された方は、復職される方のほか、就労移行支援や就労継続支援A・B型などの就労に向けた障害福祉サービスを利用される方が多くいます。また、高等学校や大学等に復学される方や家庭に復帰される方もいます。