国リハニュース

第374号(令和6年春号)特集

特集『高次脳機能障害 リハビリテーション医療と障害福祉サービス』

高次脳機能障害支援者養成研修テキストの活用について

研究所 障害福祉研究部 データ利活用障害福祉研究室長
(併)企画・情報部 高次脳機能障害情報・支援センター 今橋 久美子

 令和2~4年度厚生労働科学研究「高次脳機能障害の障害特性に応じた支援者養成研修カリキュラム及びテキストの開発のための研究」(研究代表者 深津玲子顧問)において、高次脳機能障害者への適切な支援につなげることを目的として、支援者に必要な知識・情報を提供するための高次脳機能障害支援者養成研修パッケージ(テキスト、講義動画、指導要領等)を作成しました。

1 研修テキスト作成の経緯

 高次脳機能障害を引き起こす原因としては、外傷や脳血管疾患、脳炎・脳症・脳腫瘍などが知られていますが、これらの受傷・発症後は、多くの場合、急性期病院、回復期リハビリテーション病院/病棟、自宅退院、あるいは介護保険施設、障害者・児支援施設を経て自宅という経過をたどります。そして、どの場面においても、記憶や注意障害、病識欠如、すぐ怒るなど社会的行動障害といわれるような症状が、多かれ少なかれ、本人と周りの家族や支援者に影響します。施設から利用を断られることもあり、すべての現場で、障害の特性が理解され、適切な支援が十分に提供されているとは言えない状況にあります。

 一方で、症状の背景を理解し、環境を調整したり、強みを活かしたりすることで、家庭や職場で安定して過ごすことができるようになることもわかってきており、医療・福祉サービス等に従事する支援者の養成が課題となっています。

 そこで、厚生労働科学研究の一環として支援者養成研修カリキュラムとテキスト開発に着手しました。受傷から社会復帰までの支援を網羅するために、当事者家族会と専門職から成る多職種チームを組みました。作成に当たっては、介護や福祉関連の養成研修を参考にしました。標準的な内容にして、学校の教科書のように、講師が変わっても使用可能なものを目指しました。

2 研修テキストの構成​​​​​​​

 研修カリキュラム・テキストは、基礎編と実践編があり、それぞれ講義と演習で構成されています。録音バージョン(講義動画)もありますので、オンデマンド配信も可能です。​​​​​​​​​​​​​​

研修カリキュラム・テキストの内容

  基礎編 実践編
講義 高次脳機能障害とは
高次脳機能障害の診断・評価
病院で行うリハビリテーション
失語症とコミュニケーション支援
制度利用
相談支援
生活訓練
復職・就労移行支援
生活と支援の実際
地域の支援体制
認知症・発達障害との共通点と相違点
小児期における支援
長期経過とフォローアップ
チームアプローチの重要性
家族支援・当事者家族会の活動
コミュニケーション支援
支援の実践的な枠組みと記録
自動車運転再開支援
演習 障害特性の理解
障害特性に応じた支援
生活訓練の実際
復職・就労移行支援
障害特性の理解と対応方法
 
環境調整による支援と記録に基づく支援の評価

3 今後の活用

 令和6年度から、「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業実施要綱(都道府県実施分)」に「高次脳機能障害支援者養成に係る研修の実施」が追加されることになりました。それに伴い定められた「高次脳機能障害支援養成研修実施要綱」でこの研修パッケージが紹介されています。高次脳機能障害情報・支援センターでは、高次脳機能障害者が暮らしやすい社会の実現を目指し、支援手法の普及を図るため、この研修カリキュラム・テキストをウェブサイトに掲載して広く周知し、研修主催者向けに研修パッケージの貸出を行っていますのでご活用ください。

画像をクリックすると研究成果ページ(高次脳機能障害支援者養成研修テキスト)へリンク