〔随想〕
百 花 繚 乱
更生訓練所指導部指導課長 竹之内 康


 五月の連休が終わったある夜のテレビで、福島県須賀 川市の牡丹園の中継をしていた。見事な大輪の牡丹が映 し出されたのを見て見学に行くことにして、早速その週 末(5月12日〜13日)に行って来た。連休明けの週 末のことで、高速道路はがらがら、すいすいと目的地に 着いた。ただ、目的地の牡丹園は国の名勝に指定されて いるとのことで、東京、千葉、埼玉、宮城などの福島県 以外の車のナンバーが多く、遠方からの見物人でごった 返していた。園には観光案内ボランティアの方がおり、 案内を頼むと心よく引き受けていただき、詳しく説明し てもらった。ボランティアの斉藤さんのお話や、パンフ レットからの抜粋と感想は。
 須賀川の牡丹園は、235年前の明和3年(176 6年)薬種商を営んでいた伊藤祐倫と言う人が牡丹の 根を薬用にするため、苗木を摂津国(現在の兵庫県宝塚 市)から持ち帰り栽培したのが始まりだそうで、明治に なって種類、株を増やし、昭和7年には国の名勝に指定 されている。10ヘクタール(東京ドーム、の約3倍)の 広い園内には、在来種、改良種あわせて290種7,0 00株もの牡丹の木があり大輪の花が咲き乱れていた。 在来種は「国指定ほ場」として5〜6年に1回土の入 れ替えを行い230年前の古木がいまだに残っており、 太い株には空洞ができているにもかかわらず、その生命 力には驚かされた。花は改良されておらず素朴なもので あった。改良種には、花の色、花の形、花びらの枚数等 々いろいに違う花が咲き乱れており楽しませてくれた。 須賀川市と友好都市を結んでいる中国の洛陽市から中国 牡丹も持ち込まれている。その中のある牡丹の花の前で 斉藤さんが「ここにある2種類の花をよく見比べてく ださい」と言われ、見ると花の色、大きさは同じで花 びらの枚数が違うだけで、特に変わったところもないこ とを言うと、「それでは、その木の根本からもう一度よ く見てください。木が二つに枝分かれしていませんか。 」、見るとそのとおりで1本の木が枝分かれし、それぞ れの枝の違う花が咲いており大変珍しかった。接ぎ木な のかどうかは斉藤さんも解らないとのことであった。と にもかくにも、牡丹園の広大さ、いろいろな花の色、花 びら、種類の多さに圧倒され、また、斉藤さんの素朴な 福島弁に少々解らないところもあったが、その解説が楽 しく時間を忘れ、普段の疲れも吹き飛んでいた。宿は決 めずに行ったので、斉藤さんに新しい温泉宿を教えても らい、お礼を述べて牡丹園をあとにした。
 温泉に浸かり1泊した次の日、ホテルの係の人から近 くに「大桑原(おおかんばら)つつじ園」があることを 聞き行ってみた。須賀川インター近くにある このつつ じ園は、約300年ほど前、この地の庄屋であった渡辺 家が自分の屋敷に観賞用につつじを植えたのが始まりと 言われ、その後、増殖し、約1万株のつつじが約2ヘク タールの庭園を埋め尽くしていた。この中で最も古い樹 は江戸錦と呼ばれ3百年を経過しているとのことであっ たが、その咲きっ振りは見事であった。庭園とはいえ小 山から連なる山裾に広がっており、下からの眺め、花の そばでの観賞、小山の上からの眺め、反対側の山の裾野 からの眺めと、いろいろ楽しめ、紅、ピンク、白、紫な ど様々な花が咲き乱れ、新緑とあいまって見事なコント ラストを見せてくれ感動した。また、つつじだけでなく 、シャクナゲや牡丹も植えられており、見事な大輪を咲 かせ、つつじとその美しさを競っているようで楽しま せてくれた。
 日頃の仕事を忘れ百花繚乱をおおいに楽しんだ二日間 でした。帰りに白と濃いピンクの花びらが付いた珍しい つつじを1本買い、宿舎のベランダで観賞している。
 皆さんも行かれてみてはどうでしょうか。ただし、来 年の5月になりますが。
 最後に、須賀川の牡丹園は、盲導犬入園可、車椅子用 トイレ有り、貸車椅子有りと障害者の方にも楽しめるよ うになっている。大桑原つつじ園は、散策路が狭く悪路 で坂や階段があり、つつじ1本1本の観賞は車椅子での 行動はできない。平地もありそこからの眺めはできる。 車椅子用トイレ無。

見事に咲きそろったつつじ
見事に咲きそろったつつじ