〔寄稿〕
国立リハセンター見学及び疑似体験に参加して
国土交通省関東地方整備局営繕部 明林 道弘

 私共、国土交通省関東地方整備局では「国民の生活 に密着し、豊かな暮らしを実現する施設づくり」をめ ざし、一般事務庁舎をはじめ、教育文化、社会福祉施設 など、さまざまな官公庁施設の整備をすすめております 。国土交通省の基準はもとより、「高齢者、身体障害者 等が円滑に利用できる特定建築物の建築の推進に関する 法律」(以下「ハートビル法」)や各都道府県の「 福祉のまちづくり条例」等に基づいた施設整備を実施 しておりますが、近年、利用者ニーズの多様化から、今 まで通りの対策では不十分になるケースも増えてきてい ます。それを踏まえこれからは、法律の基準を守るだけ ではなく身体障害者の方の立場に一歩でも近づけるよう 、今回、貴センターにて車椅子体験及び視力障害の疑似 体験をさせていただくこととなりました。
 まず、施設見学のなかで、織物、ステンドグラス、ま た、金属製の表札など更生訓練所での成果を数多く見せ ていただき、リハビリテーションの果たしている役割や 重要さを理解できました。また、さらに、私共の先輩た ちが設計した施設が皆様に役立っている様子を見ること ができ、嬉しく思うと同時に身体障害者の方々が、安心 して生活できる環境の整備に一層力を入れていきたいと 決意させられました。
全盲者や、弱視者の疑似体験
全盲者や、弱視者の疑似体験
 次に、全盲の方や弱視の方の見え方を疑似体験させて いただきました。物が全く見えない状態では、周囲の状 況が全くと言っていいほど分からないという大きな不安 を感じました。また弱視の状態では、かろうじて目から 情報は入ってくるものの、視野の狭さや、物を正確に判 断することが困難であるために、人の声や音、手摺や点 字ブロックなどから得られる情報が頼りでした。このこ とは、点字ブロック、手摺等の設置位置や色に関しての 意識を大きく変えるものでした。
 つづいて車椅子体験ですが、パラリンピック等で見ら れる競技用のものから、介助者を必要とするようなもの まで多くの種類を体験させていただきました。当日は雨 天のため、野外訓練場のスロープで車椅子を動かすこと は出来ませんでしたが、勾配は大きな障害になり得るこ とが容易に想像できました。また、エレベーター内のス ペースも非常に大切であると感じました。中で回転の出 来るスペースは確保されていましたが、それは、車椅子 1台だけの場合にかぎります。車椅子同士2台で乗る場 合は、それができません。エレベーター内で車椅子が回 転できるにもかかわらず室内にミラーの必要な理由を知 ることができました。
 「身障者対策」の時代から「バリアフリー」へ、そ して現在「ユニバーサルデザイン」というより積極的 な考え方が求められているなかで、今回の体験は貴重な ものでした。もちろん身体に障害のある方の苦労を本当 の意味で理解することや、すべての障害者に必要な配慮 をすることなどは非常に困難であり、さらにコストの増 加、スペースの確保など、現状の施設整備には限界があ ります。しかし、計画段階より障害者の利用にも配慮し 、少しでも多くの「バリア」を取り除いていく必要 をこの体験を通し強く感じました。貴センターの見学、 体験等をさせていただきまことにありがとうございまし た。センターの職員の方々には、ご多忙の中、私共のた めに、わかりやすい説明で体験をすすめて下さったこと に深く感謝いたします。

バレーボール
車椅子体験