平成13年度JICA補装具製作技術研修コースを終えて
研究所 補装具製作部 主任義肢装具士 高橋 功次


 昨年の8月20日から、研究所・補装具製作部にて行 われていたJICA補装具製作技術研修コース(国際協 力事業団委託事業)が、去る12月7日に3ヶ月半の全 日程を終了し、全員、大きなケガや病気もなく無事に帰 国の途につきました。今回は、4名のJICA研修生( チリ、コロンビア、エクアドル、パキスタン)と、清水 基金招聘研修生1名(マレーシア)を加えた5名の研修 生を受け入れました。
 本研修コースの対象職種は、補装具の適合経験5年以 上の技術者を基本としておりますが、これまでに経験は ないが帰国後に指導的立場で業務にあたる人が派遣され ることもあります。そのため、研修生の技術力に各々格 差があり、実習の進行に苦慮することがありますが、研 修生同士で助け合ったり、夕方遅くまで実習を続けるな ど、技術習得に対する姿勢は実に熱心でありました。
 研修会の内容は、補装具製作適合に関連する医学・運 動学・材料学をはじめとする専門各種の各論についての 集中講義を10日間実施した後、義手(2種類)、装具 (5種類)、下腿義足、大腿義足の順で製作適合実習を 行いました。この他、実習の合間には、近隣の義肢装具 部品メーカーや車いす製造工場、小児療育施設、都福祉 機器総合センターなどの施設見学、国際福祉機器展(東 京)、日本義肢装具学会(東京)への参加や、労災リハ 工学センター(名古屋)、兵庫県立総合リハセンター( 神戸)、大阪、京都の義肢装具製作施設への見学研修旅 行もあり、幅広く知識見聞ができるように構成しており ます。
 12月7日(金)の研修評価会では、@自分にとって 有益であった内容、A帰国後、職場へ貢献できる内容、 B研修コース全般に対する意見、C日本の社会・文化に 対する感想の4項目について研修員、JICA担当者、 リハセンター側の間で意見交換が行われました。
 実習内容については、義手、義足、装具における製作 適合の基礎的な技術習得について評価していましたが、 先進技術(筋電コントロール電動義手)や整形外科疾患 (突発性脊椎側弯症)に対する研修希望も出されました 。いずれもそれだけで一つの研修項目となるものであり 、特に整形外科疾患については医師の治療方法によって 適応が異なるため、総長、病院長から現在の日本におけ る状況を説明していただきました。
 その他では、実習担当スタッフ(リハセンターの義肢 装具士)の英語力が向上すれば製作適合の指導時におけ る細かいニュアンスが伝わりやすい、との指摘を受け、 今後は技術だけでなく英会話力向上にも努力しなければ ならない立場(ナショナルセンターの職員)にあること を改めて認識させられました。
 滞在期間中の感想では、日本の鉄道運行の正確さ(外 国では鉄道が遅れることはあたり前)に驚いたこと、そ して何よりも、日本人の人柄に対して好感を持ってくれ たようでした。生活面では、センター学院宿舎の住環境 には問題ないものの、滞在期間中の自炊生活が辛く、食 材、香辛料、調理方法の違いなど満足できなかった部分 もあったようです。
 夕刻から行われた送別パーティーでは、JICA、セ ンター関係者を囲んで帰国を前にした挨拶や思い出話に 顔がほころび、研修生を囲んでの記念撮影が行われ、滞 在期間中の交流の深さがうかがえました。
 この研修コースは、他のJICA研修コースに比べて 帰国後の研修員定着率が高く、効果的な技術協力が行わ れていると思っています。今後も、受け入れ相手国の事 情を考慮しつつ、最適な技術移転が実施できるように努 力していきたいと考えています。
 最後に、本研修コース実施に当たってご協力を頂きま した外来講師の先生方、ならびにセンター職員、関係者 の皆様に改めてお礼を申し上げます。

ディエゴさん セサルさん マリックさん(左) アズノールさん(中)アナマリアさん(右)
ディエゴさん セサルさん マリックさん(左) アズノールさん(中)アナマリアさん(右)