[随想]
別府の思い出
職能訓練課長  杉原 憲明



 別府は国際的な泉都である。イエローストーンに次いで第2の湧出量を誇る温泉天国である。明礬温泉は別府センターから車で10分位の所に位置し湯布院の途中にある。硫黄の臭いがたまらない哀愁が漂う温泉地である。わらぶき屋根の小屋では天然の入浴剤「薬用湯の花」ができる過程を見学させている。人気商品としては温泉饅頭、温泉卵、だんご汁がある。展望台からは南に大分市街、正面には別府湾、日出湾、西に国東半島が一望に見渡せ、晴れたときには四国の山並みが見られる。夜景は函館、神戸とは一味違う趣があり、宗教的な神秘的な様相を呈している。知人や親戚が来たときには必ず明礬温泉を紹介しており大変喜ばれた。
 市街の北側には標高1374mの鶴見岳がそびえる。春は桜、初夏のミヤマキシリマ、秋には紅葉、冬には霧氷と四季折々と楽しませ、高山植物の観察が出来る。ロープウエイで山頂まで10分ぐらいなので便利である。ハイヒールを履いた女性もおり手頃なコースである。春になるとギフチョウ、カラスアゲハ、キアゲハ、ナミアゲハ 、キチョウ、ミドリシジミ、アカタテハ、ヒョウモン等の乱舞が見られる。偶然にオオムラサキ、コムラサキに出会うことがあった。強烈な印象が残った。叉、高原では、野焼きが始まり春の訪れである。雨に流されて大地から一斉に芽を吹き出す様子は本当に感動的である。
5月上旬になると扇山、野口原、長者原等に行き、ワラビ、ゼンマイ、コゴミ、タラノメ等が採取できる。ワラビの刺身は小指の太さで20センチ位の長さが丁度良く、生姜と醤油で食べるとこれが美味である。煮物としては鰊、糸コンニャク、焼き豆腐を混ぜて食べるとまた美味しい。きれいに花がらを取り、残ったものは塩漬けにしておけば2月位からは食べられ、数年は保つので非常食になる。多少は味は落ちるが冷凍も可能である。山菜取りは常連が多いので暗いうちに入山することがコツである。
 亀川漁港は楠港、別府国際観光港の西側に位置し車で10分の所にあり、年間を通じて何らかの魚は釣れる。釣り物はチヌ、アジ、メバル、キス、真鯛、ウマズラ、ソイ、モイカである。朝まずめ、夕まずめがよく特に夜釣りに釣果がある。根がかりはほとんどなくファミリー釣りに適している。叉、漁協の協力で釣り座を6カ所設置して貰っており感謝している。
 昨年12月3日の出来事である。朝から小雨が降っているが海面は波もなくおだかやな状況であった。仕掛けを投入したら浮きは少し左右に動き、突然まっすぐ海面に沈んだ。こん身の力を込めてリールを巻き上げ、漁船近くのロープに引っかからないように、糸が切れないようにと願いつつ20分は格闘した。間違いなくチヌであり、釣りの仲間からタモですくってもらい釣り上げた。周りから歓声、拍手が上がり、無心の勝利と自負し最高に嬉しかった。体長は34.5センチはあった。とりあえず魚拓にし、一日冷蔵庫に保管して妻と共に刺身、焼き魚、あら汁にして食べた。仕掛けを紹介すると、浮きは40センチ位の「高知浮き」で、道糸2号、ハリス0.8号、クッション付きの重り1号、チヌ針1号にミニかごを使用しており、餌は藻エビ、大粒の生オキアミである。
 ある漁民から「コマセのまきすぎで魚が減り、生態が変わった。コマセで海を汚し、海底はコンクリートの状態になってしまう。ルールを守り自粛し楽しい釣りにして欲しい」という話を聞いた。貴重な意見を拝聴しながら、私もコマセ釣りや「だんご」釣りは止めようと思っている。そして数より釣りのプロセスを大事にしょうと思っている。
 我が「第2のふるさと」は、いつまでも自然の豊かな町であって欲しいと願っている。