[海外レポート]
「健康と障害についてのWHO会議」に参加して
研究所 障害福祉研究部  寺島 彰



 2002年4月17日(水)から20日(土)まで、 イタリアのトリエステで開催されました「健康と障害についてのWHO会議」に出席しましたのでご報告します。
 この会議の目的は、2001年5月にWHO総会で採択された国際生活機能分類 (ICF: International Classification of Functioning, Disability and Health)の公表をうけて、 「健康と障害に関する国際的な議論を推し進めること」でした。
 参加者は、イタリア国内から約300人と世界約50カ国から約150人でした。 予定では70カ国からの参加者があるということでしたが、実際に参加したのは約50カ国でした。
 プログラムは、表のとおりでした。 初日は、イタリア人を対象に、 ICFのイタリア語版の翻訳本が完成したことを国内に発表するためのイベントとして位置付けられていたようで、 記者発表やテレビ取材等がなされ、イタリア国内に報道されました。 2日目以降は、主に、ICFの統計調査と医学臨床への活用法についての発表と議論がありましたが、 プログラムからもわかるように、レベルの違う報告が混在していました。 この理由としては、発展途上国からの参加者が多く、ICFの世界的な普及が目的のひとつであるためのようでした。 開催国のイタリア自体がICFになじみが浅く、初日のイタリアンデイでは、 国際障害分類の歴史等基本的なことを解説することに終始していました。 1998年3月に東京で開催した「国際障害分類に関するセミナー」を思い起こしました。 今回の会議は、イタリアのFriuli Venezia Giulia県が主催者兼スポンサーになっていました。 そのために、会議の最初には、県知事の挨拶が行われています。
 会議では、WHO関係者は、盛んにICFの有効性をPRしており、特に、 開発途上国から政府関係者に対するICFの普及方法の助言のために特別の時間を設けるなど積極的な活動をしていました。
 WHOとしては、当面、ICFの統計への活用を狙っているようでした。 特に、まだ、センサスも確立していない発展途上国の統計にICFの活用することと、 国際的な統計を実施するためのプロジェクトチームの活動への期待が述べられていました。
 また、医学臨床とICFを結びつけるための議論もありましたが、 これには、かなりの時間を要するという共通の認識があり、 障害を特定したコア・セットを種別毎に開発していくことの必要性が取り上げられていました。


会議初日「イタリアンデイ」の様子 会議2日目「円卓会議」の様子




4月17日 イタリア人会議
4月18日
(9:00〜9:10)
歓迎挨拶
 Renzo Tondo (主催者Friuli Venezia Giulia県知事)
(9:10〜9:30)
開会挨拶
 Girolamo Sirchia (イタリア保健大臣)
 Gro Harlem Brundtland (WHO事務局長)
 Chris Murray (WHO政策の根拠と情報局長)
(9:30〜11:30)
円卓会議T:健康と国の豊かさ
 David Canning (Queen's大学Belfast校経済学教授:アイルランド)
  「人的資本としての健康とそれが経済に与える影響」
 Giuseppe Nistico (EU議会議員:イタリア)
  「健康を改善するための調査を改善する」
 David Evans (WHO Global Programme on Evidence for Health Policy部長)
  「健康・教育・経済発展」
(14:30〜16:30)
円卓会議U:障害があっても健康か?
 Marijke W. de Klein (オランダWHO国際分類ファミリー協力センター所長、ライデンTNO予防健康研究所所長:オランダ)
  「障害があっても健康か?」
 Jerome E. Bickenbach (Queen's大学、哲学・法律・医学教授:カナダ)
  「障害があっても健康か?」
 Andre Gubbels (EU委員会、障害局雇用・社会問題総務課課長)
  「障害と健康:新しい障害のパラダイムの実行」
 Giampiero Grifo (DPIヨーロッパ会長、ヨーロッパ障害者フォーラム全国イタリア評議会代表、イタリア障害克服連盟理事:イタリア)
  「人権問題としての障害」
 Yerker Anderrson (障害者全国評議会:アメリカ)
 Qui Zhouying (中国リハビリテーション研究センターリハビリテーション情報研究所上席研究員:中国)
  「障害のコンプリヘンシブモデルの構築とICFの適用」
 Chris Murray (WHO政策の根拠と情報局長)
  「健康の概念」
(17:00〜18:00)
政府参加者との分科会
   
4月19日
(9:00〜10:45)
全体会議1:障害統計の問題点はなにか?
 Michael Wolfson (カナダ統計局局長:カナダ)
  「障害統計の問題点」
 Mary Chamie (国連統計課人口動態・社会統計室主任)
  「国際障害統計:我々はどこに向かっているのか」
 Gaetan Lafortume (OECD健康政策室顧問)
  「健康・障害統計の比較可能性を改善するための実際的な歩み」
 Helen Nviiri (ウガンダ統計局主任統計専門職)
  「ウガンダにおける障害統計」
 Alicia Bercovich (ブラジル地理統計研究所)
  「ブラジルの障害統計」
 Somnath Chatterji (WHO政策の根拠と情報局、根拠についての世界プログラム、分類・評価・調査・用語チーム)
  「障害統計の問題点」
(11:00〜13:00)
全体会議2:ICFと健康情報システム
 Ed Sondik (疾病管理・予防センター全国保健統計センター所長:アメリカ)
  「米国の保健統計とICFにおける21世紀の見通し」
 Michael Wolfson (カナダ統計局局長:カナダ)
  「カナダの方向性とICF」
 Richard Madden (オーストラリア保健福祉研究所所長)
  「オーストラリアの保健情報システム」
 Myint Htwe (WHO東南アジア地域事務局保健分析特別プログラム訓練方法専門官)
  「東南アジアの保健情報システム」
  「WHO東南アジア地域事務局のICFについての取り組み状況と今後の可能性」
 Mounkaila Abdou (WHOアフリカ地域事務局健康分析地域専門官)
  「発展途上国におけるICFと保健情報システム」
 Boberto Becker (WHO汎太平洋保健機関健康分析特殊プログラム疾病分類地域専門官)
  「アメリカの保健情報システムにおけるICF」
(14:30〜18:00)
分科会1:医学臨床とICF
 Rachel Jenkins
  「ICFと臨床の成果」
 Paul Garfinkel
  「ICFと薬物乱用」
 Cille Kennedy
  精神保健におけるICFの活用
 Gerold Stucki
  「ICFコアセットの開発」
 Rune Simeonsson (ノースカロライナ大学チャペルヒル校教育・調査・心理学教授)
  「ICF:児童向けバージョンの開発」
 Jayne Lux (米国心理学境界理事運営委員会会長)
  「ICFの臨床活用」
 Gretchen Swanson
  「ICFコード」
(14:30〜18:00)
分科会2:調査とICF
 Sowarta Kossen (国立保健研究開発研究所健康経済政策分析調査班主任:インドネシア)
  「CBRにおけるICF:インドネシアの経験」
 Jennifer Jelsma (ケープタウン大学リハビリテーション・健康科学部主任研究員:南アフリカ)
  「南アフリカの地域調査におけるICF」
 Mitchell Loeab (SINTEF疫学調査学者:ノルウェー)
  「ナミビアとザンビアにおける全国家庭生活調査におけるICFの利用」
 Renee Langolois (カナダ統計局家族・社会調査課:カナダ)
  「新しいカナダ障害者調査とICF」
 Montserrat L. Cobo (INE全国統計センター保健統計局社会労働統計部:スペイン)
 「スペインの障害者調査におけるICF」
 Elena de Palma (全国統計センター障害情報システムプロジェクト研究員:イタリア)
  「“障害情報システム”プロジェクトとICF」
 Howard Meltzer (全国統計調査事務所社会調査課主任社会調査員:イギリス)
  「英国障害者全国調査:過去の軌跡と将来の挑戦」
 Ros Madden (オーストラリア健康福祉研究所障害者サービス課課長:オーストラリア)
  「オーストラリアの障害者保健調査」
 Juergen Rehm (チューリッヒ専門調査研究所専務理事:スイス)
  「保健調査における障害測定−論理的な考察とカナダとドイツでの経験」
 Paul J. Placek (CDC全国保健統計センター中央管理事務所上級保健統計専門官:アメリカ)
  「DIDTAB:全国調査と国勢調査をICFに変換する」
 Bedirhan Ustun (WHO Global Programme on Evidence分類評価研究と用語チームコーディネーター)
  「ICFと世界保健調査」
   
4月20日 午前 まとめと分科会からの提案