[国際協力情報]
海外研修生紹介
管理部 企画課



 7月22日から8月2日までの2週間、 当センターで研修をされたバングラデシュのDr. Samad (耳鼻科医師) に自己紹介と母国における難聴予防とケアの状況を紹介していただきました。


 私の名前は、MD. Abdus Samad(モハマッド アブドドウス サマド)と言います。 年齢は35歳です。 バングラデシュの首都ダッカにある、国立小児言語聴覚センターの医師です。 専門は耳科学で、主に耳の手術や診療に携わっています。
 今回、武田科学技術財団の奨学金を得て、 日本に7月から9月までの3ヶ月間の研修に参りました。 国立リハビリテーションセンターでは耳鼻科と聴覚・言語訓練部で研修し、 特に訓練体制については、非常によく調整されており、 これは私にとって驚きでもあり、とても参考になりました。 バングラデシュでは、日本のような診療予約システムがありませんので、 大勢の患者さんの診察に追われ、また、 農村部での耳鼻科診療や難聴に関する実地調査にも携わるなど大変忙しい日々を送っています。 私は今回の日本での研修により、 母国の耳鼻科診療の技術向上と難聴のリハビリテーションに関する日本の現状を知るという目的を持っています。
 私の妻も医師で、妊婦の保健医療に携わろうと勉強しています。 好きなことは旅をすることとそこで友人を作ることです。 私の実家では大きな敷地に"チチンガ―" (きゅうり)を栽培しています。 日本に来て、暑いでしょうと言われましたが、バングラデシュに比べれば過ごしやすいです。
 皆様に私の働くナショナルセンターの活動とバングラデシュの難聴に関する医療について簡単にご紹介させていただきたいと思います。


バングラデシュ国立小児言語聴覚センター

 バングラデシュ聴覚障害児協会(SAHIC)は、難聴の早期発見・機能回復・聴力再建、 国民の聴覚障害に対する啓蒙等を目的として1987年に創設されました。
 当協会は1989年から最初のプロジェクトとして“農村部のイヤーキャンプ”を開催し、 山間部の村民に難聴の悪影響や避けることができる聴覚障害について喚起を促して参りました。 このプログラムを通じて15万人以上の患者さんが無料で治療を受けました。
 この協会のもとに、1992年に国立小児言語聴覚センター(SAHIC)が設立されました。 このセンターの目的は、バングラデシュの国民に難聴の早期診断、耳・鼻・のどの治療、 聴覚障害児の機能回復訓練等を行うことです。
 1992年の創設時には患者数が3,740人でしたが、年々増えつづけ、 2001年には4万9千人になりました。 聴力検査数も3,600人から1万人になりました。 創設以来の総患者数は約30万人で、そのうちの10万人は15歳以下の子供です。 補聴器が必要な貧困家庭の子、孤児には低価格または無料で提供します。
 同じく、聴覚障害児のための幼稚園(IPSHIC)があります。 1944年設立で、160名定員で3歳から6歳を対象とし、補聴器適応の訓練をします。 ここで、幼稚園教育と言語訓練を受けると普通学校への入学をすることができます。
 失聴予防と聴力再建ための手術は言語聴力センターのビルにある耳鼻科専門病院(SENTH)で1999年に28床でスタートしました。 昨年までの3年間に約1900人が入院、手術を受けました。
 さて、国立小児言語聴覚センターのサブセンターが南部の商業都市Chittagong(チッタゴン)にあります。 そこでの活動内容は@外来 A聴力検査 Bイヤーモールド研究 C聴覚障害児の幼稚園等です。
 WHOの“難聴予防”プログラムの一環として、農村地域の保健センター医師、 村で活動しているパラメディカルスタッフ、小学校教員ためのの1週間のトレーニングコース、 個人開業医のための1日コースが創設されました。 これまでに、510人の保健センター医師、551人の個人開業医、 661人のパラメディカルスタッフが研修を受けました。 また、WHOの活動として、“バングラデシュにおける難聴の発生率”の研究も行っています。
 しかし一方では、バングラデシュでは聴覚・言語訓練士、 マイクロサージェリーの技術を持った医師、 難聴児教育の教員などのマンパワーと様々な器具や機器が大変不足している状況です。 こういった状況の中で我々は診療を行い、難聴予防(特に農村部での活動)に従事しています。
 今回の私の研修はこういった状況の中で、日本の技術を学び、母国の聴覚障害医療、教育に活かすことなのです。


Dr. MD. Abdus Samad
バングラデシュ国立小児言語聴覚センター医師
Mohakhali, Dhaka, Bangladesh



海外研修生と研修担当部門の第二機能回復訓練部スタッフとの集合写真