[病院情報]
ナースキャップをはずす試み・廃止に向けての取り組み
病院 看護部  天野 節江



 昨年、7月17日の看護婦長会議において婦長会メンバーから、 ナースキャップをはずしたいという提案がありました。 理由は、患者さんのケアを行うとき患者さんやベットにぶつかる、 病室のカーテンや輸液のラインに引っかかり危険である等です。 まずは、私達婦長会議メンバーで他院の取り組みついての文献探索を行い資料を揃えて勉強会から始めました。 勉強会を終えたところで、ナースキャップをはずす取り組みに向けてのスケジュールを立て目標にむかって行動しました。


1.看護婦(士)89人に、ナースキャップをはずすことについて意見を聞いた。

 結果:     (平成13年10月2日)
 ナースキャップ

廃止賛成   73人 82%
廃止反対    5人  6%
どちらでも良い 8人  9%
無効       3人  3%
賛成とどちらでも良いを合わせると
         81人 91%

廃止反対理由には:

・ナースのシンボルであり、キャップを着けると気持ちが引き締まる
・ナースキャップを着けることでイメージとして大きな役割を果たしている
・患者は、ナースキャップを着けていることで看護婦と他職種を区別している大事なキャップ
・戴帽式の感動が忘れられない、せめて選択性はどうか。


2.賛成とどちらでも良いを合わせると91%であった。 90%以上がナースキャップをはずすことに同意していることを確認し、 廃止することに向けてのスケジュールを確認した。


3.ナースキャップをはずす(廃止)目的の確認(平成13年11月6日)

1)安全性

@細菌の感染源になることを回避する(ナースキャップの細菌汚染の実態調査資料によって確認 )。
A患者にナースキャップがぶつかる危険性を回避する。

2)効率性

@患者の安全性を考えて、輸液ライン、カーテンにひっかけることを回避する。
A感染症の病室に出入りする時、キャップの着脱が非効率になることを回避する。

3)看護婦の健康面

@髪を引っ張ることによる脱毛、ピンの刺激による禿げを回避する。


4.キャップ廃止の試行実施の設定(平成13年11月20日)

1)期間   平成14年1月7日〜2月28日

2)試行実施の目的

@認知障害を持った患者が理解できるか。
A看護婦は業務(作業)が効率的に行えるか。
B看護婦は髪型を整える(患者のケアをするのに相応しい髪型に整える。)。
Cナースキャップをはずした看護婦に見慣れていただく。

3)試行実施期間の延期(平成13年12月25日)

平成14年1月7日からの試行は、時期早々となり延期となった。

4)試行実施期間の再設定(平成14年6月4日)

期間   平成14年7月1日〜31日


5.試行実施に向けての準備・・・看護部全員で役割分担をした(平成13年11月20日→平成14年6月4日に再確認して直ぐに開始)

1)外来患者への説明

テロップ(3ケ所)にて流す、各外来前に、お知らせとして張り出す

2)入院患者への説明

入院患者へは、受け持ち看護師が個別的に関わって説明を行った。 特に認知障害をもっている患者には時間を要して説明を行い、 3階病棟は看護師全員の顔写真を撮って氏名と顔を一致させて覚えていただく準備を始めた。

3)看護師の身だしなみを整えることの再確認

特に、髪型については気にしている看護師が多く、意見も建設的に出された。
清潔感があり、安全で他人に不快感を与えないという基本のもとに、 看護師としての自覚を持ち職業に相応しい品性のある髪型・髪の色とすることでまとめた。


6.病院・センターへの報告と他部門への連絡

1)病院部長会での報告(平成14年6月)

2)センター幹部・部長会に報告

3)病院職員へ連絡


7.試行実施中に、看護師がナースキャップをはずしたことについての意見を、 患者、職員、看護師から聞いた(平成14年7月15〜19日)

結果:
1)入院(115名)・外来患者(50名)様にインタビュー
@ナースキャップをはずして看護師とわかったか。

はい(分かった)と答えた人は、

149名 90.3%

いいえ(分からなかった)と答えた人は、

 16名  9.7%

A看護師がナースキャップをはずしたことで困ったか。

はい(困った)と答えた人は、

 8名  4.8%

いいえ(困らなかった)と答えた人は、

152名 95.2%

B看護師がナースキャップをはずしたことで看護師と分からなかったと答えた患者、困ったと答えた患者の理由は以下のとおりです。

・遠くから見た時にわからなかった(キャップで看護師と分かっていた)
・パンタロンスーツのユニホームを着用している看護師は、他の職種と区別がつきくにくい
・実際、体験はしていないが、困りそう

Cナースキャップをはずした印象を聞いたところ、次のような意見でした。

・すっきりして、仕事がしやすそうで違和感はない
・きちんと仕事をすれば良い(つけても、つけなくとも)
・昔のイメージで見てしまうが着けなくて良い
・ナイチンゲールのイメージでもあり反対
・今までのイメージでもあり、遠くから看護師とはわかりにくい
・髪が落ち着かない
・制服の一部でもあり清潔感、毅然とした姿勢でいることが大事である

2)病院職員(看護部以外)43名 記入式 無回答 重複回答一部あり
@ナースキャップをはずしたが、看護師とわかったか

はい(分かった)

35名  83%

いいえ(分からなかった)

 7名  16%

A看護師がナースキャップをはずして困ったか。

はい(困った)

 5名   5%

いいえ(困らなかった)

40名  93%

B看護師がナースキャップをはずすことに関しての意見

・パンタロンスーツのユニホームのときは他職種との区別がつきにくい
・清潔感が薄れる
・見慣れないせいか緊張感がないようにみえる
・氏名がわかるように名札を付ける、あるいはユニホームにネームの刺繍をいれる
・ユニホームの統一(色、形等)
・ナースキャップを外すと髪が全て見えてしまいます。 ナースキャップはナースのトレードマークで「きりっと」 としたところあって気持ちの良いものでした。 「きりっと」した髪型であってほしいと思います。

3)看護師 85名 記入式

@看護師としてナースキャップをはずしていいか
 4名 5%がはずしたくない、と言う回答であった。理由としては以下である。

・髪を整えるのが大変
・白衣のスタイルにマッチしない


 以上のアンケート結果からも、私達はキャップを着けなくとも、 看護師として自覚と責任をもって仕事していくことを確認しました。


8.ナースキャップ廃止の試行期間の延長(平成14年7月30日)
 アンケート結果の報告と正式に廃止する事の報告を行う

@病院部長会議での報告
Aセンター幹部・部長会議での報告
B病院職員への連絡

上記への報告と連絡が終了するまでの間、ナースキャップをはずす試行期間を延長としました。

ナースキャップ廃止をお知らせする際に使用した、ナースキャップ廃止後の看護師の様子を表す簡単な図


 私は、1996年にオーストラリアに研修に行く機会を得ました。 シドニーのセント・ジョージ病院で研修を行いました。 学びの多い研修でしたが、中でも私の記憶に鮮明に残っていますのが、 セント・ジョージ病院のナースはキャップは着けていませんでしたが、 髪の整え方がとても好感の持てたことでした。 もちろん、ユニホーム は白衣ではなく、 スタッフナースは紺のスラックスに花柄のブラウス、 基本的な色の取り決めがされていて、 役職によって形や色の使い方で変化をもたせていました。 ナースの髪の整え方には、 ユニホームの襟に髪の毛がかかっているナースを見かけませんでした、 長めの髪の人はまとめてアップをしていました。 束ねた髪の毛の先を見せていませんでした。 私は管理者の方に、「細々した取り決めをしているのか」 と質問をしましたが、答えは『取りきめはしていない、個人の意識です』と、 いとも簡単に回答されたことも覚えています。 当時、日本では看護婦がナースキャップをはずす試みを始めている病院の情報もありました。 当院の看護部の中でもナースキャップをはずしたいという意見も少しずつ出始めていました。 今回、ナースキャップをはずす試行期間中に、 患者様、職員の皆さんから意見をお聞きした中で、 看護師の髪の整え方に注目をして下さっていることが良くわかりました。 看護師も髪の整え方をとても気にしています。 私達看護師は、ユニホーム着用時の身だしなみ、 特に髪の整え方は、キャップをを着ける、 着けないにかかわらず整えなければなりません。 しかし、今まで髪の形を整える時にナースキャップにカバーされていたことも事実だと思います。 私は、今一度6年前にオーストラリア研修で感じた感激を思い起こし身だしなみに注意していきたいと思います。

 私達は、シンボルとしてのキャップを付けなくとも看護師として自覚と責任をもって仕事 をしていきます。 ユニホームの左上に職種名とフルネームを付けて業務に就く準備をしております。 看護部職員一同、身だしを整えることに、十分留意していきたいと思います。
 今後共ご意見がありましたら、お聞かせください。

平成14年8月14日 記


名称変更

平成14年3月1日付
看護婦(士)から看護師となりました。