豊かな人間関係をつくるために
−理療課教官研修会開かれる−
理療教育部 滝 修



 国立施設管理室主催の「理療課教官研修会」が、7月29日(月)から五日間、更生訓練所を会場に開かれ、当センター理教部教官の他、函館・塩原・神戸・福岡の視力障害センターから32人が参加しました。印象深かったポイントをいくつか紹介します。
 今年は、「ラポートづくりのための心と言葉」というテーマで、「患者さんとのコミュニケーションの取り方」、さらには「入所者との間で信頼ある人間関係をどう作っていくか」などについて、講座とディスカッションをもちました。
 1日目に基調講演をお願いした橋本信也先生(元気会横浜病院院長)は、「医療は治療者と患者が協力し合って苦痛を癒すものであり、今日両者のコミュニケーションの在り方が問われている。」と強調されました。ある調査によれば、患者さんの4人に一人は自分が受けている医療行為に対して何らかの不満を抱いており、その大半は治療者側からの説明不足によるもので、コミュニケーションについての満足度が治療効果の面からも重要とのことでした。
 また三日目、白井幸子先生(ルーテル学院大学教授)の「交流分析」についての講座は、ご自身の臨床家としての豊富な経験を基に、具体例を示しながらとてもわかりやすいお話でした。
 1950年代にアメリカで創始されたこの理論は、臨床心理学の立場から、人間の心を理解しようとするもので、「人間の心の中に内在する五つの要素(自我)に注がれる心的エネルギーのバランスによって性格が決定される」というものです。健康者では、その時々の環境に応じて各要素に適切にエネルギーを注ぐことで、それぞれの自我を自由に使いこなすことができるといわれています。今回は、この自我状態をチェックする心理テスト「エゴグラム」を各自が事前に行い、研修に望みました。ストレスに満ちた状態に直面したとき、陥りやすい心理状態を予測することは、訓練や治療を効果的に進める助けともなり、日常の指導の中に早速生かすことのできる貴重なお話でした。
 最も暑さの厳しい時季でしたが、実技研修なども熱心に取り組まれ、参加された皆さん、それぞれに多くの収穫を持ち帰っていただけたものと思います。


鍼の実技研修の様子