〔国際協力情報〕
平成14年度JICA補装具製作技術研修コースを終えて
研究所 補装具製作部 高橋功次



 国際協力事業団(JICA)の委託を受けて、研究所・補装具製作部を中心に行われていた補装具製作技術研修コースが、去る12月6日に約3ヶ月半の全日程を終了し、全員、大きなケガや病気もなく無事に帰国の途につきました。今回は、4名(タイ、ペルー、セネガル、ボリビア)の研修生を受け入れました。
 本研修コースの対象職種は、補装具の適合経験5年以上の技術者を基本として、所属機関のリーダー的立場の方を招聘しています。しかし、国によっては、これまで実務経験はないが、帰国後に指導的立場で業務にあたる医療専門職(OT、PT、医師など)が派遣されることもあります。今回は、2名が未経験者でありましたが、研修生同士で助け合い、夜遅くまで実習を続けるなど、技術習得に対する姿勢は実に熱心でありました。
 研修の内容は、講義、実習、見学を組み合わせて、幅広く知識見聞ができるように構成しております。 まず初めは、医学・運動学・材料学・義肢装具学についての集中講義を10日間実施しました。この講義の講師には、センターで行われている補装具判定医師研修会の講師陣を中心に、義肢装具分野において第一線で活躍されている各専門職の方々と、国リハセンター病院や研究所の職員にご協力をいただきました。
 義肢装具製作適合実習は、学院・義肢装具学科と補装具製作部が担当して、義手(2種類・14日間)、装具(5種類・13日間)、下腿義足(13日間)、大腿義足(15日間)の順で実施しました。指導方法は、学院・義肢装具学科での体系立てた方法に準じて行い、単なる技術研修に終わるのではなく、帰国後に指導を行うためのベースになることを意図しております。
 見学では、小児療育施設や義肢装具部品メーカー(2社)などの施設見学、国際福祉機器展(東京)、日本義肢装具学会(福岡)への参加を企画して、実習では得られない小児の義肢装具の臨床と、最新の義肢装具と福祉機器の情報収集が行えるよう配慮しました。
 最終日の研修評価会では、@自分にとって有益であった内容、A帰国後、職場へ貢献できる内容、B研修コース全般に対する意見、C日本の社会・文化に対する感想の4項目について研修員、JICA担当者、リハセンター側の間で意見交換が行われました。全員、本研修の内容に満足しており、各々が課題としていた事項について成果を得たとの評価を得ました。
 夕刻から行われた送別パーティーでは、JICA、センター関係者、海外来訪者ボランティア団体・所沢インターナショナルファミリー(TIF)のメンバー、実習でお世話になったモデルさんの参加を得まして、帰国を前にした挨拶や思い出話でにぎわう中、研修生からは母国の歌や踊りの披露もありました。顔がほころび、研修生を囲んでの記念撮影があちらこちらで行われ、別れを惜しむにはあまりにも時間が短く感じたことは、滞在期間中の交流の深さを意味するものでした。
 この研修コースは、研修員の帰国後の定着率が高く、良好な技術協力が行われていると思っています。今後も、受け入れ相手国の事情を考慮しつつ、最適な技術移転が実施できるように努力していきたいと考えています。
 最後に、本研修コース実施に当たって、ご協力を頂きました外来講師の先生方を始め、センター職員や関係者の皆様に改めてお礼を申し上げます。



補装具製作研修(切断している様子) 補装具製作研修(寸法を測っている様子) 補装具製作研修(補装具を研磨している様子) 補装具製作研修(型を作成している様子)