〔学院情報〕 |
平成14年度身体障害者福祉関係職員 |
実務研修会実施報告 |
学院事務室 |
当センター学院が、昨年の10月中旬までに開催しました、手話通訳士専門研修会、リハビリテーション看護研修会及び、作業療法士研修会の実務研修会について、その概要をとりまとめましたので、ご紹介いたします。
なお、これら研修会の日程表は、別表1〜3のとおりです。
|
9月30日〜10月4日までの5日間の日程で、手話通訳士専門研修会を実施しました。本研修会は、厚生大臣公認手話通訳士試験の合格者を対象とし、さらなる技術・知識の向上に寄与することを目的として実施しています。手話通訳士試験がスタートしたのは平成元年ですが、翌年の平成2年度には研修会をスタートさせ、今回が13回めです。これまでに238名が受講・修了しております。
今回の研修会のプログラム編成に際しては、例年通り、手話通訳士に求められる専門性として重要な課題となっている以下の三点をその柱としました。
(1)聴覚障害者の人権に深く関わる分野(例えば、教育、医療、裁判、財産管理、福祉、政見放送等)における専門性を高めること
(2)地域における手話通訳活動全般に関するコーディネーターとしての役割を果たすこと
(3)多様な背景をもつ聴覚障害者のさまざまなニーズに対応できること
これに、本センター学院手話通訳学科における通訳指導の最新の理論と実践を紹介する実技科目を加え、プログラムを作成しました。講師陣には、例年ご協力をいただいている講師の先生方のほか、「聴覚障害者の心理臨床」で、関連書籍の編者でもある大正大学教授の村瀬喜代子先生をお迎えしました。また、今回も日本手話通訳士協会のご協力をいただきました。
今回の研修会のプログラム・内容は、受講者には概ね好評でした。受講者の意見では、「実技関係の科目の時間が足りず、消化し切れなかった。もっと時間を増やしてほしい」という声が目立ちました。
今年度から(社福)全国手話研修センターが発足し、同種の研修会が定期的に開催されるようになりました。今後は、本研修会のあり方そのものが問われてくるものと思われます。センターの独自性を生かすという意味でも、受講者からの要望の強い実技関係の科目を充実させた、あるいは、それに的を絞ったプログラム編成ということも視野に入れて、来年度に向け検討していきたいと考えています。
|
10月8日から10月11日まで4日間リハビリテーション看護研修会が「脳損傷の認知障害の看護」のテーマで開催されました。本年も各地の施設、リハ病院、一般病院から68名の参加がありました。かねてから希望されたテーマであったこと、また今回初めて家族看護を取り入れたことが特に好評でした。国リハ4階病棟の堤さんの感想を掲載します。
4階病棟 看護師 堤 美穂
3階病棟に勤務していた頃、高次脳機能障害についての勉強会に参加していたため、講義で聞く内容は初めてというものは少なかった。しかし、実際に多くの症例を経験した後で聞く講義はより実感をもって理解を深めることができたように思う。脳損傷の方々の認知障害は症状が非常に多彩であるが故に、看護のかかわりも画一的ではない。看護師として柔軟な発想が求められるため、大変ではあったが少しでも良くなって退院していく姿を見送るとき、看護師をしていて良かったと思うことも度々であった。今後実際に認知障害の看護をする機会にめぐまれればとも思った。
また、家族看護という講義を初めて受講した。保健師学校時代すでに、現代の看護の在り方についての講義を受けていたため、退院後本人家族にとって最善の帰結は在宅だけではないことは十分承知している。しかし、臨床で働くようになり頭の隅に、やはり在宅が好ましいのではないかという在宅への呪縛のようなものを感じていた。しかし、渡辺先生の講義を受けて、在宅だけが本人、家族の幸せではないこと。家族や本人が迷い選択したことを尊重することが大切であり、そして迷っている時に看護師は家族のリーダーシップではなくパートナーとしての立場で寄り添うことが大切であるということを学んだ。
また、当院医療相談室の久保先生の講義では、MSWとしての仕事の内容よりも、人として患者と向き合う姿勢が大切なのは、相手を正しく理解して思いやる心であると淡々と話してくださったことが印象的であった。人を正しく理解するには、相手の心の機微を感じとる感受性が求められる。日々相手の気持ち、そして自分の気持ちにも丁寧に向き合って看護をしていきたいと思う。
|
去る10月23日(水)〜25日(金)の3日間、平成14年度作業療法士研修会を開催いたしました。研修テーマは昨年度と同じ「頸髄損傷の作業療法(ADLを中心に)」です。頸髄損傷者の訓練には、多くの患者さんから学んだ知識、技術の積み重ねおよび急速に変わるIT機器、福祉機器に関する知識と応用力が必要です。当センター病院の作業療法対象患者さんの約半数が脊髄損傷者であることから、私たちは日々頸髄損傷者の訓練に携わっています。その中で培った技術を、経験することの機会が少ない作業療法士に伝達することが本研修会の目的です。講師として福祉機器専門官、理学療法士、研究所職員、医療福祉相談専門職の方々の援助を頂くとともに作業療法士全員で対応しています。研修形式は、頸髄損傷の日常生活に関する作業療法のノウハウを少しでも適切に伝えられるよう、基本的な講義に続く実習、デモンストレーションを重視しています。このため受講者数を20名に絞らせてもらっています。さらに受講生の実務経験年数を4年未満優先としているため、若さ溢れる作業療法士が熱心に、積極的に参加して下さいました。終了後のアンケートからは「役に立つ」との意見を多く頂いたこと、受講者数を絞ったことを考慮し、内容を吟味しながら継続したいと考えています。
|
月 日 | 午 前 | 午 後 |
9月30日 (月) |
開講式・オリエンテーション (13:00〜13:30) 聴覚障害者と言語T (13:30〜17:00) 国立身体障害者リハビリテーションセンター 学院教官 市田 泰弘 |
|
10月1日 (火) |
聴覚障害者と言語U (9:00〜12:00) 国立身体障害者リハビリテーションセンター 学院教官 市田 泰弘 国立身体障害者リハビリテーションセンター 学院教官 木村 晴美 |
手話通訳派遣業務 (13:00〜15:00) 横浜ラポール聴覚障害者情報提供施設 施設長 北村 和武 障害者福祉の理念と動向 (15:10〜17:10) 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 障害福祉専門官 坂本 洋一 |
10月2日 (水) |
通訳トレーニング技法T (9:00〜12:00) 【 日本語 → 手話通訳 】 国立身体障害者リハビリテーションセンター 学院教官 木村 晴美 東京家政大学 非常勤講師 小薗江 聡 世田谷福祉専門学校 非常勤講師 赤堀 仁美 市川市ろう者協会 手話対策部長 数見 陽子 東京家政大学 非常勤講師 越後 節子 |
通訳トレーニング技法U (13:00〜17:00) 【 手話 → 日本語通訳 】 国立身体障害者リハビリテーションセンター 学院教官 市田 泰弘 国立身体障害者リハビリテーションセンター 学院教官 森田 純子 |
10月3日 (木) |
政見放送における手話通訳(9:00〜12:00) 日本手話通訳士協会 事務局 山田 京子 国立身体障害者リハビリテーションセンター 更生訓練所生活指導専門職 森本 行雄 |
訟務における手話通訳 (13:00〜17:00) 都民総合法律事務所 弁護士 田門 浩 視覚障害者をめぐる世界的動向 (17:10〜19:10) 全日本ろうあ連盟 本部事務所長 大杉 豊 |
10月4日 (金) |
医療場面の手話通訳 (9:00〜12:00) 日本手話通訳士協会 理事 小椋 英子 |
聴覚障害者の心理臨床 (13:00〜15:00) 大正大学人間学部 教授 村瀬 嘉代子 大正大学カウンセリング研究所 相談員 並木 桂 閉講式 (15:00〜15:15) |
|
テーマ:脳損傷の認知障害と看護
月 日 | 午 前 | 午 後 |
10月8日 (火) |
開講式・オリエンテーション (13:00〜13:30) 障害者福祉の動向 (13:30〜15:00) 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 障害福祉専門官 小田島 明 脳損傷の認知障害とリハビリテーション −チームアプローチ− (15:10〜16:30) 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 神経内科医長 三輪 隆子 |
|
10月9日 (水) |
脳損傷の急性期から慢性期の病態生理 (9:00〜12:00) 聖隷三方原病院 リハビリテーション科科長 高橋 博達 |
心理評価 (13:30〜15:30) 神奈川リハビリテーション病院 臨床心理士主査 坂本 久恵 脳損傷の認知障害と作業療法 (15:40〜16:40) 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 作業療法士長 森田 稲子 |
10月10日 (木) |
脳血管障害の看護アプローチ (9:00〜10:30) 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 3階病棟看護師長 横田 美恵子 頭部外傷の看護アプローチ (10:40〜12:10) 神奈川リハビリテーション病院 看護師長 小林 美佐子 |
家族看護の理論と実践 (13:30〜16:30) 家族看護研究所 所長 渡辺 裕子 1.講義 2.グループワーク(事例検討) |
10月11日 (金) |
社会的支援 (9:00〜12:00) 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 医療福祉専門職 久保 明夫 |
閉講式 (12:10〜12:30) |
|
テーマ:頸髄損傷の作業療法(ADLを中心に)
月 日 | 午 前 | 午 後 |
10月23日 (水) |
開講式・オリエンテーション (10:00〜10:30) 福祉機器 (10:30〜12:00) −補装具・日常生活用具の給付− 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 福祉機器専門官 赤坂 浩 |
頸髄損傷の作業療法 (13:00〜14:30) −ADLの視点から− 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 作業療法士長 森田 稲子 車いす (14:45〜16:45) 車いす上座位姿勢 車いすの選択 頚損者の車いす処方について 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 主任理学療法士 吉田 由美子 |
10月24日 (木) |
頸髄損傷の医学的知識 (9:00〜10:30) −障害像と予後− 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所 運動機能系障害研究部長 赤居 正美 食事・整容 (10:40〜12:30) @ 講義とビデオ 評価・訓練・自助具 A デモンストレーション、実習 スプリングバランサーと自助具の活用 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 作業療法士 野月 夕香理 |
移乗・更衣 (13:30〜14:50) 講義 ベッドへの移乗と更衣に関する 評価・訓練・自助具 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 副作業療法士長 井上 美紀 排泄 (15:00〜16:00) 講義 排泄の評価・訓練・自助具 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 主任作業療法士 山本 正浩 デモンストレーション (16:00〜17:00) 移乗・更衣・排泄 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 副作業療法士長 井上 美紀 主任作業療法士 山本 正浩 |
10月25日 (金) |
コミュニケーション (9:00〜10:50) 講義と実習 パソコンの付加機能、代替機器、補助具 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 作業療法士 伊藤 伸 環境制御装置 (11:00〜12:00) 講義とデモンストレーション 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 作業療法士 深澤 佳世 |
環境調整 (13:00〜14:50) 講義とデモンストレーション 家屋改造と福祉機器 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 主任作業療法士 大塚 進 医療相談 (15:00〜16:00) −福祉制度活用の方法と援助− 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院 医療福祉相談専門職 久保 明夫 閉講式 (16:00〜16:15) |