〔学院情報〕
平成14年度学院卒業式
学 院



平成14年度学院卒業式 卒業証書授与の様子  去る、3月10日(月)の10時から、当センター学院講堂において、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 佐藤孝一国立施設管理室長を始め、多数のご来賓、当センター職員のご出席をいただき、平成14年度学院卒業式を開催しました。
 この式典では、開会の冒頭、当センターの佐藤総長より卒業生一人一人に卒業証書の授与があり、続いて長岡学院長より次のとおり式辞がありました。

卒業式挨拶
 平成14年度卒業の皆様、言語聴覚学科31名、義肢装具学科11名、手話通訳学科12名、視覚障害学科12名、リハ体育学科11名、合計77名の皆様、ご卒業おめでとうございます。長い間、勉強されるのを見守られたご家族の皆様、本当におめでとうございます。
 皆様は、2年前、あるいは3年前に本学院に大きな志を持って入学されました。その後、授業、実習とそれぞれの専門家となるべく勉強をされました。国家試験のある学科であればその結果を待たなければなりませんが、いづれにしてもこれからは、世の中に出てそれぞれ培った知識を実際に生かして活躍されることと思います。
 私は、1年目の学院長として、皆様を世間に送り出すこの時に立ち会うことが出来ることを大変光栄に存じます。私自身、この卒業式を経験することによって学院の1年間の行事全体を経験することになり大きな感慨と学院の仕事の大切さを実感しているところであります。
 皆様とは、授業や昨年春のスポーツ大会、病院実習、何人かの方はモーニングメイトとして病棟でお会いいたしましたが、教官の先生方のようには、詳しく接したわけではありません。一寸、個人的なことをお話いたします。先日、新入学生の入学試験、二次試験がありました。この経験は皆様のことを知る上で大変印象的でありました。当然、この受験生は皆様と別の人たちです。面接に立ち会って何より感じましたのは、この学生さんたちは大丈夫だという実感です。私にとっては面接試験を経て、初めて入学と卒業を通して、全体として皆さんのことが理解できたと感じています。
 さて、卒業式にあたり、昨年の入学式に新入生にお話したことと同じことを皆様にお贈りしたいと思います。
 私の臨床神経学の師は、臨床医学は、伝授と伝受のくり返しと言っておられます。たくさんの情報を先輩から後輩が受け取り(伝受)、後輩はこれに何かを加えてさらに次の後輩に引き渡す(伝授)ということです。皆様が当学院で身に付けるものもこの伝授と伝受によって受け継がれるものに他なりません。先日の面接でも何人もの受験生が、当学院の先輩の活躍に触発されて、自分もと希望されてきた方がおられました。多くの先輩がすでになさっていることです。これから皆様が社会に出て、学院で授かった知識・技術を大切にして、新しい自分の経験をこれに加えて世のために活躍なさること、これが学院の伝統であり、卒業の日に当たり私から卒業生の皆様にお願いとして、是非お伝えしたいことであります。本日は、本当におめでとうございます。
学院卒業式 学院長式辞の様子  平成15年3月10日
  国立身体障害者リハビリテーションセンター学院

学院長  長岡正範   

 次に、厚生労働大臣の祝辞を厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 佐藤国立施設管理室長が代読され、引き続き、当センター佐藤総長より次のとおり祝辞が述べられました。


学院卒業式 総長祝辞
 柔らかい土の上に若葉が伸び出し、春の気配が感じられる頃となり、本日、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院の卒業式を迎え、77名の方々をお送りする日となりました。皆さんは、これまでそれぞれの過程を修め、ここに卒業の時を迎えられました。おめでとうございます。
 また、本日は、厚生労働省障害保健福祉部企画課国立施設管理室の佐藤室長様を始め関係者のご臨席を賜っております。ご多忙の折にご臨席賜り大変有り難うございます。
 卒業される皆さんはこれまでそれぞれの領域についての基本的な事柄を習得されました。皆さんが得られた知識を、今後どのような職場において、どのように活用し、どのように育てて行かれるでしょうか。これからの皆さんの成長を期待しております。多くの方々は医療・福祉の場に行かれるでしょうが、研究職や行政職などのポジションで活躍される方など、それは一様ではないことと思います。いずれの場で活躍されるにしても、この所沢の地で学ばれたことを良く生かしていただくことを願いつつ、「分化」と「統合」について話そうと思います。
 さて、最近アニメーションが話題になっておりますが、大作を作るためには相当数の絵が必要であり、制作チームが役割を分担し、コンピューターを駆使して作成することが多いようです。
 ところで、先日のテレビで、アカデミー賞にノミネートされた短編アニメが話題になっておりました。その作者は、一人の感性が一貫して流されている作品を作りたいとのこだわりから、数年かけて一人で手書きで描き続けてその作品を完成させたとのことでした。その点が高く評価されたようです。
 医療や福祉の分野でも、今日では多くの専門領域に分化し、それぞれの専門性が深められ、それらを統合しながらサービスを提供しております。現在の医療においてはそのためのチームアプローチが重要であり、特にリハビリテーション関連の仕事では、個々の専門職種が役割を分担することになります。
 ところで、昔の医師は、聴診器、血圧計、注射器、沢山の注射アンプル等の入った往診鞄をもって往診しておりました。その頃は、往診鞄の中身が持ち合わせる医療道具のほとんどすべてでした。しかし、往診先では家族の状況や家庭環境等の情報を診察の合間に理解し、すべての事柄を一人の医師が把握することで医療が成立していたわけで、分化がなされず、先ほどのアニメ作家と同じ状況であったと言うことができます。
 現在は、先ほど述べたように、分化が進み、言語療法や義足製作等にはそれぞれの専門職が当たるようになっております。その場合には、ややもすると、それぞれのパートでは患者さんの総合的状況は把握しにくくなります。このチームアプローチの欠点を補うためには、専門性を深め、自分の領域の要点を他の専門職に良く理解していただき、他の領域の情報も良く理解できるようにして全体像を良く把握できることが必要です。そのための最も有効な事は、研究をする事であると思います。自分の担当するケースなり課題について仕事を進める際に、単に日常業務として済ませるのではなく、より高いレベルの対応あるいは新しい解決法を求めることは、皆さんの視点を広げ、問題解決の応用力を高めることになります。
 先人の言葉に、「良く生きる者は、喜んで難儀する者であり、良い希望のあるために労働が楽しい。それが家庭を良く治めるためであっても、友人のあるいはその職場の力となることについても」といった意味のものがあります。
 ここで難儀するとは、忙しい仕事をこなすことを含まないわけではないのですが、事柄の本質を吟味することをより重視しております。皆さんはこれまで、学院においていろいろの技術を教えていただいたことと思いますが、単に技術をお教えしたのではなく、医療や福祉の現場におけるそれぞれの専門領域の意味付けやその領域の本質についても教えていただいたことと思います。本学院を卒業される皆さんは、それぞれのサービスの提供を担当するだけではなく、その専門性の本質を追求することを意識し、研究を通して自ら難儀し、良く生きることに努めて下さい。そのことが、それぞれの専門性を深める「分化」と医療や福祉の全体像を把握する「統合」の両面に通ずることです。皆さんが、国立身体障害者リハビリテーションセンターの卒業生であることを誇りとされ、各領域の指導者として、パイオニアとして、大いに活躍されることをご期待し、祝辞といたします。
 平成15年3月10日
  国立身体障害者リハビリテーションセンター

総  長  佐藤徳太郎   

学院卒業式 厚生労働大臣の祝辞(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 佐藤国立施設管理室長代読)

 その後、来賓紹介、祝電披露のあと、義肢装具学科2年の三ツ木真理が、次のとおり卒業生を送ることばを述べました。


送ることば
 季節は弥生三月、吹く風も和らぎセンター内の花々もつぼみを膨らませ始め、一年で一番美しい季節を迎えようとしています。
 本日ここに各課程を修了し、晴れてご卒業の日を迎えられた皆さまに、在校生を代表して心よりお祝い申し上げます。学生生活を無事終えられた達成感と解放感、そしてこれから歩き出される社会への夢と希望を胸に今日のこの日を迎えられたことと思います。
 密度の濃いカリキュラムの中で各専門職に必要な知識や技能を学び、多くの実習を重ね、多忙な学院生活であったことと思います。様々な困難に直面し、時には焦りを、また不安を覚えたかもしれません。しかしその中で得た知識や技能、培われた精神力は皆様にとってかけがえのない財産となったことでしょう。またこの楽しくもあり苦しくもあった学生生活を今日のこの日まで続けてこられたのは、今横にいる仲間の存在も大きかったのではないでしょうか。この学院には個性的な学生が多いように感じます。また人生の選択枝が以前より増えたためでありましょうか、様々な経歴をもった方々が学院には集まっています。その個性的なキャラクター、様々な経歴を持った仲間と助け合い、時に衝突しながら絆を深めてこられたと思います。今後の皆様の人生においても刺激的でよきライバルとして心強い支えとなることでしょう。球技大会・体育大会といった行事は学科の枠、学年の枠をこえた交流のできる数少ない行事で、リハビリテーションに携わる他の職種についての知識も深めることができました。そこではリハビリテーションという同じ理念の下でさまざまな職種が互いに協力し合っていくことの大切さを教えていただきました。この学院で学んだことを通じて、感じたことや考えたことについてもっと意見を交換し合いたかったと思います。日々の学校生活における様々な場面での先輩方からの暖かい励ましやアドバイスにとても勇気付けられました。
 高齢化社会、バリアフリーといった言葉が口にされるようになって久しいですが、現在リハビリテーションの専門分野は多岐にわたりそれぞれの役割が重要視されています。皆様がリハビリテーションチームの一員として他の専門職の方と互いに協力し合い、障害を持つ人々とともに歩み、ともに生きてゆける社会の実現に向けこのリハビリテーションの領域をさらに拓いていくとともに広く活性化してくださるよう期待しています。そしていつか同じ道を進むものとして再び現場で出会えることを楽しみにしております。
 あと一ヶ月もしないうちに皆さんは医療福祉の現場にその活動の場を移します。そこでは障害を持つ方たちとプロとして向かい合うことになり、いろいろな思いを抱き、苦悩することもあるかもしれません。そのときにはこの学院で得たものを存分に活用し、またその経験を私たち後輩に教えていただけたらと思います。それぞれの職場でご活躍される姿を目標に、私たちも夢に向かい頑張っていきます。
 今後の皆様の御活躍と御多幸をお祈り申し上げ、送る言葉と致します。
 平成15年3月10日
  在校生代表  義肢装具学科 2年

三ツ木 真理   


 引き続き、手話通訳学科2年山本陽子(音声)・吉井美樹(手話)が、卒業生のお別れのことばを述べました。


別れの言葉
 春を迎え、桜のつぼみもふくらみ始めた本日、私たち、77名は新たなる決意を胸に学院を卒業します。
 晴れてこの日を迎えることができましたのも、佐藤総長をはじめ、長岡学院長、各学科の諸先生方、外来の講師の先生方、当センターの職員の方々、ならびに私たちが出会った数多くの方々の温かいご指導、ご支援のおかげです。卒業生一同、厚く御礼申し上げます。
 卒業を迎えるにあたり、温かいご祝辞をいただき、またお忙しい中多くのご来賓の先生方に、ご列席賜りましたことを深く感謝申し上げます。
 学院生活をふりかえってみますと、全国各地から不思議な縁で結ばれた私たちが、この学院に入学したことが昨日のことのように思い出されます。専門の知識もほとんどない私たちは、各学科の充実したカリキュラムの中で、日々、さまざまな知識に触れ、理論や技術を学び、多くの実習を重ね、学院でしかできない貴重な経験ができました。課題やレポートに追われることもありましたが、ひとつひとつ乗りこえてこられたのも、多くの仲間が支えてくれたからです。人と人との関わりあいの大切さを、身をもって実感しながら、学院生活を送ることができ大変嬉しく思います。
 在校生の皆さん、私たちは卒業というかたちになり、お別れになります。このことは、寂しい限りですが、お互い同じ道を志すものとしてともにがんばっていきましょう。
 明日から私たちはいよいよそれぞれの新しい第一歩を踏み出すことになります。これから始まる生活に不安と期待でいっぱいですが、これからが本当のスタートだと思っています。各学科を終了したとはいえ、経験も少なくまだまだ未熟です。今後とも諸先生方や多くの皆様の更なるご指導、ご支援を賜りたいと思います。
 最後になりましたが、学院のますますの発展と、先生方のご活躍を祈念して別れの言葉とさせていただきます。
 平成15年3月10日
  卒業生代表     手話通訳学科

山本陽子   
吉井美樹   


 最後に、蛍の光の斉唱をした後、卒業生を出席者全員の拍手によりお送りし、卒業式を終了しました。

学院卒業式 蛍の光斉唱