〔学院情報〕
平成15年度 義肢装具士研修会を終えて
学院事務室
執筆:学院 義肢装具学科 教官 有薗 裕樹



 去る8月4日(月)〜7日(木)の4日間、義肢装具士養成棟 において義肢装具士研修会が開催されましたので報告致します。 この研修会は過去に義足の生体力学・試験評価、各疾患と装具、 歩行分析といった義肢装具の製作技術獲得のみならず、義肢装具 に関連したその時代のニーズに即した内容で実施されております。
 今回は座位保持装置がテーマとなり研修会が行われました。 本装置は身体障害者福祉法(児童福祉法)に定められる交付基準 に含まれ、平成13年度には処方の実情に即し交付基準の大幅な 改革が行われ、機能障害の状況により座位に類似した姿勢 (いわゆる立位姿勢、膝立ち姿勢及び臥位姿勢等)を保持する 機能を有した装置についても座位保持装置として取り扱うことが でき、そのニーズも高まっています。
 受講者は12名で、民間の義肢装具製作施設の職員以外にリハ ビリセンター・義肢装具士養成校に勤務する職員など多岐に渡り、 座位保持装置に対する関心の高さが覗えました。
 本研修会は講義と実技で構成され、講義では座位保持装置の 意義・目的、処方のプロセス、適合判定、代表的な座位保持装置 といった総論に加え、患者の身体状況・座位能力の評価、疾患別 の留意点・チェックポイント、座位保持に使用される材料及び その特性に至るまで実際に座位保持装置を製作していく上で重要 となる講義が行われました。
 実技では、安定した座位姿勢を獲得する為の土台となる支持部 (体と座位保持装置のインターフェース)の採型シュミレーション、 製作を行いました。また、講師の先生からは今回実習した採型・ 製作法以外に、CADを使用した採型法や短時間で支持部製作可能な 発泡成形法など製作工程を簡略化するための手法も紹介して 頂きました。
 今回の研修会では上記の内容に留まりましたが、実際に臨床 の場で座位保持装置を製作していく上で重要なことは、義肢装具 も同様ですが、使用者本人への適合は当然のことながら、特に 周りの介護者を含めて満足して頂かなければならないということ が講師の方々の共通認識であり、受講者は座位保持装置の奥深さ を痛感した4日間であったと思います。
 最後になりましたが、本研修会にご協力頂きました講師の 皆様方に改めてお礼申し上げます。

義肢装具士研修会講義の様子 義肢装具士研修会実技の様子



(別表)
平成15年度 義肢装具士研修会日程表

日付 午前 午後
8月
4日
(月)
開講式・オリエンテーション
(10:00-10:30)
講義  座位保持装置総論
(10:30-12:15)
 -座位保持装置の種類と適応-
 横浜市障害者更生相談所所長 小池純子
講義・実技 患者と座位の評価
(13:00-14:00)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
吉田 由美子
タカハシ補装具サービス 高橋功次
講義 座位保持装置の機器選択と製作手順
(14:15-15:15)
タカハシ補装具サービス 高橋功次
シーティングの材料学
(15:30-17:00)
うめだ・あけぼの学園 石濱裕規
5日
(火)
講義・実技 シュミレーションによる採型法
採型実習
(9:00-12:00)
ヤスダ・ブレース 安田富男
国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
星野 元訓
講義・実技 陽性モデル製作法
製作実習
(13:00-18:00)
ヤスダ・ブレース 安田富男
国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
星野 元訓
6日
(水)
講義・実技 座面製作方法
製作実習
(9:00-12:00)
ヤスダ・ブレース 安田富男
国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
星野 元訓
講義・実技 座位保持装置の適合学
(13:00-16:00)
ヤスダ・ブレース 安田富男
国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
星野 元訓
講義・実技 間接発泡成型による製作法
(16:15-18:00)
ヤスダ・ブレース 安田富男
国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
星野 元訓
7日
(木)
講義・実技 採寸モールドによる製作
(9:00-11:00)
タカハシ補装具サービス 高橋 功次
 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
有薗 裕樹
講義 車椅子への応用例
(11:15-12:15)
-移動システムとしての座位保持装置-
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所
井上 剛伸
講義 シーティングの症例検討
(13:15-14:15)
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所
三田 友記
閉講式
(14:15)