〔学院情報〕 |
手話通訳学科紹介 |
学院 |
<概要>
手話通訳学科は、平成2年、その前年の厚生大臣(当時)公認
手話通訳士試験のスタートを受けて、わが国唯一の手話通訳養成
機関として発足しました。当初は、手話通訳専門職員養成課程
という名称で、1年課程(定員10名)でしたが、平成11年に名称
を変更、平成13年に2年課程(定員15名)になり、今年度から
定員30名となりました。
<手話通訳とは>
手話通訳とは、手話を母語とするろう者や手話を中心的な
コミュニケーション手段とする中途失聴者・難聴者と、手話を
知らない人々との間に立って、コミュニケーションの仲介を
行うことです。コミュニケーションの仲介は、単なる言語の
置き換えではなく、意味や意図を伝達することであり、コミュニ
ケーションが対等に行われるために必要な当事者双方への情報提
供も含まれます。そのため、通訳者には、言語の知識・技術に
加えて、通訳対象者や通訳場面の多様性に対応するための豊富な
知識・技術が必要とされます。従来、手話通訳者の養成は、主と
して地域の手話講習会や手話サークルにおいて行われてきました
が、それらはボランティア活動を基盤としていました。手話通訳
に対するニーズの多様化、高度化に対応するためにも、高度な
技術と知識をもつ専門職としての手話通訳者を養成することは、
きわめて重要です。
<教育の内容>
カリキュラムは、言語学、心理学、社会学に加えて、福祉・
法学・医学などの知識や、表現に関する科目を含む基礎科目と、
聴覚障害者に関する知識や通訳理論、手話実技と通訳実技を含む
専門科目からなります。見学・実習、卒業研究を加えて、総時間
数は、2年間で2400時間です。
手話実技や通訳実技では、教育効果を高めるために、授業に
よって一学年30人のクラスを2つから3つのクラスに分けて
少人数指導を実現するとともに、手話の母語話者であるろう者
による指導を重視しています。手話実技には、会話能力を高める
コミュニケーション中心の実技、理解能力を高めるビデオ学習、
表現能力を高める文法トレーニング、さまざまな話し手をお招き
するゲストスピーカーなどの科目があります。通訳実技には、
基礎トレーニング、手話から日本語への翻訳・同時通訳、日本語
から手話への翻訳・同時通訳、場面別通訳、模擬通訳などがあり
ます。
見学・実習では、施設見学のほか、全国ろうあ老人大会、全国
ろうあ婦人集会などに要員として参加する交流実習、手話通訳派
遣機関などでの施設実習を行います。そのほか、更生訓練所の
協力を得て、聴覚障害入所者の野外訓練に参加したり、修了式の
手話通訳を実習として担当させていただいたりしています。
卒業研究は、手話で調査し、手話で発表するというもので、
手話の能力を高めるプロジェクト・ワークの一環として位置
づけています。
<卒業後の状況>
手話通訳士試験は難関で、過去14回の全国平均で合格率は12%
程度、ここ数年は10%を切っており、当学科の卒業生も152名の
うち、合格者は43名(28.3%)です。
就職希望者の8割は、手話通訳関連職種に就職しており、
全国の聴覚障害者情報提供施設、地方自治体、社会福祉協議会、
ろうあ者団体、ろう学校、ろう重複施設、関連企業などで活躍
しています。しかしながら、就業形態については、嘱託など
不安定な身分である場合が多く、引き続き手話通訳の専門性を
高め、社会的地位の向上を図る必要があります。