〔国際協力情報〕
平成15年度 JICA補装具製作技術コース研修を終えて
研究所補装具製作部 主任義肢装具士 岡本 晋



 8月18日から開催されていたJICA補装具製作技術コース研修も 12月5日を持って無事終了することが出来ました。御協力いただ いた関係者の皆様にはこの場を借りてお礼申し上げます。研修生 の詳しいプロフィールはすでに国リハニュースで紹介されていま すがセネガル1名(男)、セイシェル1名(男)、 エル・サルバドル1名(男)、ペールー1名(女)と言う4名で 研修が行われました。研修の最初の二週間は解剖学、運動学、 材料学などの義肢装具学に基本となる講義が行われました。 あとから研修生に聞いたところこれが一番きつかったと答えて いました。製作実習は義手、装具、下腿義足、大腿義足の4つの パートから構成されています。これらを延べ日数86日で行うのは 容易ではありません。もちろんこの中には休日や研修旅行も含ま れています。今年は新たな試みとして当センターで伝統的に行わ れている手法のほかに海外でも比較的容易に入手可能な半完成品 の導入を試みました。このことによって時間的な余裕が少し取れ たので過去に希望の強かった電動義手や通常体験することの出来 ない症例のモデルさんに来ていただきより多様な経験をしてもら いました。研修生の日常生活ですがまったく問題はなかったと語 っていました自ら買い物に行き自炊していたので健康状態もおお むね良好なようでした。しいて言えばベッドが少し小さいかなと 笑いながら話してくれました。研修旅行は都内が1日、名古屋、 大阪、京都と回る旅行が4日間ありました。また、仙台で行われ た日本義肢装具学会にも参加しました。このときは研修生に飲み に連れて行ってくれと頼まれ私と男の研修生は夜の飲み屋街へと 消えていきました。そこで何があったかは秘密ですがいい思い出 です。
JICA補装具製作技術コース修了式  評価会では日本はすばらしい国で今後も他の国のために尽くし てほしいと言われました。実習内容に関して問題はないがもっと 新しい材料や部品を使った制作方法。今一番新しい理論を取り 入れた義肢装具などの紹介を望む声、モデルだけではなく実際の 患者さんの診察から治療方針、装具の決定、製作と言った一連の 流れを見てみたいなどの声がありました。
 夕方から始まった送別パーティーにはJICA、センター関係者、 ボランティア団体、所沢インターナショナルファミリー、そして 一番お世話になった各実習のモデルさんの参加を得て、歓談に、 記念品贈呈にと大いに盛り上がりました。最後は研修生と参加者 が一緒に踊まで行い滞在中の各関係者との交流の深さを垣間見る ことは出来ました。
送別パーティで芸を披露する研修員 送別パーティの様子
 JICAの当研修が始まって23年がたちました。開始当初は発展 途上国に対して義肢装具の製作技術を移転することが大きな 目的であったように覚えています。近年の研修生を見てみると すでに他国で研修を行ったことがあるものがいたり、部品材料も 自国で生産できたり輸入できたりする国が増えてきたように 思えます。これは時代の流れもあるでしょうし、研修対象国が 東南アジアから南米、アフリカ等へ変化してきたせいもあるかも しれません。今後この研修を続けるとした場合どんな材料、部品 を用いてどのような制作方法を指導していくのが一番良いのか もう一度考える時期に来ているのかもしれないと考えさせられ る今回の研修でした。

義肢装具製作の様子 その1 義肢装具製作の様子 その2 義肢装具製作の様子 その3 義肢装具製作の様子 その4 義肢装具製作の様子 その5 義肢装具製作の様子 その6