〔研究所情報〕
“第4回日米先端工学シンポジウム”参加報告
研究所福祉機器開発部
福祉機器開発室長  井上 剛伸


 11月3日(水)〜6日(土)“第4回日米先端工学シンポジウム Fourth Japan-America Frontiers of Engineering Symposium(JAFOE2004)が京阪奈プラザ(京都)にて開催されました。 日米先端工学シンポジウムは、米国工学アカデミー、日本工学アカデミーが主催するシンポジウムで、 年1回、日本とアメリカを交互に会場として開催されています。完全にクローズドな会議で、 毎回テーマを設定しそれに関係する若手先端工学研究者が日米それぞれ30名程度参加し、 缶詰状態で朝から晩までディスカッションするという、とてもハードなものです。 日本側のメリットとしては、アメリカの先端的な工学研究を学ぶこととに加えて、 国際感覚をもつ研究者の育成という点もあげられるようです。アメリカ側のメリットは、 日本の先端的な工学研究動向を把握し、その技術をいち早く取り入れるという意図が あるようです。日本とのシンポジウム以外に、ドイツとも同様のシンポジウムを開いています。
 今回のテーマは下記の4つで各セッションに4名ずつ(日本から2名、アメリカから2名)の 発表があり、それについてディスカッションを行いました。



「第4回日米先端工学シンポジウム」の様子 その1


1.Biomedical Instrumentation and Devices (生体計測機器)
 生体内の分子の動きをとらえるナノの世界の発表が2件、MRIと超音波エコーを利用した 生体組織の計測に関する発表が1件ずつ。DNAの上をタンパク質分子が歩く!

2.IT for the Elderly(高齢者を対象としたIT技術)
 日本からリハビリテーションロボットに関する発表が2件(癒しロボットPARO, 歩行訓練ロボット)、 アメリカからユビキタス・コンピューティングを利用した高齢者支援技術に関する発表が2件。 インテルでこんな研究をしていることに、少しびっくりです。

3.Optical Communication(光通信)
 次世代光通信ネットワークの構築に関する研究が4件。日本からは、NTTとNECから1件ずつ。

4.Hydrogen Energy(水素エネルギー)
 燃料電池の技術開発及び経済性・社会性を含めた普及に関する研究が4件。 日産自動車の発表は燃料電池を搭載した自動車開発について。


 私は何のために呼ばれたかというと、“2.高齢者を対象としたIT技術”のセッションの質問者。 せっかくなので、その他のセッションでも、いろいろ質問してみました。光通信の研究者に “開発するときにユーザーの顔をイメージするか?”とか、分子生物学の研究者に“分子の歩行と 人の歩行の関連性は?”とか。質問だけでは無く、参加者はポスター発表の機会をいただきましたので、 “オーファン・テクノロジーの開発”についての発表も行いました。全く興味ないという人と、 すごく大事なテーマだという人と、極端な反応だったように思います。



「第4回日米先端工学シンポジウム」の様子 その2


 京都観光が半日あり、清水寺と高台寺、そして高級(たぶん)料亭での懇親会で、 日本の文化に親しんで頂こうという企画。ただし、懇親会ではアメリカ人に配慮して、 畳に椅子席というちょっと妙な会場でした。アメリカ人も日本文化について詳しい人が 増えているようで、皆さんお箸を使いますし、和室で椅子はー?という人もいました。



「第4回日米先端工学シンポジウム」の様子 その3


 丸3日間缶詰状態で、朝から晩まで話さないといけないというのは結構大変で、 とにかく頭が疲れました。とは言っても夜は飲みながらなのですが。 とにかく、全く知らない分野の人や、関連分野でも違ったアプローチをしている人と 交流がもてたことは、大きな刺激となりました。“工学とは?”、という疑問を さらに深くしたようにも思いますし、リハビリテーションの中での工学と、 工学の中での福祉機器というテーマを、もう少し深く考えていく必要性を感じました。