〔学院情報〕
平成16年度学院卒業式
学院事務室



 去る3月8日(火)の10時から、当センター学院講堂において、厚生労働省社会・援護 局障害保健福祉部企画課 金井博国立施設管理室長を始め、多数のご来賓や当センターの 幹部職員のご参列をいただいて、平成16年度学院卒業式を開催しました。
 この式典では、開会の冒頭、当センターの佐藤総長より卒業生一人一人に卒業証書の授 与があった後、牛山学院長が式辞を述べました。(別記1)
 次に、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 金井博国立施設管理室長が厚生労 働大臣の祝辞を代読されました。(別記2) その後、当センター佐藤総長が祝辞を述べられました。(別記3)
 引き続き、来賓紹介及び祝電披露が行われた後、リハビリテーション体育学科1年の横 田篤志君が、卒業生を送ることばを述べました。(別記4)
 これを受けて、義肢装具学科3年の徳井亜加根さんが、卒業生の別れのことばを述べました。 (別記5)
 最後に、蛍の光の斉唱をした後、卒業生を出席者全員の拍手によりお送りし、卒業式を 終了しました。
 あでやかな袴姿の卒業生も散見されるなど、おごそかな中にも華や かさが印象に残る卒業式でした。卒業生皆様方のご活躍を祈ります。



平成16年度 学院卒業式 卒業証書授与の様子(1)



(別記1)
学 院 長 式 辞
 


 寒い日が三日続いたあと暖かい日が四日続きこれを交互に繰り返す。これを三寒四温と 言い春のきざしを表します。今年は2月の末に、また3月の初めに雪が降り朝夕はまだ寒 さが厳しいですが穏やかな今日の日を迎えました。
 卒業生の皆さん、本日は卒業おめでとうございます。春には別れと出会いがあります。 先日、ある若い人に出会いました。Aさんと呼んでおきます。Aさんは健常者でしたが普通 小学校1年生の時にクラスメイトとして聴覚障害(聾)の男の子に出会いました。その男 の子は口話ができない方で、Aさんは筆談でコミュニケーションをとっていました。筆談 ですから限界があり充分なコミュニケーションがとれなかったようです。そのときのうま くコミュニケーションが取れなかったという残念な想いが契機となり、その後いろいろな 経過があったでしょうが、手話を学びたいということになりました。私はその話をうかが って、そういう出会いの重要さを感じるとともに、障害を持ったお子さんが普通校に入れ るようになった初期の頃を思い出しました。それは昭和54年、各都道府県に養護学校設置 が義務づけられたことに始まります。障害児の「全員就学」が実現した年です。そのころ いろいろな混乱が起こりました。私も二分脊椎のお子さんの入学に際し、その子のお母さ んから「小学校入学に問題ない」という意見書を頼まれて書いたことがあります。たぶん、 学校側から障害児の初めての入学に対し問題提起があったのでしょう。また車いすを使用 しているクラスでは1年生の時、1階の教室を使用していたのですが、移動が困難なため 高学年になってもクラス全員がそのまま同じ教室を使用しているという話を聞いたことも ありました。話は古くなりますが明治5年の国民皆学に始まり明治33年の小学校令により、 障害児は「入学を先に延ばす或いは入学しなくてよい」という1項が定められました。明 治時代から聾学校、盲学校はありましたが数は少なく、それらの義務教育は昭和23年から でした。養護学校は大正時代の末に初めて柏学園が設立されましたが戦後その数が増える まで長い年月を要しました。障害児の入学猶予は学校へいかなくてもよいということにな り、裏を返すと教育を受ける権利が奪われる結果となっていました。昭和54年以降は特殊 学校へはもちろん、普通校へも行けるようになり、教育のバリアフリー、ノーマライゼイ ションが一歩進みました。障害児の全員就学が実現した昭和54年はくしくも当センター設 立の年でもありました。それから25年経ち、大学でも一部で手話通訳が付くようになり、 障害者に対し刻々と世の中は前進していると感じます。
 本日卒業の皆さんは色々な想いを持って学院に入学してきたことと思います。その初心 を忘れることなく、さらにこの学院で学んだ多くのことを加え、新たな目標を組み立てこ れから障害者のために患者さんのために、それぞれの分野で力を発揮してください。最後 に健康にくれぐれも留意し、末永く御活躍されることを希望し私の式辞といたします。



 平成17年3月8日
  国立身体障害者リハビリテーションセンター
学院長 牛山 武久



牛山 学院長式辞



(別記2)
厚 生 労 働 大 臣 祝 辞
 


 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院の卒業式に当たり、一言お祝いを申し 上げます。
 本日卒業される皆様、誠におめでとうございます。
 皆様方は、当学院に入学されて以来、たゆみない努力を積み重ねてこられました。これ までの皆様方の日々の努力に対し、深く敬意を表しますとともに、新たな出発に当たり、 心からお祝いを申し上げます。
 これから、皆様方は、障害者のリハビリテーションを始め、保健・福祉・医療分野の専 門職として、全国各地において活躍されることになります。
 皆様方には、常に、当学院の卒業生としての誇りと自信を持ち、これまでに培ってこら れた知識と技能を十分に発揮されるとともに、当学院を卒業され全国各地で活躍されてい る多くの諸先輩方に続き、地域社会で信頼される専門技術者として、今後とも、一層の研 鑽を重ねられ、障害者の福祉の推進に御尽力いただくことを期待しております。
 厚生労働省におきましては、障害のある方々がその有する能力及び適性に応じ、自立し た日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害者の地域生活と就労を進め、自立 を支援する観点から、これまで障害種別ごとに異なる法律に基づいて提供されてきた福祉 サービス等について、共通の制度の下で一元的に提供する仕組みを創設することとし、自 立支援給付の対象者、内容、手続、地域生活支援事業、費用の負担等を定める「障害者自 立支援法案」などを先月、今国会に提出したところであります。
 今後とも、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすこ とのできる地域社会の実現を目指して、障害保健福祉施策の更なる充実を図ってまいりま す。
 終わりに、本日御出席の御来賓の方々を始め、関係者の皆様には、日頃より、当学院の 運営について、温かい御理解と御協力をいただいていることに対しまして、厚く御礼申し 上げますとともに、今後とも一層の御支援を賜りますようお願い申し上げまして、お祝い の言葉といたします。



 平成17年3月8日
厚生労働大臣 尾辻 秀久



尾辻厚生労働大臣祝辞



(別記3)
総 長 祝 辞
 


 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。学院の関係者の皆さんもご苦労の甲斐 あって、本日の卒業式を迎えることが出来ました。おめでとうございます。また、講義や 実習において、センター内外の多くの方々にご援助をいただいたことにお礼申し上げます。
 当学院の各養成コースは、いずれも全国に先駆けて開設されたものです。これまでに、 パイオニアとしてそれぞれの分野を開拓してこられた当学院の歩みを誇りに思っております。
 各専門領域におけるサービスの有効性と必要性の実証、あるいは教育法の確立と充実に 努める中で培われた本学院の伝統は、実際の臨床や指導場面を通しての理論と技術の伝承に あり、これまでに卒業された多くの先輩は、実力ある専門職として各分野をリードして活躍 されております。皆さんは、いよいよその先輩方と同じ分野に入り活躍して行かれるわけで すが、本学院出身としての皆さんへの期待も大きいものと思います。また、皆さんの今後の 活躍が本学院の新たなエネルギーとなって行くものでもあります。どうぞ、先輩方と共に、 それぞれの分野をリードし、発展させる中核となって下さい。
 皆さんは、これまでに学ばれたことを実践に移すことに大きな希望を持たれていることと 思います。これまで学ばれた基礎的事柄を実践の場でじっくりと確認し、サービスを展開す る中で自分が目指したい方向性がはっきりしてくるものと思いますし、新鮮な時期にこそ、 ご自分が重視すべき課題を見つけられることを期待しております。
 ところで、これまで皆さんが受けた教育は、現在の制度の中で、現在一般的に用いられて いる材料や方法を用いるものであり、また現在の価値観に基づくものです。
 しかし、これらは、制度、道具立てあるいは価値観もでも逆戻りすることなく、いずれ大 きく変化して行くでしょう。特にIT技術の進歩は大きな変化をもたらすものと思われます。 これから、どの様な波が来てどの様な方向の流れになるか分かりませんが、初期に描く課題 や夢は皆さんの原点が何であるかを示すものとして極めて重要です。
 皆さんの真価が問われるのは、適応力であり、変化することを恐れる必要はありませんが、 ご自分が初期に描かれる課題や夢を大切にしながら、時代の要請に応えうる専門職として大 成されることを祈念いたし、祝辞といたします。


 平成17年3月8日
  国立身体障害者リハビリテーションセンター
総長 佐藤 徳太郎



佐藤総長祝辞



(別記4)
送 る こ と ば
 


 冬の寒さも和らぎ始め、学院前の桜も花開こうとしています。
 本日ここに各学科を修了し、晴れてご卒業の日を迎えられた皆様に、在校生を代表して 心よりお祝い申し上げます。今、この学院生活の最後を締めくくる卒業式を迎えるに至り、 充実した学院生活であったと改めて実感されていることと思います。
 今日ここに居られる言語聴覚、義肢装具、視覚障害、手話通訳、リハビリテーション体育、 各学科総勢90名の皆様方はこの学院生活で三つの大きなものを手に入れられたと思います。 一つは諸先生方の熱心な御指導のもと、社会的使命を持つそれぞれの専門分野において多く の技術や知識を習得されたこと、二つめに授業や実習など多忙な時においても、妥協を許さ ずにお互いを刺激し合い、時には大きな支えになったかけがえのない友を得たこと、最後の 三つめに自分の専門分野における揺るぎない確固たる思いや決意を学院生活の中で得られた ことでしよう。これらは将来皆様が、何か大きな璧にぶつかった時にその壁を乗り越えてい く大きな糧となることと思います。
 昨年開催されたアテネパラリンピックでは多くの選手が活躍し、メディアによって大会の 競技結果や試合のダイジェストが連日放映されるなど、多くの選手が光り輝く大舞台で活躍 を見せてくれました。そのことが、多くの障害をもたれている方がさまざまな事にチャレン ジしてみようと思う勇気を与える、きっかけになったのではないかと思います。そして、そ の光り輝く舞台に立てるようになった一つの要因として、リハビリテーション分野において 各専門分野が密に連携を取り、十分なアプローチを行えた結果であると思います。このよう に、現在リハビリテーションの専門分野は多岐に渡り、それぞれの役割が重要視されていま す。しかし、その一方で障害をもたれている方を取り巻く問題は各分野で、いまだ数多く存 在していると思います。ですから、この学院を卒業される皆様にはこの学院で得た熱き思い を胸にそれらの問題を解決していく先駆者として実力を発揮され、後に続く者の手本となっ ていただければと心から願っております。その姿を励みに、私達も残りの学院生活で先輩方 の後に続けるよう、一層の努力を惜しまず日々精進していきたいと思います。近い将来、同 じ志を持つ同士として、またお目にかかれる機会を楽しみにしております。
 皆々様の一層のご活躍とご多幸を心からお祈り申し上げ、送る言葉とさせていただきます。


 平成17年3月8日
在校生代表 リハビリテーション体育学科1年 横田 篤志



在校生代表 横田さんによる 送る言葉



(別記5)
別 れ の こ と ば
 


 冬の厳しい寒さも和らぎ、春の光がうららかな季節となりました。本日は佐藤総長をは じめ、牛山学院長、諸先生方、ご来賓の皆様にご臨席を賜わり、このような盛大な卒業式 を挙行していただき、誠にありがとうございます.
 また、皆様からの励ましと心のこもったお言葉は、医療人として新たな一歩を踏み出す 私たちにとって大きな励みになると同時に、それぞれの職業の社会的使命の大きさを改め て感じ、身の引き締まる思いでいっぱいです。
 学院生活を振り返りますと、先生方との出会い、ここにいる仲間との出会いは大変貴重 な経験となりました。先生方には時には優しく励まされ、時には静かに見守られ、しかし 時には厳しいお言葉やご指導をいただくこともありました。人知れず枕を濡らした夜もあ りましたが、そんな時支えてくれたのは仲間でした。やまない雨はないように、とまらな い涙もありませんでした。そして涙の分だけ強くなりました。いつしか涙は乾き笑顔の自 分を取り戻し、少し大人になった私たちは今日という日を迎えることができました。私た ちはまだ自分がどれ程のものかもわかっていない若輩者ですが、先生方、仲間との出会い を支えに、希望という光を目指してひたすらに走っていきます。
 在校生の皆さん、残りの一年間若しくは二年間で、どんなに頑張ってもうまく結果が出 せないことがあるかもしれません。右に進むか、左に進むか迷うことがあるかもしれませ ん。しかし私たちの周りにはここにいる先生や仲間、故郷にいる家族や友人がいることを 忘れず、そのような時には一人で悩むことなく進んでいってください。
 これから私たちは、学院での日々を想い、先生方の言葉を胸に刻み、それぞれの道を歩 んでいきます。先生方はじめ、関係者の皆様には、未熟者の私たちの行方を温かく見守っ ていただきたく、お願い申し上げます。
 最後になりましたが、学院の益々のご発展と、本日ご臨席賜りました皆様のご健勝、在 校生の皆様のより一層のご健闘を心よりお祈り申し上げ、お別れの挨拶とさせていただき ます。

 平成17年3月8日
卒業生代表 義肢装具学科3年 徳井 亜加根



卒業生代表 徳井さんによる 別れのことば