〔魚拓シリーズ1〕
カラー魚拓の基礎知識
元理療教育指導室長 川政 勲


1 直接法と間接法
  一般的に魚拓というと、魚の表面に墨を塗り、和紙をその上に 置き、その形を摺り写したものと思い込んでいる人が大多数でしょ う。
  これは直接法という魚拓の取り方であります。魚拓の取り方に はもう一つ「間接法」という方法があります。
  10円玉の上に紙を乗せ、鉛筆や色鉛筆でこすれば数字や文字が 浮いて出ます。原理的には同じです。
  直接法での魚拓は、鰈が平目になり、平目が鰈になるという欠 点がありますが、間接法は鰈は鰈、平目は平目にと正確に取れます。
  魚体の造形の見事さ、美しさを表現した魚拓、更には魚の自然 の色もそのまま表現しようと誕生したのがカラー魚拓です。

2 魚拓の絵の具
  魚拓に使用する絵の具には、水性と油性があります。私は油性 のカラー魚拓用の絵の具を使用しています。市販の油絵の具は伸び が良くないため、一々絵の具をつけなければなりませんが、この絵 の具は一度付けると一匹の魚を打つことが可能なほど伸びます。

3 魚拓の材料と道具
 (1) 魚は自分で釣ったもの、人から貰ったもの、魚屋で買ったもの を使いますが、新鮮なもの、鱗の剥がれていないもの、傷の付いてい ないものほどきれいな魚拓が取れます。
 (2) 魚拓は普通紙や布に取りますが、私は中国製の羅紋宣(らもんせん)という画 仙紙(がせんし)を使っています。
   紙が厚いと破れにくいけど色が乗り難い。薄いときれいに色が 出るが破れ易いという特徴があり、適当な厚さの紙を選ぶのに苦労し ました。
 (3) 魚拓を取る場合は殆どタンポ(てるてる坊主のようなもの)を 使います。ただし、目だけは筆を使い書きます。
   絵画での筆の役割をするタンポは非常に重要な役割を持ちます ので上手に作らないと作品の良否にかかわります。
   布は紅絹(もみ)を、綿は丹前綿(たんざわわた)を用います。どちらも絵の具の吸収が 良く、伸びや乗りが良いのですが、最近は紅絹を見つけるのが困難で、 ベンベルグ(コットンから生まれた再生セルロース繊維)で代用して います。



色鮮やかなイシダイの魚拓
イシダイ

カラーだからこそできる遊びです。墨の魚拓ではこのようなことはできません。なお、魚に絵の具を塗ってカラー魚拓を作る方法もありますが、これほどきれいに肌理の細かい作品にはなりにくいです。



楽譜の音符に様に並ぶ色鮮やかなタツノオトシゴの魚拓
タツノオトシゴ