〔更生訓練所情報〕
平成17年度理療教育課程卒後
特別研修会を終えて
理療教育部教官 飯塚 尚人




 今年も7月25日から29日まで理療教育課程の卒業生を対象に、卒後特別研修会 を開催しました。この研修会は、臨床技術の向上とともに時代に即した施術所経 営技法を修得させ、地域のリーダーとなりうるあはき師の養成を目的としていま す。そこで、臨床実習を中心に密度の高い指導を行うために、実習については定 員を20名に限定しています。参加対象も過去5年に実施された卒後研修会に参加 した231名に限定し、今年は45名が参加しました。
 今回は心身の歪みに対するアプローチというテーマのもと、各分野で実際に臨 床及び臨床教育に携わっている経験豊富な講師の先生を招いて、明日からの臨床 に役立つ研修を企画しました。
 初日の基調講演は、「うつ病を知る」というテーマで、防衛医科大学校精神科 学講座教授の野村総一郎氏が、疫学、概念、病態、症状、現在の治療法、対応上 の注意、予後について、豊富な臨床経験に基づいた具体的で、わかりやすい講演 をしていただきました。講演後の質問が例年に増して多く、参加者の関心の高さ がうかがわれました。講演終了後、先生には懇親会にも出席していただきました。
 二日目は、台風7号が接近し、朝から暴風雨の中、長野式鍼治療の臨床実習が 行われました。あいにくの天候で3名の方が参加できませんでしたが、15名の卒 業生が、ずぶ濡れになりながらも暴風雨に負けず続々と会場に現れました。講師 の村上裕彦氏は、視覚障害者を含めた研究会を主催しているだけに、丁寧な説明 を加えながら2名の助手の先生と共に、一人一人に手から手への指導をしていた だきました。埼玉県に大雨洪水警報が出たため、不本意ながら予定の時刻前に終 了しましたが、来た甲斐があったという卒業生の声が聞けたのは何よりでした。
 三日目は前日の嵐がうそのような台風一過の中で、腹診を中心とした経絡指圧 の実習が行われました。指導にあたられた藤崎信行氏、正美氏は、数年来、臨床 研修講座でお世話になっているだけに、指導も行き届き、お二人で息の合った指 導が行われました。
 四日目は、今回最も応募者が多かった「キネシオテーピング」(注1)でした。 講師の秋元恵実氏は、鍼灸の循環器系に及ぼす影響をテーマに学位取得され、教鞭 をとる傍ら治療院を経営されています。思いっきりテレビにも出演され、だれに でも理解しやすい説明と指導で定評があり、今回の研修でも十分に期待に応えて いただきました。外反母趾を始め15疾患に及ぶ疾患に対するキネシオテーピング の実際を、注意事項やコツを交えてご指導いただきました。
 最終日は、フェイシャルマッサージ(注2)の実際を、理教部講師の奥山夕記 子氏に担当していただきました。この研修も希望者が多く、美容やエステに関す る卒業生のニーズの強さを知りました。奥山先生は日頃から視覚障害者に接して いるだけに、配慮の行き届いた効率的な指導をしていただきました。タオルの使 い方から一つ一つの手技に至るまで、全員が習得できるように、額に汗しながら 卒業生の間を駆け回る姿が印象的でした。
 今回は、足のけがのため車椅子で参加された卒業生がでたり、台風の影響を受 けたり、予想外の事態が起こりましたが、皆様のおかげで何とか無事に終えるこ とができました。この何年か研修会を担当しておりますが、世の中の期待と卒業 生を含む視覚障害あはき師の意識に隔たりが生じているのではという気がしてい ます。地域社会との接点を広げるだけでなく、世の中の人は、あはき師に何を求 めているのか、それにどのように応えなければならないのかという意識を高めな ければならないと痛感しています。
 最後に、研修会に尽力していただいた関係職員の皆様に紙面を借りて御礼申し上 げます。

(注1:キネシオテーピング)
→縦方向に伸縮性に富むキネシオテープを皮膚に貼ることにより、痛みや筋のこりなど種々の症状を軽減させる治療法
(注2:フェイシャルマッサージ)
→美容を目的に、顔面部を中心に行うマッサージ