〔更生訓練所情報〕
平成17年度国立身体障害者
更生援護施設教官研修会実施報告
理療教育部教官 島村 明盛
伊藤 和之



 従来、「理療科教官研修会」、「普通科教官研修会」と称して別途開催してい ましたが、今年度は合同で、下記のとおり5日間の研修を行いました。

【教科教育研修会:8月1日〜8月3日】
 広島聖光学園と5センターに所属する基礎分野、専門基礎分野、専門分野の教 官46名が集いました。今回のテーマは「個別支援の充実を目指して」です。
 初日は、主催である国立施設管理室角田補佐及び岩谷更正訓練所長の挨拶に引 き続き、佐藤コ太郎総長の講演「教育と診療」でした。
 総長は理療教育課程の入所者を対象に、ミトコンドリアDNAに関する授業の御 経験をお持ちです。それを基に、中途視覚障害者に対する授業づくりの奥深さと 可能性について示唆を与えて下さいました。


(写真)佐藤コ太郎総長の講演の様子


 特に、宮城教育大学の学長をなさった林竹二先生との御縁と、林先生の言「教 育と医療は同じですね」についてのお話から、新人教官を含む私たちに大きな期待 が寄せられているのを痛切に感じました。
 2日目の午前は、パネルディスカッション・「ソーシャルスキル向上のために」 をテーマに、加藤統括官「保健体育の授業とソーシャルスキル」、伊藤(淳)教官 「臨床研修コースにおける四診と施術のクリニカル・スキル・アセスメントの試み」、 飯塚教官「臨床前教育とソーシャル・スキル」、舘田教官「臨床実習に向けて− メディカルインタビューガイドの紹介−」の4題の発表を行った後、研究所藤田博 子氏よりSST(Social Skills Training)の概論をいただきました。
 近年、入所者の多様化が進む中、基本的な生活習慣から施術者に必要なソーシャ ルスキルに関するトレーニングの必要性を共通の話題としました。


(写真)教官研修の様子1


 午後は、当センター病院医療相談開発部主任心理判定専門職四ノ宮美恵子氏の講 演とワークショップ「教育と心理的支援教育と心理的支援−心理的支援のための関 係づくりに向けて−(理論と実技)」でした。
 教官が身につけておくべき心理的サポートの要点を示していただいた後、二人一 組で相手の話を「聴く」ための実技を行いました。ことに、「話を聴く」以前の 「聴かない」態度をとる実技は、聴くことの重要性を体感する動機づけとして効果 的でした。


(写真)教官研修の様子2


 3日目は、各科目の分科会で教育実践の現状と情報交換を行い、全体会で各施設 における情報教育の現状を報告し合いました。これからの理療教育課程における基 礎分野の位置づけと展望について活発な議論が行われるとともに、試行錯誤と様々 な工夫を繰り返しながら中途視覚障害者の情報教育を展開している状況が明らかに なりました。

【臨床教育研修会:8月3日〜8月5日】
 先述のとおり、前半の2日間を基礎分野担当教官と合同で行い、3日目の8月3日 からは「臨床を意識した気づきの授業」をテーマに、別室に分かれました。
 今年度の重点分野は「スポーツ医学」です。初任者及び臨床研修を希望する教官15 名を対象として臨床系の研修を行う上で、考慮したのは、実際の臨床に役立つという ことだけでなく、「授業で講義できるまで身につけていただく」という点です。
 そこで、今回は「テーピングの理論と実技」と銘打って、一般の講習会の4倍程度 の時間、2日間終日テーピングと格闘する研修を企画しました。

(写真)教官研修の様子3


 講師陣には、テーピング講習に20年の実績のあるムトーエンタープライズから加瀬嘉 晴、鈴木宏治氏を招きました。そして、基礎から応用までを受講者に徹底的に指導して いただきました。夏休み明けには各センターでテーピングの授業が行われることと期待 されます。
 研修会最終日の8月5日には、パネルディスカッションタ「臨床を意識した気づきの 授業」について4題の発表を行いました。
 当部舘田教官の「動かして知る解剖学授業」では、肩関節と股関節を例に、動きから 知ることの必要性を考えた授業方法について、また当部加藤(麦)教官からは「臨床診 察学での実践例」と題して、昨年度から始めた目標別クラス編成に基づき各クラスの進 度を考慮しながらも、臨床の場で必要となる診察能力、特に不適応疾患の鑑別能力を習 得させることに重点を置いた授業の実践についての発表がありました。
 国立神戸視力障害センター教務課宍戸新一郎教官の「身体運動と経絡の相関について」 では、脊髄反射に見られる人体の反応を例に、生理学的な内容から上下肢の経絡関係を 捉えさせる見方を導入することで、入所者の科目に対する理解と関心を深めるように働 きかける授業について、国立福岡視力障害センター教務課平松洋教官の「鍼灸基礎実習ソ における実践例」では、はり実技の授業で導入した触察法やリスク管理等の実践について、 それぞれ発表がなされました。
 各教官とも創意工夫と試行錯誤をしながら日々の授業を行っていることが伺い知れまし た。

 以上、5日間の研修会の内容を御報告しました。このように、外部講師をほとんど招か ず内部の職員、教官による研修形式としたのは、教官の資質向上をより実践的に具体化す ることを目的としたためです。
 個々の教官がどのような実践を行っているかを参加者相互が知るだけでなく、教官の研 究の力、発表の力を蓄え、外部にも本研修会をPRする情報発信型の研修会を創造すること をねらいとしています。
 また、総合施設の機能を発揮するうえでも、研修会における部署間の連携は有効です。 今回は佐藤総長、四ノ宮主任心理判定専門職、藤田研究員にお願いしましたが、今後も内 部における人的交流の機会を増やし、機動力のあるセンターづくりに貢献していきたいと 考えているところです。