〔病院情報〕
手術室の改修を終えて
中央材料室・手術室看護師長 田村玉美



 当院では、昭和56年から整形外科・耳鼻いんこう科、翌57年から眼科・泌尿 器科の手術が開始になりました。
 改修工事は、平成17年4月に始まり手術室1室を使って手術を行いながら、 平行して実施され7月中旬に終了いたしました。
 今回の改修工事の主な目的は、より清潔で安全な手術室にすることでした。 それは、手術を受けている患者の体内に塵埃が入ってしまうと感染を起こす危 険性があるからです。
 塵埃などを取り除くために機能する空調設備は、手術室の陽圧を常に監視で きる新しいシステムの導入と、手術室の天井に設置した無塵・無菌の空気を送 るためのHEPAフィルター(0.3μmの塵埃を99.99%除去できるシステム)の全面 交換などによって能力アップしました。さらに、手術室内の内装に抗菌材焼き 付け鋼板パネルやクリーン仕様のコンセント類などを採用することによって、 手術室は常に清潔が保たれるようになりました。
 手術室の空気は、天井のHEPAフィルターを通過し室内を通り、4隅にある排 気口に流れる仕組みになっており、手術室内は微妙な陽圧バランスを保つこと によって室外の空気の流入を防ぐ構造になっています。この手術室内の空気は 定期的に検査を行いクリーン度が維持できているか確認をしています。
 このクリーン度とは、一定の体積中にある塵埃の大きさとその数で表したも のです。現在、米国連邦規格の一立方フィートの空気中に0.5μm以上の微粒子 が何個あるか、100個以下はクラス100、1000個以下はクラス1000、10000以下 はクラス10000、100000以下はクラス100000と表示するNASA基準が最も多く使用 されています。
 当院の改修後の手術室をNASAの基準でみると、廊下などがクラス10000とな り、手術準備室と2つの手術室はクラス1000ですので、クリーン度が比較的高 い整形外科手術に適した手術室になったのです。
 医師や看護師が手術室内に入室する時、手術室専用の衣服に着替え、マスク を装着し、スリッパを履き替えた後に、衣服に付着したゴミ・埃・毛髪などを 取り除くエアーシャワーを通過しますが、今回の工事でエアーシャワーが設置 されたことも手術室のクリーン度を保つために役立っています。
 手術室看護師の仕事は医師がメスといえばさっと渡す、医師が汗といえば汗 を拭くなどと想像される人が多いかも知れませんが、実際の仕事はそれだけで はありません。
 日常の手術機器の保守点検や滅菌器材や衛生材料の管理をベースに、手術前 から始まります。
 安全な手術環境を提供するために、手術に必要な器械セットの滅菌前の確認 ・点検、手術室内の準備、手術直前の滅菌器械の各手術にあった準備、麻酔の 介助、手術衣に着替えて手術を直接介助する看護、手術器械類・薬剤の準備補 充をする外回り看護、手術後の器械類の洗浄並びに手術室の掃除、手術前日に 患者を訪問し安心して手術を受けていただけるように手術当日の流れや処置を 説明する術前訪問(麻酔医が常勤しないため麻酔医に情報を提供する重要な役 割を担っている)や術後訪問などを行っています。
 その中でも手術終了後の手術器械類の洗浄は、器械類が多い場合には2時間 以上かかることもあり、何とかならないだろうかと考えていました。
 今回の工事では、下洗い室に蒸気の配管が整備され、ジェットウオッシャー が設置されました。ジェットウオッシャー(手術器具洗浄装置)は、93℃の熱 湯で10分間洗浄することにより除菌ができ、感染症として問題とされている肝 炎ウイルス、エイズウイルスの不活性化、MRSAの破壊ができる(BGAガイドラ インより)という優れた機能を備えているのです。
 この新しい機能を備えリニューアルした手術室の効率的な運営に貢献し、患 者が安心して手術を受けられるよう、スタッフ一同取り組んでいます。


(写真)エアシャワー
エアシャワー
(写真)ジェットウォッシャー
ジェットウォッシャー