〔魚拓シリーズ2〕
カラー魚拓の基礎知識
元理療教育指導室長 川政  勲



1 魚拓用語

 あて木(安定板)
  魚を固定するために使用する板。厚さ1ミリから5ミリ、長さ5センチから20センチ(魚の大きさによって変わる)ほどの板で、片側は曲線に削る(魚の曲線に合わせる)。発泡スチロールで代用する場合もある。

 打つ
  魚拓を作るときにタンポで色を付けることを打つという。

 裏打ち
  出来上がった魚拓は薄い和紙に取ったので、皺がよりやすく、そのままでは額装が出来ないため,拓紙の裏に厚紙を貼ることを裏打ちという。色紙に貼ることもある。

 画仙紙
  書画用の白い和紙。魚拓紙として用いる。

 間接法
  魚拓のとり方の一方法。魚に紙や布を被せて、その上から絵の具や墨をつけて魚拓をとる。

 原色
  赤、黄、青の三色を言う。

 構図
  調和を考えて物を配置することを構図というが、一枚の拓紙に複数の魚、あるいは添え物を打つ時は、構図を考えて打つ。

 胡粉
  貝殻を焼いて作った白い粉。魚の腹部や斑点等を打つのに使用する。

 混合色
  2色以上の絵の具を混ぜて作った色。8色しかない絵の具を混ぜて魚に近い色を作ります。

 塩
  魚のぬめりを取るのに使用する。中性洗剤を使用することもある。

 側線
  魚の体の側面に並んでいる感覚器官を側線と呼ぶが、魚はこの線で音を感じるといわれている。

 吸取紙
  事務用に使われるインクなどの水分を取る紙。間接法で魚拓を取るときに欠かせない。

 拓本
  石碑などに彫られた文字や模様を、墨で紙に写し取ったものを拓本という。間接法の魚拓は、この拓本にヒントを得たものだといわれている。

 タンポ
  紅絹(もみ)やベンベルグなどの布で綿を包んだもの。間接法ではタンポは絵を描くときの筆と同じ役割をする。間接法の小道具の中では最も重要なもの。

 直接法
  間接法とともに魚拓のとり方の代表的な方法。魚に直接、絵の具や墨を塗り、その上に紙や布をあてて魚拓をとる。

 ぬめり
  魚体の表面にある粘液。魚拓をとる際にあまりぬめりがあると綺麗にとれない、及び紙を剥がす際に魚体に紙が貼り付き破れることがある。

 ハイライト
  強い光が当たっていて最も明るく見える部分をハイライトという。目に光が入ると、その部分が白く見えることから、目に白を入れることをハイライトを入れるという。

 ひれ
  魚類の胸、腹、背、尻、尾端にある運動器官をひれと呼んでいるが、魚にとっては非常に重要な器官。平衡感覚は、このひれによってとられているといわれている。

 ベンベルグ
  コットン(木綿)から生まれた再生セルロース繊維。タンポを作るのに用いる。

 水貼り
  魚拓紙を水で魚体に貼り付けることを水貼りという。間接法で魚拓を取る場合には、この水貼りをしっかりしておかなければ、良い魚拓はとれない。スポンジやパフなどを使い、魚体の高いほうから低いほうへ皺を作らないように貼る。

 美濃紙
  岐阜県で作られる和紙で、原料になるのはコウゾと呼ばれるクワ科の落葉低木。魚拓紙として使われることが多い。

 メリハリ
  強弱の変化という意味の言葉であるが、魚拓の場合、色にはっきりとした濃淡をつけることをいう。

 綿連紙
  画仙紙の一つで、魚拓紙として用いる。大きな魚の魚拓に適している。

 紅絹(もみ)
  着物の裏地に使われる無地の絹布。タンポの材料として最適。

 油性絵の具
  ベンジンなどの溶剤を用いなければ溶かすことの出来ない絵の具。水をはじくので魚体に貼った紙が乾いてから打たないと綺麗な色は出ない。

 落款
  書画に署名、押印すること、その署名、印を落款という。魚拓にも原則として落款を行うが、作品を阻害しないような大きさ、場所などを考慮して行う。

 羅紋宣
  画仙紙の一つで、魚拓紙として使用する。小魚の魚拓に適している。

 輪郭
  外側の形を輪郭というが、間接法で魚拓を打つ時にはこの輪郭が綺麗に打てているか否かで作品の印象がぐっと違ってくる。輪郭を打つときには曲線を模った吸取紙を当ててしっかりと打つ。



2 カラー魚拓のとり方

 
1) 準備する用具
 
2) 枕木、あて木、下敷きなどを用いて魚をしっかりと固定する
 
3) セットされた魚の上に紙を置き、紙全体の四隅から中央へ霧を吹く
 
4) パフ等を使って魚体に頭部の方から紙を密着させる
 
5) テッシュをあてて、手のひら、指などで撫でて水分を取る
 
6) 絵の具を皿に取り、混合して魚の色を作っておく
 
7) 魚の曲線に合わせて、吸取紙に硬貨ですじをつけながら切り離す
 
8) 吸取紙を当てながらタンポに黄色の絵の具を付け魚全体に打つ
 
9) 同様に吸取紙を当てながら斑点(黒)や濃淡を付け朱色を打つ
 
10) 拓紙に霧を吹き、少し間をおいてから魚体から離す
 
11) 腹ビレを切り取り打つ
 
12) 腹部の白い部分 胡粉で打つ
 
13) 目を筆で書き入れる
 
14) 構図を考え、鉛筆で枠を取り、裏返して拓紙を置く
 
15) 色紙に糊を塗り、枠の内側に貼り付ける
 
16) 乾いたら枠外の余分な紙を切り取り,落款(作者の署名及び印)を入れて完成