〔更生訓練所情報〕 |
平成17年度施設サ−ビス自己点検 実施結果報告 |
更生訓練所指導部 山添 秀次、有馬 昭郎、森 公士朗 |
1 はじめに
「施設サービス自己点検」は、利用者主体の質の高いサービス提供を行うこ
とを目的に実施された経緯があり、「障害者・児施設サービス共通評価基準(
厚生省大臣官房障害保健福祉部、平成12年6月)」に更生訓練所として必要な
点検項目を加え、平成13年度から行っている。この間、基本理念やマニュアル
の整備、提供するサービスの実態に沿った点検項目の見直し等、実施結果から
得られた問題点の改善を図ってきた。これにより「施設サービスの存在とその
向上に向けた取り組み体制」について職員に周知が図られ、一定の成果が得ら
れたと考えている。ここでは、平成17年度に実施した自己点検結果と分析につ
いて、以下の報告を行う。
2 自己点検実施者の状況
(1) 自己点検実施月 平成17年6月
(2) 調査項目 295項目
(3) 調査対象者 113人
平成17年度の自己点検は管理部34名、指導部33名、職能部13名、理療教育部
32名、入所者診療室1名、計113名を対象に6月下旬に実施した。その結果、
回答が得られた者は103名(91.2%)であり、全員実施には至らなかったので、
本点検の意義を改めて周知し、対象職員全員の参加に向けてより一層の努力が
必要である。(表1)
表1 自己点検実施者の状況 | ||||||||||||
|
3 前年度との評価比較
評価結果の区分を前年度と比較すると、A評価は94項目から101項目に、B評
価も184項目から192項目に増加した。また、前年度18項目あったC評価は大幅
に減少し、2項目となった。(表2)
この結果として考えられることは、「施設サービス関連マニュアル」を整備し、
職員への周知を各部署で取り組んだ結果であると分析している。
表2 前年度との評価比較 | |||||||||||||||
|
※ 評価方法
小項目単位に書かれた着眼点について、評価者が知っている又は理解して
いる等の判断により、該当項目をチェックする仕組みとなっている。
※ 評価結果の区分
A評価とは、チェック(着眼)率が70%以上ある場合である。
B評価とは、チェック(着眼)率が20%以上70%未満の場合である。
C評価とは、チェック(着眼)率が20%未満の場合である。
※ 調査項目は、ボランティアの育成の項目を削除したため、17年度は1項目
少ない。
4 前年度から評価が変動した状況
項目毎に、前年度の評価結果の区分を比較した結果、以下のとおり調査結果
に変動があった。
A評価からB評価に下がった項目は、7項目あったが、A評価からC評価に、B評
価からC評価に下がった項目はなかった。なお、昨年度もC評価であった寮生活
の体験サービスや、利用者の地域活動への参加促進については今後の取り組み
方法に課題が残った。
特筆すべきは、B評価からA評価に上がった項目は14項目あり、また、C評価か
らB評価に上がった項目も16項目あったことである。(表3)
この結果は、徐々にではあるが施設サービスに対する認識度が改められてきて
いる現象であり、今後も引き続き施設サービスの理解を得られるように努力し
ていくことが重要である。
(1) A評価からB評価に下がったものの主な事例としては、「公衆FAXを設置し
ている」、「プライバシーを保護するための留意事項が、それぞれのサービス
のマニュアルの中に示されている」、「自己管理ができる人には、金銭等を保
管する場所と設備を提供している。」などであり、評価結果は下がってはいる
ものの、着眼率を比較してみると、何れの項目も前年度70〜73%であった
ものが、本年度は63〜69%となっており、職員の意識としてはさほど低下
してはいない。
(2) B評価からA評価に上がったものの主な事例としては、「提供されたサービ
スは、その内容、実施日時、回数、結果等が確実に記録されている。」、「策
定された地域生活への個別移行計画は、利用者の合意に基づいている。」、「
必要に応じ、金銭管理の支援を行っている。」などとなっており、利用契約制
度となってから利用者と対等な関係や説明と同意の重要性等、基本的な事項が
十分認識されてきたものと思われる。
(3) C評価からB評価に上がったものの主な事例としては、「食事サービスの検
討会議等には利用者も参加している。」「居室の個室化や二人部屋化を実現し
ている」などとなっており、評価結果はB評価に上がっているが、これらの着
眼率は前年度とほとんど変わっていない。
障害者自立支援法が成立した現在、食事・住環境面などについては、利用者
の費用負担に絡むものでもあるため、サービスに格差が生じないように日々の
点検や速やかな改善に向けた取り組みが必要と思われる。
表3 前年度から評価が変動した状況 | ||||||||||
|
5 自己点検実施者の比較
(2回目以上の者と1回目の者)
本年度の自己点検実施者103名の内、2回目以上の者は85名おり、1回目の
者は18名であった。2回目以上の者と1回目の者の評価結果を比較すると、
A評価は2回目以上の者が1回目より23項目多く、また、2回目以上の者で
C評価をつけたのは1項目とかなり少なく、施設の在職年数によって大きく
差が生じた。(表4)
今後の取り組み課題としては、新規採用職員、転勤者に対して、更生訓練所
の現状や施設サービスについて、関連マニュアルを通じて周知徹底すること
と、新規職員に対する適切な調査時期の設定である。
表4 自己点検実施者の比較(2回目以上の者と1回目の者) | |||||||||||||||
|
6 本年度の特徴
(1) 前年度評価結果でC評価(15.8%)となった「家族向けの広報紙を発行し
ている。」の項目については、前年度の結果を受けて平成16年度から更生訓
練所だよりを発行するように改善したことが高い評価結果になったものと思わ
れる。
この項目の他にも、昨年の評価結果を踏まえてサービス改善を行ったもの
については、評価結果は向上している。
(2) 地域との連携(大項目)についての着眼点は32項目あるが、その中でC評
価は1項目だけである。しかしながら、チェック(着眼)率が50%以下のもの
が17項目もあり、全体としては低い評価となっている。これについては、昨年、
作業班を立ち上げて具体策を検討することとなっていたが、未だ取り組みが進
まないことに大きな原因であると推察される。
(3) 本年度は自己点検結果について、実施経験(2回目以上の者と1回目の者)
により比較検討を行ってみた。予想されたことではあるが、1回目の者は、新
規職員、転勤者であるため、2回目以上の者と比較すると、評価の低い項目が
目立つ結果となったが、その理由としては前述したとおり、センターの現状等
が把握されていないことや「施設サービス関連マニュアル」の周知が図られて
いないことが原因であると推察される。このため、新規採用職員研修会、業務
説明等で周知の徹底を図ることが必要と思われる。
7 今後の検討課題
(1) 6でも述べたが、地域との連携については現状では着手していない状況で
ある。地域に根ざした施設運営は更生訓練所利用者にとっても福祉の増進につ
ながることが期待される。このため今後、地域への密着を目指したプロジェク
ト作業班を立ち上げる等、体制についての検討をしていきたい。
(2) 今回の実施結果を見ると、管理部では、利用者に対する直接的な支援に関
係する項目が、理療教育部では、日常生活支援等に関する項目の評価、チェッ
ク(着眼)率が、低い状況にある。これは、当センターのような大規模施設で、
職種も多岐に分かれているために、全職員が同じレベルですべての施設サービ
スの内容や、サービス向上に向けた取り組みについて把握することには無理が
あるのではないかと考える。
今後の評価実施に当たって、全職員を対象に同一の評価項目で実施するこ
との妥当性について検討していきたい。
(3) 5でも述べたが、新規採用職員、転勤者に対して、更生訓練所の現状や施
設サービスについて、施設サービス関連マニュアルを通じて周知徹底すること
が必要であり、そのためには、例年6月に実施している調査は早すぎるのでは
ないかとの懸念もあり、適切な調査時期の設定を検討していきたい。
(4) 昨年までは、実施者全員に対して、実施結果の周知徹底が図られていなか
った。本来、施設サービス自己点検の意義は実施後にあり、その結果を全職員
が共通の意識のもと、施設サービスの向上を図ることにあると考える。そこで、
本年度から全職員に実施結果を配布し、周知徹底を図ることとしたい。
8 まとめ
今年度の実施結果は、10月に「施設サ−ビス自己点検実施・改善策策定作業
委員会」に報告されたところである。その中で、自己点検を意義あるものにす
るために次の段階として、今年度の検討課題を含め、「サービスに欠けている
ものがないか」、「サービスの質の低下がないか」等、適切な業務が実施され
ているかを自身で評価できるよう点検項目の見直しが求められたものである。
今般、その構築に向けて速やかに着手することとなったが、今後とも全職員が
当事者意識を持ち、自己点検が意義あるものとなるよう一層の協力をお願いす
るものである。