〔学院情報〕
平成17年度盲ろう者通訳ガイドヘルパー指導者研修会(後期)を終えて
研修担当責任者:学院視覚障害学科 教官 松崎 純子



 11月7日(月)から11日(金)の5日間、当学院で「盲ろう者通訳ガイドヘ ルパー指導者研修会(後期)」を開催いたしました。日程は別紙のとおりです 。本稿では、10日(木)の実習の内容と様子を報告します。
 実習は前・後期10日間にわたる研修会で学んだことを実践する機会で、まと めといえる位置づけにあります。実習は盲ろう講師と受講者が目的地まで移動 し、目的を達成する過程で実施されます。受講者は盲ろう講師の手引きや通訳 の介助をしながら同時に、講師から直に、その場で、通訳介助技術や通訳ガイ ドヘルパーの心構えについて指導と助言を受けることができます。今年度は盲 ろう講師を5人お招きし、講師1人に受講者2人から3人で構成されるグルー プをつくりました。そして、グループごとに後楽園や東京タワー、上野動物園 、秋葉原の電気店などに向かいました。
 筆者は田幸先生のグループと同行しました。高田馬場駅の早稲田口が待ち合 わせ場所で9時30分、田幸先生がビッグボックス方面から点字ブロックを白杖 で伝いながら登場し、指点字や触手話であいさつ後、日本点字図書館に向かい ました。
 図書館に到着すると受講者は早速、入り口にある用具事業部で、職員による 視覚障害者用の用具等の説明を通訳したり、新刊本のタイトルや表紙のデザイ ンを説明したりしました。次に、2階の対面朗読室に行くと、先生から「この 部屋の様子を説明して欲しい」と依頼がありました。
 その後、高田馬場から新宿へ場所を移しながら、買い物の通訳介助をしまし た。
 先生が買いたい衣服について伝えます。受講者は協力して商品を探し、デザ インや色、材質、金額などを通訳します。また、試着した衣服が似合うか、他 のどんな衣服と着回し出来そうかなど、感想や意見も伝えます。電気製品の買 い物では、先生がその場で書かれた買い物リストを片手に、売り場に案内し、 店員との間に入って、電気製品の仕様などの通訳介助をします。
 先生は移動の機会をとらえて、切符の買い方や改札口の通り方、エスカレー ターの乗り降りなどの移動介助の技術について指導され、また、昼食時には、 メニューや盛り付けの説明の仕方を、買い物の支払いの折には、どのようにお 金やカードを管理しているか、日常生活では靴下などペア物の衣類をどのよう に収納しているか、などについてお話されました。また、一人で外出するとき に援助を依頼するために利用する墨字と点字で書かれたカードも見せてくださ いました。
 最後に一日の実習のまとめをし、18時過ぎに新宿駅前から出発するバスに先 生をお送りして、実習を終えました。
 田幸先生は「主体は盲ろう者である」ということを繰り返し強調されました 。これは、当たり前のことですが、「主体は誰か」ということをあらためて認 識し、また盲ろう通訳ガイドヘルパーの役割について考える機会となりました 。
 このような盲ろう講師による講義や実技・実習は大変好評で、アンケートの 結果からも盲ろう講師と接することができる実習はとても良かった、多くのこ とを学んだ、あるいは実技・実習の時間が多く充実していた、という実技に関 係する感想をたくさんいただきました。
 最後に、受講者の皆様が今回の研修会で学んだ知識や技術、出会った方々と のつながりを生かして、ますます、地域で盲ろう者の支援のために活躍される ことを祈念して、今回の報告とします。


(実技講習の様子)
(写真)門川先生(左)と受講者。指点字でコミュニケーションをしています。毎回、大阪から一人で新幹線と西武線を乗り継いで学院までお越しいただいています。
(写真)田幸先生との触手話
門川先生(左)と受講者。指点字でコミュニケーションをしています。毎回、大阪から一人で新幹線と西武線を乗り継いで学院までお越しいただいています。 田幸先生との触手話


(写真)村岡寿幸先生。頭に巻いたバンダナがトレードマークです。触手話で会話中。
村岡寿幸先生。頭に巻いたバンダナがトレードマークです。触手話で会話中。
(写真)藤鹿先生との指点字
藤鹿先生との指点字



(別表)
平成17年度 盲ろう者通訳ガイドヘルパー指導者研修会日程表(後期)

月日 午前 午後
11月
7日
(月)
受付
(9:30〜9:50)
オリエンテーション
(10:00〜10:30)
1.「疑似体験による盲ろうの手引き歩行」
(10:30〜17:00)
 東京盲ろう者友の会            矢田 礼人
 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
  視覚障害学科         主任教官 小林 章
教官 松崎 純子
教官 佐藤 哲司
8日
(火)
2.「盲ろう者と日常生活、盲ろう者と情報補償」
(9:00〜12:00)
 視聴覚二重障害者福祉センター
  すまいる             門川 紳一郎
 ベーチェット協会 江南施設  村岡 寿幸
3.「実技講習1」
(13:00〜17:00)
 視聴覚二重障害者福祉センター
  すまいる                門川 紳一郎
 ベーチェット協会 江南施設       村岡 寿幸
藤鹿 一之
田幸 勇二
 全国盲ろう者協会             村岡 美和
 東京盲ろう者友の会  矢田 礼人、大久保弥恵子
前田 晃秀
9日
(水)
4.実技講習1の反省と評価
(9:00〜10:15)
 東京盲ろう者友の会           矢田 礼人
大久保弥恵子
前田 晃秀
5.質疑応答
(10:30〜12:00)
 視聴覚二重障害者福祉センター
  すまいる                門川 紳一郎
 東京盲ろう者友の会           前田 晃秀
6.「実技講習2」
(13:00〜17:00)
 視聴覚二重障害者福祉センター
  すまいる                門川 紳一郎
 ベーチェット協会 江南施設       村岡 寿幸
藤鹿 一之
田幸 勇二
 全国盲ろう者協会             村岡 美和
 東京盲ろう者友の会  矢田 礼人、大久保弥恵子
前田 晃秀
10日
(木)
7.「実習」
(9:00〜17:00)
 視聴覚二重障害者福祉センター
  すまいる                   門川 紳一郎
 ベーチェット協会  江南施設         村岡 寿幸
藤鹿 一之
田幸 勇二
 全国盲ろう者協会                村岡 美和
 東京盲ろう者友の会               矢田 礼人
大久保弥恵子
前田 晃秀
11日
(金)
8.「実習の反省」
(9:00〜12:00)
9.「まとめ」
(11:00〜12:00)
 視聴覚二重障害者福祉センター
  すまいる                 門川 紳一郎
 東京盲ろう者友の会            矢田 礼人
閉講式
(12:00〜12:15)