〔更生訓練所情報〕
「平成17年度 新成人を祝う会」を終えて
指導部指導課



 国立身体障害者リハビリテーションセンターと国立職業リハビリテーションセンターの 合同主催により、「平成17年度新成人を祝う会」が平成18年1月13日(金)に開催されま した。
 今回の新成人を祝う会では、昭和60年4月2日から昭和61年4月1日までに誕生した方 で、一般リハビリテーション課程、肢体不自由の利用者の方が6名、聴覚障害の利用者の 方が4名、内部障害の利用者の方が1名、理療教育課程の利用者の方が1名、国立職業リ ハビリテーションセンター入所の方で、職務実務コースの方が1名の合計13名の方が対象 となりました。
 国リハ講堂で行われた「新成人を祝う会」では、当センター佐藤総長、職リハ市川所長 の祝辞が贈られた後、岩谷更生訓練所長、職リハ下矢次長から記念品の贈呈が行われまし た。
 そして、新成人を代表して、内部障害18期伊藤祐樹さんからお礼の言葉がありました。

 

 (写真)お礼の言葉を伝える伊藤祐樹さん  





平成17年度新成人を祝う会祝辞
〜 成人の日を迎えて 〜
 

国立身体障害者リハビリテーションセンター
   総長 佐藤 コ太郎
 

 皆さん、成人の時を迎えられ、おめでとうございます。
 さて、ある一時点で事が全く改まることがありますが、時計が0時になると日が変わる 、元旦には暦が変わる、4月1日には人が変わる等がその例です。成人式もそうです。蝶 にたとえるのは適切ではないかも知れませんが、これまでの法的な保護、経済的な保護、 精神的な保護の殻を脱ぎ去り、自立する時であるという意味では、成人式を迎えるという ことは、蝶の羽化にも匹敵する人生を大きく変化させる飛躍の時期です。
 皆さんは、現在、職業人として自立するための心構えや職業技能などの習得に日々励ん でおります。そして、皆さんの周りには同じ目標を持つ仲間が大勢います。人生で一度だ けしか巡ってこないこの大事な成人式を、自立のための研鑚の場において仲間とともに迎 えられました。さらに、福祉制度が自立を重視する時代へと大きく変換する時となってお りますので、皆さんの成人式は一層意義深いものであると思います。幸いに日本の経済状 況が好転している時期ですので、皆さんの自立への努力が大いに報われることを願ってお ります。
 皆さんは、仕事の進め方を会得しようとの強い思いをもって当センターでの訓練に励ん でおられることと思いますが、物事は最初が肝心と言われます。職業人としての手ほどき を受け始めたこの時期に正しい習慣を身につけますと、今後、いろんな場面で役立つこと になります。
 そこで、この成人の日を迎えられた皆さんに、私が仕事を始めた頃に指導されたことの 1つをお話ししますので、皆さんの参考にしていただければ幸いです。私は、計画と準備 、さらに実験の内容を記録することを重点的に指導されたように思っております。  目標の達成のための大まかな道筋を立てたうえで、具体的な手順をできるだけ細かく書 き出し、それを指導者等に確認し、修正することでした。このことによって、各ステップ の意味をより深く理解できます。また、私専用の道具を揃えていただき、道具の貸し借り をしないように指導されました。非常に単純なことですが、このことで、仕事をスムーズ に進めることができたと考えております。
 次に、実際に行った作業については、できるだけ細かく記録していくことでした。その ことで、間違いや予測しなかった結果を正しく理解できたと考えております。
 細かい計画を立てる、道具はいつでも使えるようにしておく、実験内容についてはどん なことでもメモを取っておく。このような基本は、その後のいろいろな場面で役立ってき ましたので、私は後輩にもそのように指導してきました。
 皆さんが今、特に強調して指導されていることは何でしょうか。皆さんそれぞれ違うこ とであろうと思いますが、今後の皆さんの活動の基本となる大切なことを十分に習慣化し ていかれることを願っております。
 皆さん、成人式おめでとうございます。皆さんの当センターでの訓練の着実な成果を期 待して、私の挨拶といたします。

 

 (写真)総長 佐藤 コ太郎  





平成17年度新成人を祝う会祝辞
 

国立職業リハビリテーションセンター
   所長 市川 和通
 

 成人おめでとうございます。今日はセンターの成人式です。
成人の日が月曜ということで、皆さんの中には地元での成人式に出席された方もいらっし ゃるかと思います。いかがでしたか。
 私の成人式ってどうだったのだろうって思い出してみると、相当昔のことになりますが 、行く気はあまりありませんでした。初めてスーツを着る機会を得た友人に誘われて、私 も初めてのスーツ姿で出席したことを覚えていますが、その時の祝辞は覚えていません。
 そんな昔のことの思い出とつながるのですが、先週の土曜日に、近くの所沢ミューズと いうコンサートホールで、寺内タケシとブルージーンズのコンサートがありました。私は 遠方から通っているのですが、休みの日にいつもの通勤経路で聞きに来ました。エレキバ ンドのコンサートなんて実に40年ぶりです。会場には、みんな私くらいかそれ以上のお年 の昔の青少年が、皆さん青春時代に戻ったかのように盛り上がって楽しんでいました。
 寺内タケシと言っても皆さんは知らないでしょうね。もう40年位前にエレキブームとい うのがありました。ベンチャーズというアメリカのバンドが有名だったのですが、日本の 第一人者として寺内タケシがいました。その彼も62歳です。コンサートでエレキブームの 頃の話も出ました。今では信じられないことですが、当時はエレキギターを弾くのは不良 だと言われていました。不良ではありませんでしたが、実は私もエレキ少年でした。私の ことはともかくとして、彼はそんな風に不良と言われた少年達を支えようとしたのがスタ ートで、若者との接点は持ち続けているようです。
 そんな彼が、コンサートの中で、今の若者の本当の気持ちがこの歌にあるといって紹介 したのが「栄光の架橋」でした。この曲、NHKのアテネオリンピックのテーマ曲に使われ ていたので、ご存知の方も多いかと思いますが、この曲、どう受け止められているでしょ うか。良い曲だと思う方も多いでしょうし、中にはあまり好きじゃないという方もおられ ると思います。人の話、言葉、音楽や出来事とかは、聞く人のその時々の自分の置かれて いる状況によって、同じ言葉や曲や出来事でもつまらないものに見えたり、心に響いたり 感動したりします。
 ですから、感受性は豊かであることに越したことはないと思いますが、誰にとっても絶 対良い曲や良い言葉であると一方的に、押しつけることはできないのだろうと思います。 そして、違う感覚、感性をお互いに認め合う思いやりは大切だと想います。
 この曲の歌詞に『想い出せばこうしてたくさんの支えの中で歩いて来た』というものが あります。
 そうなのです。人はひとりで生きているのではなく、生まれてから死ぬまで何らかの形 で人に支えられて生きています。
 昨年のこの場でも申し上げたことですが、人は支えられて生きていることを前提として 、成人を迎える意味を考えたとき、これからは少しでも支える側に回る、支える量を多く するよう意識的に行動するということが連想されてこないでしょうか。もちろん、これか らも支えられるところはたくさんあるのだけれど、意識としては、社会の中で自分が支え る側に回るように努める。それが、社会的に一人前になるということのひとつの自覚の仕 方ですし、自分も世の中も前向きになって行くことになるものと思われます。
 支える部分を増やす行動には、いろいろなものがあると思いますが、ここで学ぶ皆さん にとっての目標である就職も働くことによって、社会的な生産活動に参加する・税金を納 める・家計を助ける等、様々な面で支える側に回ることができる大きな手段の一つだと考 えられます。これは今取り組んでいることが、そのまま支える面を増やすことにつながる ものですが、日常の様々な面で、このことを意識して自分の行動をチェックしてみる。そ うした積み重ねが結果的に成人の自覚を持った行動になると思われます。
 成人を機に、そんな風に意識して行動してみる。これも意味のあることではないでしょ うか。皆さんのご活躍をお祈りしてお祝いの言葉とします。

 

 (写真)所長 市川 和通