〔研究所情報〕
認知障害者の日常生活や就労を支援する機器
研究所 障害工学研究部 研究員
中山 剛


1.はじめに
 研究所障害工学研究部では平成14年度から高次脳機能障害など認知障害者のための支援機器の研究開発を行っています。独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)および明電ソフトウエア株式会社(静岡県沼津市)とともに、三者で高次脳機能障害者の日常生活や就労を支援するPDA(Personal Digital Assistant、携帯情報端末)用のソフトウェアの研究開発を行っています。

2.開発したソフトウェアの機能
 PDAの表示内容の編集設定を行うパソコンソフトウェアとPDAで表示確認するソフトウェアで構成されています。PDA用ソフトウェアには「手順支援」「スケジュール」「アラーム」の機能があります。なお、主な操作はPDA画面へのタップのみで行えるよう設計しております。このため、非常に分かりやすいインターフェイスとなり、使用者が操作方法を忘れても直観的に操作できるよう考慮した画面設計となっています。
・手順支援
 文字、写真、音声を併用して、手順を確認しながら業務や操作が行えます。作業手順表示例を図1に示します。
・スケジュール
 現在の時刻を基準にスケジュールを表示します。
・アラームおよびアラーム管理
 指定時刻にメッセージを表示し、メッセージ表示を一時停止/再開できます。

 これまでの成果の一部は、平成16年7月1日より商品名「メモリアシスト」として、共同研究先の明電ソフトウエア株式会社から市販化されております。詳細は以下にお問い合わせ下さい。
◆お問い合わせ先
明電ソフトウエア株式会社 相談窓口
受付時間 8:30〜17:00(土・日・祝日・夏季・年末年始を除く)
TEL :055-923-4972(直通)
FAX :055-923-1191
E-Mail :MemoryAssist@mb.meidensoftware.co.jp
URL :http://talkassist.meidensoftware.co.jp/ma/

 すでに国立職業リハビリテーションセンターをはじめ、幾つかの職業訓練センターや病院等で導入され、訓練に利用されています。利用者からは「今までできなかった作業ができるようになった」「画像を使用した作業手順でチェックできて,解りやすかった」等の声も得ており、上々の評価を頂いております。

3.現在の取組み
 就労・職業訓練場面だけではなく生活場面においての評価およびソフトウェアの改良が今後の課題です。また、地誌的障害がある高次脳機能障害者の支援機能としてのナビゲーション機能を研究しております。現在は2次元バーコードやタグ等も利用したナビゲーションソフトウェアも試作し、評価および改良を行っているところです。図2に屋内ナビゲーションソフトウェア(バージョン1)のPDA画面例を2枚示します。  なお、地誌的障害者の支援研究は文部科学省から助成を頂いており、科学技術振興調整費重要課題解決型研究「障害者の安全で快適な生活の支援技術の開発」(研究代表者:山内 繁)の一部として行われています。


(図1)作業手順表示(PDA画面)
図1 作業手順表示例(PDA画面)

(図2)屋内ナビゲーションソフトウェア画面1 (図2)屋内ナビゲーションソフトウェア画面2
図2 屋内ナビゲーションソフトウェアの画面例(PDA画面2枚)