〔ワンポイントマッサージシリーズ8〕
〜東洋の経験と知恵を活かして健やかな毎日を〜
理療教育部主任教官 柳澤 春樹



8.「しつこい膝の痛み」
 中高年の方で膝が痛くて階段の昇り降りが大変だとか、和式の生活が不便で仕方がないという人は大変多いものです。 スポーツや交通事故などによる外傷が明らかで、症状の重い場合は、確実な診断の上で、手術を含めてしっかりとした治 療を行なわなければならないものもあります。その可能性がありそうなら、必ず専門医を訪れてください。
 医療機関を訪れたものの医師から「もう年だから仕方がない」といわれたという方が多いのには驚かされます。 「変形性膝関節症」という場合が多く、結構やっかいなものです。今回は、いつまでもなんとなく痛みがあってつ らいというときに、少しでもそれを軽快できるように、以下の方法をご紹介します。この症状はツボへの刺激だけ で軽快させることはできませんので、ここに紹介するような無理のない運動療法も試みてください。

1.座った状態で膝の皿(膝蓋骨)の下で太い腱(膝蓋腱)の両側にあるくぼみを両手の親指でゆっくりと、まっすぐに 指圧します。1、2、3と息を吐きながら押し、4、5、6で息を吸いながら力を抜いていきます。これを5・6回くり かえしたら反対側にも同様に行ないます。(内膝眼「ないしつがん」、外膝眼「がいしつがん」)(図1)

(図1)内膝眼「ないしつがん」外膝眼「がいしつがん」

2.椅子に座って行ないます。膝の後側のくぼみの真ん中にあるポイントを両手の中指を重ねて、できるだけ膝を伸ばし ながら指圧します。1、2、3と息を吐きながら押し、4、5、6で息を吸いながら力を抜きます。5・6回行なったら 反対側にも同様に行ないます。(委中「いちゅう」)(図2)

(図2)委中「いちゅう」

3.片足を投げ出して、もう一方の膝を立てて座ります。片手で膝がぐらつかないように支えながら、反対側の親指か4本 の指でゆっくりと押しながらもんでみましょう。1、2、3、4、5ともむようにします。5・6回くりかえしたら反対 側にも行ないます。あまり痛みが強くならない程度に押さなければなりません。(曲泉「きょくせん」)(図3)

(図3)曲泉「きょくせん」

4.仰向けで行なう簡単な運動法です。片膝を立て、伸ばした方の足の踵を持ち上げ、5〜10cmのところで5秒間ぐらい持 続してからゆっくりと下に下ろします。最初は数回を1セットにして次第に回数を増やしてゆきます。体力に合わせて行な いますが、決してむりにならないように注意しましょう。できれば、専門家に具体的な方法を指示してもらうのが よいでしょう。(図は記載してありません。)


5.やはり仰向けで行ないます。膝下にタオルなどを丸めて置き、それを押しつぶすような感じで膝を伸ばすようにします。 これも5秒ぐらいを目安とするのがよいでしょう。この運動も膝の痛みだけでなく、股関節や腰の痛みなどでも重要とされて いるものです。お尻にある大殿筋や大腿の前面にある大腿四頭筋といった大切な筋の力をつけ、膝関節の機能を整えるもので す。(図は記載してありません。)



* 以上の4、5の運動はやりすぎるとかえって体調を悪くしてしまいますので、疲れを残さない程度にしなければなりません。
このほかにも効果的なものは沢山ありますが、自分の掌で膝蓋骨(お皿)を包むようにしながらゆっくりと動かすようにするマッサージ などもいいでしょう。
お風呂に入ると循環が改善し、膝の周りの筋肉など(軟部組織)が緩みますので、運動やマッサージはさらに効果的となります。
しかし、膝関節の変形が進みO脚となってきたり、歩行時の痛みがあるような場合には、痛い側と反対側に杖を持つことなども症状の 悪化を防止することになりますので、専門家とご相談してください。手術が必要といわれるほどの方でも、かなり症状が軽快して日常 生活が快適に行なえるようになる方も多いのです。決してあきらめずに毎日続けることをお勧めします。