〔研究所情報〕 |
ICCHP 参加報告 |
研究所 福祉機器開発部 伊藤 和幸 |
2006年7月10日から14日の日程(10−11日プレカンファレンス、12−14日本カンファレンス)で、オーストリ
アのリンツ大学において、障害者のためのコンピュータに関する国際会議が行われました。この会議は、障害児・
障害者、高齢者のためのコンピュータ利用に関する国際会議として、オーストリア及びその周辺国において隔年で
開催されてきたもので、2006年でちょうど節目の第10回目となります。会議には、33ヶ国から400人程度が参加し
ました。査読を経た170件あまりの演題は、特定のテーマごとに分けられたセッション(略してSTS)及び一般セ
ッションにおいて討論されました。
STS及び一般セッションのテーマを見ると、盲人による数学・音楽へのアクセス、点字印刷、視覚障害者の移
動とヒューマン・コンピュータ・インタラクション、触覚ディスプレイ、ハプティック及び聴覚インタフェー
スなどがあります。聴覚障害者関連ではコンピュータとコミュニケーションが論じられました。技術的なテー
マでは、障害者の移動のための技術、代替拡大コミュニケーション、電子仮想図書館、情報社会技術へのユニ
バーサルアクセス、バーチャルリアリティの応用などがありました。障害者の年齢的な観点からのテーマは、
コンピュータと統合教育、障害者の日常生活、障害者の職業的統合などでした。障害種別では視覚障害者関連
の発表が多数見受けられたことが印象的です。
また、支援技術の成果向上のための国際協力、障害者の政治的・法的・個人的側面といった技術中心ではな
いテーマが用意されていた点は興味深いものでした。
リンツはオーストリアで3番目に大きな都市(ウィーン、グラーツに次ぐ)で、ウィーン、ザルツブルグの
ほぼ中間にあります。気温は高いのですが、内陸なのでおおむね湿度が低く快適に過ごすことが出来ました。
緯度は北海道と同じくらいなので日の暮れるのが遅く、学会スケジュールも夜にシフトしているのですが、そ
の割りには早い時間からの開始セッションが多く、慣れない食事を含め学会期間中は体調管理が大変でした。
今年はモーツァルト生誕250周年なので、ウィーンや生家のあるザルツブルグは観光客が多いようですが、リ
ンツは静かな町並みが続いていました。ドナウ川が市内を流れているのですが、美しき青きドナウはウィー
ン方面に出かけた渓谷で見られるとのことでした。