〔魚拓シリーズ8〕 |
ウミタナゴ |
前理療指導室長 川政 勲 |
ウミタナゴはウミタナゴ科の魚で、北海道中部から九州の日本各地、朝鮮半島南部に分布。浅海の岩礁域
に棲む肉食魚で、体はタイ型でよく側扁し、やわらかい円鱗をこうむる。胎生する魚として有名である。5月
6月に13尾前後の仔魚を産む。肉質は軟らかく淡白な味で、釣りの対象魚としても人気がある。東北地方では
珍重されるが、山陰地方には逆子を産むから妊婦には食べさせないという迷信がある。
函館のタナゴのシーズンは4月の下旬からゴールデンウィークである。
アミのコマセを撒き、魚を寄せてイソメの餌で釣る。うまい具合に当たると、小型ながら50も60も釣れる。
一度は餌が無くなり釣りが出来なくなってしまったことがあった。餌が無ければどんな名人でも釣れない。
行きつけの居酒屋の常連に考古学の先生がおられ、是非にと同行をお願いされたことがあった。
氏は釣りは嗜むがタナゴ釣りは初めてとのこと。居酒屋で飲みながら釣り方をお教えしたが、現場で再度要
領を説明しながらコマセを撒く。
しばらくすると電気浮木の赤いライトがつんつんと海中に沈む。すばやく竿を上げると強烈な引き込み。糸
がぐんぐんとのされる。6メートルの竿は半円を描く。慎重に糸を手繰り寄せ、足下で一気に引き抜く。手元
には30cmもの大きなウミタナゴが。
考古学の先生も何とか悪戦苦闘をしながら何匹か手中に収めた。
二人とも満足な顔で函館に戻るも、夜中の1時を回る頃。居酒屋の女将に自慢話をしながら一杯という訳
にも行かず、釣り談義は夜に回された。
氏は居酒屋で会うたびに、「タナゴを釣った感触は一生忘れない」と大袈裟に話し、ビールをご馳走して
くれるのであった。
タナゴ釣る夜更けて暗し日本海 いさお