〔センター行事〕 |
第2回職員研修会開催報告 |
総長 岩谷 力 |
平成18年10月19日に本年度第2回目の職員研修会が帝京平成大学健康メディカル学部学部長寺山久美子先生を講師にお
招きして「リハビリテーションにおける連携・協働の時代と国立リハセンターに期待するもの」との演題名で開催されま
した。
寺山久美子先生は、東大医学部衛生看護学科を卒業後、看護師、保健師の資格を得た後に作業療法士の資格を取得され
、約20年余にわたって障害児療育、作業療法の臨床と管理業務に携わられた後、東京都立医療技術短期大学教授、同作業
療法学科長、東京都保健科学大学教授、同作業療法学科長を経て、2002年から現職をお勤めになっておられます。当セン
ターの運営委員でもあります。
この研修講演会には、124名の職員が出席し、熱心に講演を聴講し、引き続き行われた懇親会でも活発な意見交換が行
われました。
講演の要旨を以下に示します。
わが国は、少子高齢社会となり、障害を持つ人々の障害は重度化、重複化し、ニーズも多様化している。これらの社会
の変化への対応に際して、当事者中心、自立・自律、効率と質の充実をキーワーズとして、地域における在宅生活を支え
る総合的な保健・医療・福祉の仕組みが必要となる。近年、わが国のリハビリテーションは、短期集中型の病院を経て在
宅生活を支える地域リハビリテーションへと移行するプロセスをとるようになった。従来のチームアプローチによるリハ
ビリテーションサービス提供の仕組みは変化し、多職種間の連携と協働によりサービス提供が図られる時代を迎えている
。リハビリテーションにおける連携には、人的連携、組織的連携、ネットワークの形成、制度的連携、複合的連携がある
。人的連携は最も基本的なもので、人と人との信頼関係、コミュニケーションが重要である。組織的連携を結ぶのはしば
しば難しい。それはややもすれば組織は縦割り指向が強く、閉鎖的で、巨大で、硬直化し、独裁的であるからである。グ
ループを作りネットワークを形成することは極めて有力な連携手段となる。地域との草の根的なグループ、職業集団によ
るネットワークへの参加などにより地域への貢献が可能である。制度的な連携については、介護保険における保健と医療
と福祉の連携、障害者自立支援法における障害種別の枠を超える連携、特別支援教育と地域や福祉の連携などについて、
これから検証を行っていくことが必要であろう。複合的連携とは当事者、家族、近隣、ボランティアなどとの連携で、こ
の種の連携には有能なコーディネーターが不可欠である。
リハビリテーション関連職種は、介護保険、障害者自立支援法、地域リハ支援体制支援事業、リハビリテーション医療
における病院・診療所・地域への移行支援、職業リハビリテーション、障害児教育からの移行支援、地域の町づくり推進
などにおける多職種間の連携に参加することが求められる。これらの連携を進める上で、成果の検証、技術の検証、連携
事例の蓄積、制度・政策・システムの研究、共通概念、共通言語の研究開発が課題である。
国立身体障害者リハビリテーションセンターには、その役割・能力が地域から認められるような活動を期待するととも
に、新しい時代を担う人材の育成、連携モデル、障害横断的アプローチのモデルを作り、社会に提示して欲しい。
運営委員としては、高次脳機能障害モデル事業の成果、研究所の研究成果などを高く評価している。国際的な情報発信
を拡大し、発達障害者支援などの新しい事業に取り組んで欲しい。
寺山先生は、わが国のリハビリテーション専門職のパイオニアであり、障害児療育を出発点に、障害を持つ人々のリハビリテーションを広い視野から発展させてこられ、わが国の障害者リハビリテーションのリーダーの一人であります。戦後のわが国の障害者リハビリテーションの草創期からの発展過程の主流にいて、時代の要請を感じ、応えるために様々なお仕事をなさって来られました。先生は、今、共生社会を築くために多職種間の連携の必要性を説かれ、自ら積極的に地域社会の連携を進めるために行動されております。我々は、障害を持つ人々の社会参加を促進するためにセンター内の、職リハとの、そして地域との連携を再構築すべき時期におります。寺山先生には、大変示唆に富むご講演を戴くことができましたことを、深く感謝いたしたいと思います。