〔センター行事〕
平成18年度障害者週間を終えて
管理部企画課
研究所感覚機能系障害研究部



 毎年12月3日から9日までの一週間が障害者週間として定められています。平成16年6月の障害者基本法の改正により、 国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の 活動に積極的に参加する意欲を高めることを目的として、法定されました。この期間を中心に、国、地方公共団体、関係 団体等においては、様々な意識啓発に係る取り組みを展開します。
 当センターにおいても、障害者の社会参加の推進と障害者問題に対する国民ひとり一人の理解を深めることを目的とし、 12月8日(金)当センター講堂において障害者週間記念式典及びアテネパラリンピック自転車銀メダリストの葭原滋男氏 による特別講演を開催いたしました。また、学院講堂では、感覚器障害研究発表会ワークショップを開催いたしましたの で、ご報告いたします。




平成18年度障害者週間記念式典等開催報告

管理部企画課

 障害者週間記念式典では、当センター岩谷総長、国立職業リハビリテーションセンター市川所長の挨拶の後に、永きに亘って 当センター入所者のボランティア活動を通してご尽力をいただいてきた方々に対し、感謝状及び記念品を贈呈し、感謝の意を表 しました。今年のボランティア表彰対象者は6名で、当日は3名の方々が式典に参加されました。また、利用者代表より、日頃 からのご支援に対し感謝の言葉を述べました。
 式典後には、前述いたしましたが、アテネパラリンピック自転車銀メダリストであり、当センター理療教育課程(現就労移行 支援養成施設)修了生でもある葭原滋男さんをお招きし、特別講演を開催いたしました。
 講演では、「国リハで得た3つの宝物」という演題で、「スポーツ」「家族」「仕事」を中心にお話くださいました。国リハ 入所当時に感じた自身の障害に対する思い、スポーツや家族との出会い、仕事に対する考え方、またリハ卒業後に出場したパラ リンピックで感じた世界との壁とそれに打ち勝つための努力、そしてメダルを取得した歓喜、また日頃から気をつけている7つ のことなどについてお話しくださいました。
 最後は、当センター入所時代に自主制作したビデオを見せていただき、当時流行した音楽やセンターの映像が流れ、懐かしさ を感じました。
 様々な困難を乗り越えられ、元気にご活躍されている葭原さんの講演を通じ、我々聴衆一同大きな元気を得ることができたひ とときでした。
 末筆ながら、葭原さんにはご多忙の所、今回の講演をご快諾いただきまして、深く感謝申し上げますと共に今後の益々のご活 躍をお祈り申し上げます。
  また、センター各部門の方々におかれましては、ご多忙の所、準備等ご協力いただき感謝申し上げます。



(写真1)ボランティア感謝状授与の様子
ボランティア感謝状授与の様子


(写真2)葭原滋男さんの特別講演の様子
葭原滋男さんの特別講演の様子



感覚器障害研究発表会とワークショップ報告

研究所感覚機能系障害研究部
視覚機能障害研究室長 森 浩一

 平成18年12月8日に学院講堂にて開催された標記ワークショップは、その3回目である。第1回は「『見える・聞こえる・歩 けるように』議員連盟」の肝入りで、視覚・聴覚障害の研究・開発を活発化させる方策を探るべく、18年2月16日に開催された。 第2回は5月26日に東京医療センターにて「産官学連携の展望」の主題で開催され、最先端の医学的研究の連携例が多数示され、 研究者間のつながりが重要であることが認識された。また、加藤紘一・衆議院議員より予算の説明があり、障害を持つ人々(以 下「障害者」)に役立つ研究をという希望が述べられた。今回は、センターで開催されるのにふさわしく、「感覚器障害者のニ ーズに応える」が主題である。
 研究発表会は、江藤文夫・更生訓練所長の基調講演で開始され、ADL、QOL、ICF、生活モデルなどの概念が体系的に整理され、 この分野の最先端の考え方が提示された。「30年間全盲をやっております」と自己紹介される石川准・静岡県立大学教授は「感覚 器研究に障害者は何を望むか」について、障害者自身が研究開発にかかわる大切さを話された。簗島謙次・病院第三機能回復訓練 部長による「視覚障害者を廻る専門職間の連携と研究課題」では、医師の多くは患者の生活への配慮が不十分であり、ロービジョ ンケアは患者主導のチーム医療であるべきことが具体例を交えて紹介された。田中美郷・帝京大学名誉教授は「小児人工内耳リハ ビリテーションへの取り組み」で、従来の聴能一辺倒の訓練を聴覚障害児の言語発達の観点から不十分とし、早期に言語獲得がで きるようにするためには、手話法と口話法という対立を越えて最適な方法を採用する必要があることを示された。細井裕司・奈良 県立医科大学教授は「高齢化社会における難聴者の増加と補聴器の進歩」において、老人性難聴の特徴と、老齢化によって補聴器 がさらに重要になることと、補聴器の進歩がわかりやすく解説された。
 後半のワークショップでは、中谷比呂樹・厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長より「感覚器障害に関するイノベーション を促進する」と題して、障害者福祉の基本と最近の大きな変化、政府・厚生労働省の取り組みと支援の解説があった。北風晴司・ 日本電気株式会社マーケティングマネージャーは「産業界における障害者支援機器開発と障害者のニーズ」において、福祉と産業 の間にまだ深い溝があり、製造・販売・利用の各段階に工夫が必要であるが、製品の有効利用には障害者への支援も必要であると 述べられた。河村宏・研究所障害福祉研究部長は「感覚器障害者の自立と社会参加支援のありかたについて」4つの重要分野があ り、本人の能力開発、社会参加支援、共生社会構築、障害者本人の主体的参加が必要であることを、海外動向と具体的提案を含め て提示された。
 岩谷力総長を司会とするパネル議論では、福祉機器開発には当事者の実質的な参加が重要であり、さらに「シーズ語、ニーズ語」 に加えて「ビジネス語」の理解が不可欠で、これらを理解できる調整役の育成も課題であることなどが議論された。最後の論点は 九州大学で開催される次回のワークショップに引き継がれることであろう。
 参加者は産学官各界と障害当事者を含めて81名あり、感覚器障害者のニーズについて体系的に話が聞けて有用だったという評価 をいただいた。同日には研究所見学会もあり、センター内・外から熱心な見学者が訪れた。準備期間が短かったにもかかわらず、 講師の先生方と厚労省・センターの関係各部門の方々には快くご協力いただき、お礼申し上げます。お蔭様で大変有意義な会とな りましたことをご報告させていただきます。



(写真3)中谷比呂樹障害保健福祉部長
中谷比呂樹障害保健福祉部長


(写真4)ワークショップの様子
ワークショップの様子