〔病院情報〕
入所者診療室の役割〜
更生訓練所利用者の健康の自己管理をサポートする〜
病院看護部外来・入所者診療室
副看護師長 川村 のぶ子



入所者診療室の一日
 「おはようございます。」8:30の診療開始を待って、利用者のみなさんが集まってきます。「かぜぎみで頭が痛いんですけれど…」「先生、足が痛い…」と医師の診察を受ける方、また、「僕の薬…」と看護師による服薬支援を受ける方…朝の訓練までの合間を縫うように、さまざまな方が利用されています。
 入所者診療室では、平日の8:30〜9:00の間、医師による診察を受けることができます。感冒症状や胃腸症状の訴え、障害や 疾患に関する相談、創傷処置などが多くの割合を占めています。
 8:30〜13:00、18:00〜20:00は、看護師による個別健康相談・指導を行っています。看護師は、健康調査より把握した個々 の健康問題に対し、利用者に説明した上で、支援計画の立案・実施・評価を行います。生活習慣病を有し、血圧・血糖・体重等の コントロールを目的とした各種の測定と健康指導がその多くを占めます。また、訓練途中に気分が悪くなった方が、入所者診療室 を利用するというケースも度々あります。低血糖による意識障害やてんかん発作の知らせを受け、看護師がその場に駆けつけるこ ともあります。
 夜間の入所者診療室では、各種測定、入浴後の創傷処置、服薬支援等を中心に、看護師による個別の健康相談・指導を行ってい ます。一日の訓練が終わり、体調不良を訴える方、不安・悩みの相談に訪れる方など、さまざまな方が利用されています。

入所者診療室の健康管理支援と看護師の役割
 入所者診療室は、更生訓練所利用者を対象に、“健康の保持・増進や疾病の予防・早期発見に努め、障害特性を考慮し、主体的 に健康管理ができること”を目標に支援を行っています。入所時の健康診断及び入所後の定期健康診断の実施により、進行性疾患 や慢性疾患の病状把握と管理を行い、障害の合併症や生活習慣病の予防と早期発見に努めています。
 入所者診療室看護師は、入所時に利用者全員と面接し健康調査を行います。身体状況の把握、合併症の有無などをチェックしま す。障害の合併症は様々であり、糖尿病合併症、脳障害に起因するてんかん発作、脊髄損傷の褥瘡や尿路感染、症状が変動する多 発性硬化症、ベーチェット病などの難病の管理、基礎疾患の管理には特に留意しています。
 また、入所者診療室看護師は、次のような看護方針のもと、日々の業務にあたっています。 
1.利用者を身体的な障害からだけでなく、社会的・精神的・心理的な側面からも総合的に捉え、個々の健康を維持・増進させ、 それぞれのニーズに配慮した基本的生活習慣の確立や、生活能力獲得に向けた指導を行い、生活の質の向上及び自立と参加を支援 する。
2.利用者自身が、健康の自己管理能力を高めることができるように指導・支援する。
3.精神疾患を持つ利用者をはじめ、心のケアを必要としている利用者の精神的サポートに努める。

入所者診療室からのメッセージ
 健康管理支援は出会ったその時から始まります。利用者のみなさんに「貴方のことをいつも気にしていますよ。…」という愛情 を持った関心を示すように心がけています。自律した社会生活を送るための支援に心理的サポートは欠かせません。訓練や宿舎生 活、人間関係の悩み等から、不安・抑うつとなり、身体症状を訴える方も少なくありません。障害による特性と心理面を理解し、 語りの場として思いを表出できる環境づくり、傾聴・共感しながら、利用者に対する心理・精神的側面の安寧と生活の質向上を意 図したケアが入所者診療室の役割でもあると思っています。
 このような利用者への健康管理支援は、入所者診療室だけではできません。更生訓練所指導部、職能部、理療教育部、栄養管理 室、運動療法士、職リハ健康管理室、病院との連絡・相談・調整は、欠かすことができない入所者診療室の大きな仕事でもありま す。
 これからも、センター内の連携を大切にし、利用者のみなさんの健康と自立に向けたサポートの一翼を担っていきたいと考えて います。