〔研究所情報〕
国際福祉機器展2007への出展にかかわって
研究所運動機能系障害研究部 研究員 新妻 淳子



 平成19年10月3日(水)から5日(金)に、東京ビッグサイト(有明)にて、第34回国際福祉機器展2007(H.C.R.2007)が開催される運びとなっております。

 歴史は30有余年におよび、第1回は「社会福祉施設の近代化機器展」という呼称で、昭和49年(1974年)に出展64社、来場者は1万人に満たなかったとのことです。昨年の第33回では、600社(海外16カ国を含む)を越える出展、来場者は13万人を越えるまでとなり、福祉機器を取り巻く社会的関心の高さを示しています。当センターは、研究所主催の形で第22回(平成7年、1995年)から参加してきました。初年度は開発した機器を会場に展示し、来場者にみていただくことから始まりましたが、徐々に「福祉機器の評価」「福祉機器の適合」「認知・知的障害者への社会参加支援」と、年毎に時代に対するテーマを発信する形となり、12年間参加してきました。ここ数年間は、センター単独でなく、共同研究を行う複数の団体とともに情報発信を行うという取り組みを増やしてきました。センターからの情報発信のみに留まらず、実際に支援を求める人の正直な声や、時には厚生行政に対する熱い期待やお叱りの声に直面する得難い機会として機能しています。

 出展の主体である研究所は「障害者の社会参加とQOLを促進するための支援技術、支援システム、支援機器に関する研究開発」を、主たる課題として設定されています。筆者は本年の企画を担当する者の一人でありますが、この課題を噛み砕いて、開発評価研究は「選択肢を増やす」ことと捉えています。「これしかないから我慢する」ではなく、体調や環境や経済状態など、個人のニーズに合わせて選択し消費できる社会をつくる。生存に関わる救急医療とは一線を画し、生活に関わる通常の消費サービスと同様に医療福祉サービスを選ぶ可能性が保証されている社会こそが、豊かな成熟した目標とすべき社会であると想定しています。研究活動の成果を世に問う場合に、常にその視点を満たしているか自問しています。

 さて、今年度の福祉機器展では、運動機能の改善を通して、障害者や高齢者の社会参加とQOLをいかに促進するかに、主体をおいて展示を企画しています。

 「歩く」「車椅子スキー」「走れる装具」等の、「これ!」という強いテーゼを示す展示はシンプルでわかりやすいものがあります。これに対して、真の目的を実現するためには多種類の選択肢があることを提示する手法は、ともすれば百貨店の店頭のように印象に残り難い問題点があります。これを解決し、運動機能改善が障害をもつ方の選択肢を増やし、社会参加とQOLを促進する一助となることを明確に提案したいと思っています。そのような展示を目指して、現在、各部門と協力して準備にあたっております。

 昨年までの大規模展示は本年は行いませんが、顔の見える・声の聞こえる展示を行いたいと思っています。10月当初、お忙しい勤務の間をぬって、ぜひ会場にお運びいただくよう、お願い申し上げます。


国際福祉機器展 公式web http://www.hcr.or.jp