〔更生訓練所情報〕 |
平成19年度国立身体障害者 更生援護施設理療科教官研修会を終えて |
更生訓練所理療教育部 松浦 久泰 |
今年も標題の研修会が当リハセンターで実施されました。
教科教育研修会(7月30日〜8月1日:テーマ「臨床を見据えた教科教育のあり方を探る」参加者20名)と、臨床教育研修会(7月30日〜8月3日:テーマ「内科系疾患の鍼灸治療」参加者10名)が併行して行われ、このうち7月30、31日は合同で行われました。
北は函館から南は福岡までの視力障害センターの外、広島聖光学園からも2名の教員が参加しました。
7月30日午後、開会式に続いて明治鍼灸大学教授・矢野忠氏が「鍼灸マッサージの現状と展望」のテーマで基調講演しました。
「我々、鍼灸関係者は、これまで国民が知りたい鍼灸の情報を充分に知らせてこなかった。鍼灸の未来を切り開くには、それを行うことが大切である。」ことが強調されました。
その後、塩原視力障害センターの佐取幸枝教官・当リハセンター研究所の我澤賢之研究員による厚生労働科学研究報告T「マルチメディアを活用した視覚障害者用教育訓練支援システムの研究・開発」の報告が行われました。
2日目の7月31日も前日に続いて矢野忠氏の「器質的な病態に鍼灸治療は有効か」の講演が行われました。
「閉塞性動脈硬化症(ASO)や肺気腫・慢性気管支炎などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの器質的な病態に対しても鍼灸治療が有効である」ことが明らかにされました。
この後、当リハセンターの伊藤和之教官による厚生労働科学研究報告U「文字利用が困難な高齢中途視覚障害者のための理療教育課程における学習支援システムの構築に関する研究」の報告が行われました。
同日午後には福島県立医科大学教授・菊地臣一氏の「腰痛 − 非特異的腰痛の概念と診断・治療」の講演が行われました。
「画像診断の結果と腰痛の程度とは必ずしも相関しない」ことなどが明らかにされました。
その後、当リハセンターの伊藤和之・小泉貴・松浦武・柳澤春樹の各教官による「理療臨床における患者とのコミュニケーションV − 2年次におけるチームティーチング」の授業研究発表が行われました。
8月1日からは教科教育研修会と臨床教育研修会に分かれました。
8月1日、教科教育研修会は最終日で分科会が行われました。
「利用者の理解力に応じた教授法について」をテーマに、今回の重点科目である臨床医学総論・臨床医学各論・リハビリテーション医学の各担当者に分かれて活発な討論が行われました。
臨床教育研修会は8月1日は積聚治療の理論と実際(大蔵鍼灸院院長・原オサム氏)、8月2日は中医学の理論と実際(アコール鍼灸治療院院長・河原保裕氏)。どちらも1日かけて、それぞれの理論と実技の指導を受けました。
受講者が少人数であったため、講師の手から手への丁寧な指導が受けられ、受講者は今後の自身の臨床や教育に活用すべく非常に熱心に取り組みました。
臨床教育研修会の最終日の8月3日は東京大学付属病院の粕谷大智氏の「糖尿病の鍼灸治療」の講演が行われました。
「U型糖尿病患者に対し、運動療法と鍼治療を併用することで、運動療法のみの場合より筋肉の糖取り込み速度が増加し、血糖コントロールがしやすい」という研究結果が明らかにされました。
今回の研修会は例年にも増して興味深い新鮮な内容が多く、各講演とも受講者から多くの質問が出され、講師との討論も活発でした。
研修会期間中、事故やトラブルもなく順調に終えることができました。これは研修会にかかわってこられた皆様のおかげであり、心よりお礼申し上げます。