〔国際協力情報〕
中国におけるJICA第3期プロジェクトの参加報告
病院副院長 赤居 正美


 北京にある中国リハビリテーション研究センターは、津山総長以来、初山、二瓶、木村(哲)、陶山等の諸先生方、そしてさらに多くのセラピストの先生方の協力を得て、その建設から現在に至るまで、国立リハビリテーションセンターが技術援助を続けてきた施設である。

 その沿革は1980年にまで遡るとされる。前中国障害者連合会主席のケ朴方氏がカナダでリハビリテーションの治療を受けて帰国後に、中国にも同様の施設が必要であると民生部に申請したところ、1983年11月、中国第7号重点事業として、国務院は「中国肢体障害者リハビリテーションセンター」の設立を決定し、1986年4月センター建設が着工された。日本、香港からは機材の、日本、カナダ、ドイツなどからは人材の留学受け入れをはじめとする技術支援を得た。1987年11月、それまで中国にあった各種障害者支援団体を統合し、中国障害者連合会が発足したことに伴い、「中国肢体障害者リハビリテーションセンター」は、「中国リハビリテーション研究センター」と改称し、中国障害者連合会傘下の治療・研究・教育・訓練機関となった。

 1988年10月28日「中国リハビリテーション研究センター」は落成式典を開催し、正式に業務を開始した。2008年10月には開設20周年の記念行事を行うとのことである。

 現在同センターは病院部門(中国唯一の三級甲等リハビリテーション専門病院である北京博愛病院)、研究部門(リハビリテーション情報研究所とリハビリテーション技術研究所)、教育・訓練部門(中国各地の主として省に設置されているリハビリテーション施設の現勤務者に対する短期研修を行うリハビリテーション学院)の三部門からなる。

 私はこれまで5年間、国際協力機構(Japan International Cooperation Agency)の委託を受け、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)4年制養成課程を中国にはじめて作り上げるJICAプロジェクトに参加してきた。上記リハビリテーション学院はこのプロジェクトにより、リハビリ療法士を養成する首都医科大学の後期専門課程をも兼ねることとなったのである。中間評価時の調査団長を引き受けたこともあったが、昨年には当初の目標を達成して終了となった。

 引き続く今回のJICA第3期プロジェクトは、北京におけるリハビリテーション技術者育成の成果を全国に届ける第一歩とすべく、遠隔教育のネットワークを作って地方展開を図ろうというものである。「中国中西部リハビリテーション人材養成プロジェクト」と命名され、今後5年間にわたり実施される予定である。この訪問では選択された複数の省や自治区において実状を調べ、併せて今後のプロジェクトの方向性を定めた覚書の調印を行ってきた。

 これまでの北京への旅行とは異なり、広西壮族自治区南寧市、陝西省西安市と観光では訪ねることが少ない地方にも行くことが出来た(写真1)。たまたま日程の都合から、北京の中国リハ研究センターが開催したリハビリテーション国際シンポジウムにも重なっていたため、二瓶、木村(哲)、陶山の各先生方と共に、愛知医大丹羽名誉教授、京都府立医大平澤名誉教授、産業医大蜂須賀教授らにもお目にかかることも出来た。

 来るたびに景観が大きく変わるとの印象が強い北京では、オリンピックを1年後に控え、各種施設建設の追い込みにかかっていた。悪化する一方の交通渋滞や大気汚染の軽減のため、走行する自動車のナンバープレートの末尾で日を決め、偶数日、奇数日の間引き運転もしていた。さすが上意下達のお国柄か、違反車両もなくスムーズな流れであった。ある日などはセンターから滞在先のホテルまで15分で戻れたのに驚いたが、4日間の試行期間が過ぎると元の1時間に戻った。

 首都を離れ地方に行くと、今度は連日中華料理が続き、50度近いアルコール濃度の白酒攻撃にさらされた(写真2)。有意義ではあるものの胃腸にとってはなかなかに辛い14日間であった。



(写真1)陝西省西安市
(写真1)


(写真2)白酒攻撃
(写真2)