〔病院情報〕
日大芸術学部の学生さんによる芸術療法ボランティア
病院第二機能回復訓練部 白坂 康俊



 平成19年7月21日、センター講堂において、日大芸術学部の学生さんによるパフォーマンスが上演されました。井上陽水の「少年時代」を基本テーマにして、学生さんの歌とダンスで始まり、会場の参加者を巻き込んでの演奏、最後に、詩の朗読で終わる1時間ほどの催しでした。

 参加したのは、入院中の患者さまで、どうしても退屈になりがちな、入院生活における土曜の午後のひと時を楽しんでいただけたようです。入院中の患者さまのQOL向上に少しは役立つことができたと思います。

 この試みは、地域の一般住民と病院を結びつける一つのあり方としてのボランティア活動として行われました。最近の医療のあり方として、医療従事者と患者さまとの連携は、対等なパートナーシップとして位置づけられてきています。また、病気や障害を持った時に医療サービスを受けることになる可能性のある地域住民の人たちに対して、普段から開放されていて、住民の方々から理解され、支持されるような病院が望ましいとされています。そのことは、今年3月の病院機能評価を受審して私達が学んだことでもあります。病院機能評価の間には、ボランティアの受け入れは実現しませんでしたが、その理念を尊重し、7月にやっと実現することができたわけです。

 ちょっとしたきっかけで知り合いになった日大芸術学部芸術療法の講座を担当する熊谷先生の、「学生さん達が学んだ成果を実践する場が欲しい」というご希望と私達の地域連携に関する希望とが一致したので、病院に提案したところ、病院長、看護部長、医事課他の皆さんのご理解とご支援で、あっけないように実現しました。

 当日は、土曜日の午後ということで、病棟のスタッフも限られていました。病棟から講堂までの往復と上演中の患者さまの安全確保が絶対の条件でしたので、学院ST学科の学生さん、都内の二つの言語聴覚士養成校の学生さんのボランティアを募り、送迎と介助を依頼しました。30名を超えるSTの学生さんの参加協力を得て、日大芸術学部の学生さん20名余の方々によるすばらしいパフォーマンスが実現したわけです。

 患者さまの事前の参加申込は、全病棟で十名程度でしたので、寂しい会になるかと不安でしたが、当日は、病棟看護師さんたちも積極的に声をかけてくださり、患者さまとご家族あわせて50名近くの方が参加してくださいました。

 暗い舞台上、照明を浴びて、学生さんたちが歌とダンスを披露してくださった段階で、多くの患者さまが、嬉しそうな表情を見せてくれました。入院の皆さまに、楽しんでもらいたいという学生さんの気持ちがとても率直に伝わるパフォーマンスだったからでしょう。続いて、学生さんたちがハンドベルのような、一つの楽器が一つの音階を奏でる楽器を、患者さまにお渡ししました。モニター画面に、音階のマークが映し出されるのにあわせて、その音階の楽器を持った人が音を奏でるという、参加型のパフォーマンスです。少しずつ練習していくうちに、患者さまもだんだん画面のマークに合わせられるようになっていきます。最後に、「少年時代」を全員で合奏しました。障害の性質上操作が難しい方もいらっしゃいましたが、STの学生さんたちの介助も適切で、無事に演奏することができました。

 最後に芸術学部の学生さんたちが、かわるがわるに、少年時代のフレーズを暗誦し、終了しました。短い時間でしたが、患者さまと健常者と合わせて100人以上の人たちが、連携し、団結して、楽しい時間をつくることができました。双方にとって充実した意義のある時間であったと確信します。

 熊谷先生も、学生さんたちも、次回を約束して帰られました。そして、患者さまも、途中で退席する方もほとんどなく、笑顔でお帰りになりました。約1時間の間でしたが、講堂の中には、本当のバリアフリーの空間が実現していました。



ボランティア活動の様子