〔学院情報〕
学院リハビリテーション体育学科紹介
―障害のある人々の体力・健康づくりのための
運動・スポーツ及び体育の専門家を養成しています―
学院リハビリテーション体育学科


【専門的知識と指導技術を身につけた指導者の養成】

 本学科は、平成3年4月に設置された、わが国で唯一の、国立国営のリハビリテーション体育専門職員の養成課程です。

 修業年限は2年で、入学定員は1学年20名、合計で40名となっています。

 当学科で養成するリハビリテーション体育専門職員は、社会福祉施設やリハビリテーション病院などにおいて、障害のある方々や心身の機能が低下した方々などの体力・健康づくりと、それに関わる運動・スポーツ及び体育に関わる専門家として、身につけた専門的知識と指導技術を駆使して、当該施設等の運営に、中心的、指導的役割を担うよう期待されています。


【カリキュラムの特色】

 このため、本学科では、専門的知識と指導技術を習得し、医療や福祉等の現場で即戦力となる指導者の育成を目指して、現場実習にも多くの時間をさいたカリキュラムを組んでいます。

 このうち、当センターの内部における実習は、医療の現場である病院、福祉の現場である更生訓練所、研究開発の現場である研究所などにおいて実施しています。

 1年次には、見学実習や評価実習を行うとともに、感覚障害者指導演習(更生訓練所:聴覚障害者グループ指導)と肢体不自由者指導演習(更生訓練所:立位・車いすグループ指導)を実施しています。そして2年次には、4月から7月まで運動処方演習(入院個別指導)及び肢体不自由者指導演習(更生訓練所:立位・車いすグループ指導)を組んで、8月からは、内部本実習として病院リハビリテーション体育(運動療法)部門で3週間臨床実習を行っています。

 さらに、外部実習は、2年次の後半である9月から12月にかけて、各自、2ヶ所の外部実習先で、各々、4週間の実習を行っています。

 外部実習先は、毎年、学生の就職希望領域に応じて、学科サイドで、卒業生の働く施設などを中心として、全国各地から選定しています。

 今年の外部実習先は、国立伊東重度障害者センターをはじめ、国立福岡視力障害センター、国立別府重度障害者センターなど当センターの関連機関、障害児・者施設、リハセンター、病院、障害者スポーツセンター、健康増進関連施設、障害者福祉センターなどとなっています。


【入学者の状況】

 入学者は、主として、体育系大学で保健体育の教員免許を取得した者や教育系大学を卒業した者ですが、最近では、福祉系4年制大学の卒業者で、運動・スポーツ・体育に関して経験や興味・関心をもつ学生も、一部、入学してきております。そして、新卒者のみならず、社会人として働いた経験をもつ者の入学も少なくありません。

 また、当学科の開学当初には、聴覚に障害のある学生1名を、昨年度からは、四肢体幹に麻痺がある車いす常用の学生1名を受け入れたりと、障害のある学生と共に成長しあえる教育環境も構築されています。


【学生の現状】

 現在、2年生は、内部・外部実習に励んだり、卒業研究の仕上げに向けて研鑽中です。1年生は、講義で、知識や技術を習得しつつ、その理論をセンター内実習で反映できるよう、学生同士、切磋琢磨中であります。

 放課後には、車いすバスケットボール、ツインバスケットボール、ウィルチェアーラグビー、ゴールボール(アイマスク着用の球技)、肢体不自由・聴覚障害者のサッカーなど当センターの更生訓練所が行う障害者スポーツ(競技)のクラブ活動にも参加したり、さらには、『並木祭』など当センター内の各種行事等を通じて、授業以外でも、障害をもった方々と、日常的に、積極的に交流し得る機会に恵まれて、貴重な経験を重ねています。彼らが社会福祉施設や病院などに巣立ったとき、在学中に取得したこれらの知識や経験が活かされて、必ずや大いに活躍していただけるものと期待しています。


【卒業後の資格】

・健康運動指導士の受験資格

 平成19年3月27日付けで、財団法人健康・体力づくり事業財団が行っている健康運動指導士認定試験にかかる養成校として認定されました(認定期間は平成19年4月1日から平成23年3月31日まで)。

 この認定により、当学科を卒業した者は、財団が行う健康運動指導士認定試験に関して、財団の行う研修を受講することなく、自動的にその受験資格を取得することができるようになりました。

・上級スポーツ指導員資格

 当学科を卒業した者は、財団法人日本障害者スポーツ協会の認定する最もランクの高い「上級スポーツ指導員」の資格が取得できます。

 なお、一般的に、この資格を取得するには最短で5年を要するものとされています。

・公的資格化への取り組み

 リハビリテーション体育専門職は、増田弥太朗氏が、昭和25年(1950年)に、日本において初めて運動療法の一環としてスポーツを取り入れたことが契機となったという、長い歴史と伝統のある職種ではありますが、残念ながら、それから半世紀が過ぎた現在でも、公的資格化の実現には至っておりません。

 先人方が築いてきた業績などを礎として、当学科卒業生などが中心となって、今後とも、リハビリテーション体育分野における研究や実践に、確実な実績を積み上げて、広く、社会的な認知を得るとともに、一日でも早く公的資格化が図られるよう、関係者一同、一意専心して努力しているところであります。


【リハビリテーション体育専門職の存在意義】

 多くの人々が、健康で豊かな生活を願う一方で、日常の生活で、どのように、からだと心の健康づくりに取り組むべきか、特に、障害をもつ方や心身の機能が低下した方の健康づくりの手段や情報は、極めて乏しいのが現状です。

 加えて、障害がある方々にとって、健康の維持・増進のための運動習慣の取り組みや意識は、健常者以上に重要で、高いモチベーションを必要とします。受動的から能動的に自ら判断行動ができ、コントロールして、からだと心の健康を維持できるようになることが大切です。

 そのため、障害を負った早期(医療レベル)から、運動やスポーツに親しみ、かつ主体的に地域社会に関わる力を身につけていくという、障害がある方々に対する生涯教育を推進する観点から、これを支援できる専門職:リハビリテーション体育専門職は、必要不可欠の職種であるものと自負しています。

 かかるリハビリテーション体育専門職の果たすべき役割の重要性を踏まえ、今後とも、専門知識と指導技術を身につけた専門職の養成の推進を目指して、学生指導の充実等に一層取り組んでいきます。


【おわりに】

 来春、9名の学生が卒業する予定です。社会福祉施設や病院などの関係者におかれましては、当学科において、かかる知識や経験を十分に取得した当学科の学生の採用を、是非、ご検討いただけたらと存じます。

 また、入学試験は、来年の1〜2月に行われます。障害をもった方々の健康・体力づくりの指導技術の習得を目指したい方、これらに興味のある方々、これらに熱意のある方々の受験をお待ちしております。また、身近にこれらの方々がいましたら、当学科の紹介をお願いします。詳細につきましては、当センターのホームページ等をご参照願います。



1.肢体不自由者指導演習(更生訓練所)
(写真1)集団ゲームを通して対人技能指導方法を学ぶ
集団ゲームを通して対人技能指導方法を学ぶ


2.運動処方演習(病院)
(写真2)水の特性を利用した下肢機能改善方法を学ぶ
水の特性を利用した下肢機能改善方法を学ぶ


3.運動処方演習(病院)
(写真3)車いす操作屋外応用練習(段差、斜面、不整地)
車いす操作屋外応用練習(段差、斜面、不整地)


4.内部実習(病院)
(写真4)サッカーを用いた義足応用歩行の習熟
サッカーを用いた義足応用歩行の習熟


5.内部実習(病院)
(写真5)機器を使用した全身持久力養成トレーニング
サッカーを用いた義足応用歩行の習熟


6.内部実習:更生訓練所(就労移行支援 体育授業)
(写真6)サウンドテーブルテニスを通して体力の維持・増進を図る
サウンドテーブルテニスを通して体力の維持・増進を図る


7.内部実習症例発表会
(写真7)発表・質疑応答
発表・質疑応答