〔ワンポイントマッサージシリーズ17〕
〜東洋の経験と知恵を活かして健やかな毎日を〜
更生訓練所理療教育部主任教官 柳澤 春樹



17.「血圧が高い(高血圧)」

 今回は循環器系の症状「血圧が高い(高血圧)」を取り上げてみましょう。

 日本人には血圧の高い方が多いと言われており、約2000万人ぐらいとも言われます。そして治療を続けている人は700万人ぐらいだそうです。医療費のうちでも高血圧がらみのものが最も多いのです。

 血圧が高いとは、血管内圧が上がり最高血圧(心臓が収縮したときの血圧「収縮期血圧」)と最低血圧(心臓が拡張したときの血圧「拡張期血圧」)のどちらもが高い場合とどちらかが高い場合とがあります。その目安は通常140/90mmHg以上といわれています。最高血圧と最低血圧の差を脈圧といって血管の硬さを知る上で大変重要視されています。通常最高血圧と最低血圧と脈圧の比率が3対2対1程度が良いといわれています。例えば120/80であれば脈圧が40でこの比率になっていますね。

 しかしこれは一応の目安であり、さまざまな状況によって危険因子は異なりますので、信頼のおける医師と相談しなければなりません。

 高血圧には、いろいろと検査をしても内蔵には特に異常のみつからない体質的なものである「本態性高血圧(一次性高血圧)」と、腎臓や内分泌系の異常などによって起こっている「症候性高血圧(二次性高血圧)」とがあります。90%以上の方はこのうちの「本態性高血圧」に含まれます。

 多くの人は血圧が高くても目立った自覚症状がないために大したことはないと勘違いして高血圧を放置していることがあるようです。しかし、これは確実に血管や心臓を蝕んで(動脈硬化や心肥大など)、脳梗塞や心筋梗塞などの恐ろしい病気を発生させる危険を秘めているのです。ですから高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」と呼ばれることもあるのです。

 しかし、血圧が高いと頭痛や頭重、不眠、肩こり、手足がしびれるなどの症状を訴える方もかなりおられます。決して自分だけの判断で軽く考えずに、早めに専門医を訪れてください。原因を明らかにして適切な方法をとり、恐ろしい二次的な合併症を防がなければなりません。

 東洋医学的にも経験的に効果のあると言われている方法(あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうなど)が沢山伝えられていますが、以下に簡単に自分で行なえるものを少し書いてみましょう。


1.椅子に座って行なえます。のどぼとけ(喉頭隆起)の外側数センチで触ると脈を強く感じるところ(図)に中指に人差指を添えて置き、指圧します。頭を後ろにそらせながら、1,2,3で息を吸いながら力を加えて指圧してゆきます。4,5,6で息を吐きながら力を抜き、もとに戻します。これを5・6回くりかえします。

(人迎「じんげい」)(図1)


(図1)人迎「じんげい」




2.やはり椅子に座って行なえます。耳の後ろの骨のでっぱり(乳様突起)のすぐ後で頚の後に走る太い筋(僧帽筋)の外側のくぼみに両方の親指を当て、頭を前に倒しながら両方同時に指圧してゆきます。1,2,3と息を吐きながら力を入れ、4,5,6で息を吸いながら力を抜いて、もとに戻ります。これを5・6回くりかえします。

(天柱「てんちゅう」)(図2)


(図2)天柱「てんちゅう」




3.足の裏の中央より少し前にある大事なツボです。一方の脚を投げ出して座り、もう一方の足を膝の上に置き、片方の手で足のこうを押さえ、もう一方の手の親指を使って小さく押しながら揉むようにします。1,2,3で息を吐きながら力を加え、4,5,6で息を吸いながら力を抜きます。5・6回行なったら反対側にも行ないます。

(涌泉「ゆうせん」)(図3)


(図3)涌泉「ゆうせん」



 上に記したもののほかにも両方の前腕のマッサージや下腿部や足部のマッサージ、首や肩、背中のマッサージなどでも効果があるようです。以前このシリーズでもお伝えした「曲池(きょくち)」や「足の三里(さんり)」へのお灸を薦めている場合もあります。また「青竹踏み」もよいといわれています。


 高血圧の原因にはさまざまなものがありますが、肥満、食習慣、タバコやアルコール、運動不足、不眠などと自分で管理できることが多いのです。また精神的なストレスも大いに関係があるとされています。また血圧は時々刻々変動しているものです。あまりにも過敏になるのもいけないのです。心身ともに健やかな毎日を送りたいものです。




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