〔研究所情報〕
ISOTC173SC1WG11会議に参加して
研究所福祉機器開発部 廣瀬 秀行



 皆さんは車いすを頻繁に見るでしょう。ところが、移動としての車いすよりも(移動も重要ですが)座っていることが多く、そのためのクッションや座位保持装置が重要になります。今、このクッションや座位保持装置は車いす同様重要であり、それらの標準化を行おうと、1998年からISO(国際標準化機構)TC173(福祉機器)SC1(車いす)にWG11というワーキンググループができました。私自身、国リハに来て以来、車いすクッションや座位保持装置に関連した研究をしてきました。臨床的側面が病院と共同で行っているシーティングクリニックです。一方、工学的側面としてISOの規格作成に携わってきました。今回、参加しているWG会議が10月24日と25日に米国ユタ州のオガデンで開催され、その経過を含めてご紹介いたします。

 WG11は現在Part1からPart7までの作成が予定されています。写真1は全体会議風景です。

 Part1:車いす、座位保持上の姿勢や座位保持装置を表現する方法:ISO16840-1(現在ガイドライン作成中)

 Part2:車いすクッションの機械的性能を表現する方法:ISO16840-2

 Part3:座位保持装置の強度:ISO16840-3(現在、改定中)

 Part4:自動車上での座位保持装置の安全性

 Part5;車いすクッションの減圧特性

 Part6:車いすクッションの化学的変化を含めた耐久性

 Part7:車いすクッションの温度湿度特性

 そのなかで参加しましたISOについて説明します。

 Part1は身体および座位保持装置の計測で、良い椅子に座ると姿勢が変わります。良い姿勢は褥瘡発生を抑えたり、嚥下にも影響し、上肢や下肢の運動機能も向上させます。悪いいすとよい椅子との姿勢の比較をしたり、椅子の違いを説明するのがこの規格の目的です。これに関しては、埼玉総合産業センターと共同で開発した姿勢計測ソフトが有効で、これについて話をしました(写真2)。このソフトを使用することで、複雑なISOによる姿勢計測を容易に臨床で使用できるものとなります。Part3は座位保持装置の強度についての規格ですが、これは厚生労働省の座位保持装置の工学規格を作るときに、参加した経緯があり、二つが協調して進んできた良い結果であると思っています。特に、脳性まひ者が意図しなかった負荷を座位保持装置にかけているかの計測結果はISOメンバーにインパクトを与えました。また、現在、温度湿度特性試験がPart 7で開発中ですが、これは非常に湿度や温度負荷が小さく、高温高湿度の日本などでは現実的ではありません。そこで、日本で夏場に脊髄損傷者の発汗状況を調査し、現Part7では対応できないことをISOメンバーに理解していただきました。同時に、高温高湿度に対応した試験方法を開発中であり、これはあらたなPart8?になるかもしれません。

 最後に、来年5月末にこのISO会議を当センター研究所中心に開催します。おそらく、1週間で延べ150名以上の世界各国の方が参加されます。皆さまにご迷惑をお掛けするかもしれませんが、ご理解とご協力をこの場を借りてお願いいたします。


(写真1)会議の様子
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(写真2)会議の様子
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