〔国際協力情報〕
平成19年度JICA補装具製作技術コース研修実施報告
研究所 補装具製作部



 国際協力機構(JICA)の委託を受けて、研究所補装具製作部を中心に行われた補装具製作技術コース研修が、去る11月29日に約2ヶ月半の全日程を終了し、全員無事に帰国の途につきました。

 本研修コースの対象職種は、補装具の適合経験10年以上の技術者を主として、所属機関のリーダー的立場の方で、帰国後はその技術を普及・伝達できる方を招聘しています。今回は4名(コロンビア、ミャンマー、フィリピン、ドミニカ共和国)の研修生を受け入れました。

 実習に先立ち、その内容の詳細を決定するために開いたミーティングでは、研修生本人たちと「自国とは異なる製作方法」や「体験したい製作方法」などについて話し合いました。研修生の出身国の中には、義肢装具に関する養成校がない国や、養成校はあっても資格制度までは整備されていない国もあり、義肢装具について体系的に学ぶのは初めての方もいました。そのため、実技研修の場では、研修生が自国で指導することを想定した上での技術伝達に心がけ、一人一人の進行状況と作業内容を確認しながら進めていきました。また、研修生が母国に帰ったとき、センターの研修コースで使った物と同じ材料が使えるとは限らないため、製作に最低限必要な知識を学んでもらうことに重点を置いています。

 研修の内容は、講義、実習、見学を組み合わせて、幅広く知識見聞ができるように構成しました。まず初めは、医学・運動学・材料学・義肢装具学についての集中講義を一週間実施しました。この講義の講師には、センターで行われている補装具判定医師研修会の講師陣を中心に、義肢装具分野において第一線で活躍されている各専門職の方々と、国リハセンター病院や研究所の職員にご協力をいただきました。

 義肢装具製作適合実習は、学院義肢装具学科と補装具製作部が担当して、下腿義足(18日間)、大腿義足(19日間)の順で実施しました。指導内容は、学院義肢装具学科の授業に準じた体系立てた製作技術の方法や技術を伝達するための手法などを研修していただき、単なる技術研修に終わるのではなく、帰国後に指導を行うためのベースになることを意図したものにしました。

 見学では、小児療育施設や義肢装具部品メーカー、義肢装具士養成校、兵庫県立総合リハビリテーションセンターなどの施設見学、国際福祉機器展(東京)、日本義肢装具学会(島根)への参加を企画して、実習では得られない小児の義肢装具の臨床と、最新の義肢装具と福祉機器の情報収集が行えるよう配慮しました。

 最終日の研修評価会では、@自分にとって有益であった内容、A帰国後、職場へ貢献できる内容、B研修コース全般に対する意見、C日本の社会・文化に対する感想の4項目について研修員、JICA担当者、リハセンター側とで意見交換が行われました。全員、本研修の内容に満足しており、各々が課題としていた事項について成果を得たとの評価を得ました。

 夕刻から行われた送別パーティーでは、JICA、センター関係者、国際ボランティア団体・所沢インターナショナルファミリー(TIF)の全員の参加を得まして、帰国を前にした挨拶や思い出話でにぎわう中、研修生からは母国の歌や踊りの披露もありました。顔がほころび、研修生を囲んでの記念撮影があちらこちらで行われ、別れを惜しむにはあまりにも時間が短く感じたことは、滞在期間中の交流の深さを意味するものでした。

 この研修コースは、研修員の帰国後の定着率が高く、良好な技術協力が行われていると思っています。今後も、受け入れ相手国の事情を考慮しつつ、最適な技術移転が実施できるように努力していきたいと考えています。

 最後に、本研修コース実施に当たって、ご協力を頂きました外来講師の先生方を始め、センター職員や関係者の皆様に改めてお礼を申し上げます。